南條愛乃が語る、ライブを通して築いた“大切な場所”「今までやってきたことに間違いはなかった」

南條愛乃に聞く、ライブが大切な場所になるまで

ターニングポイントだった「ゼロイチキセキ」と『N』ツアー

『南條愛乃 LIVE TOUR 2016 "N"』ライブ模様

ーー先ほど「初期はライブが苦手だった」という話がありましたが、その意識が変化していく過程で歌詞のアプローチや向き合い方にも変化はありましたか?

南條:向き合い方にもっとも変化があったのは「ゼロイチキセキ」(※2016年5月発売の5thシングル)の歌詞を書いたときですね。ソロでタイアップ曲の歌詞を書いたのは「ゼロイチキセキ」が初めてで。ネトゲがテーマになっている作品(※テレビアニメ『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』)だったんですけど、当時私もすごいネトゲにハマっていて、自分が好きなものだから書き上げたいという気持ちも強かったんです。

 でも、そこで初めて「いつもどおりの書き方をしてもOKが出ないんじゃないか? タイアップ元の作品にも失礼だな」と思って、急にレベルアップしないかなって気持ちで改めていろんな方の歌詞を読み漁ってみたりしたんですけど、それで急に自分の書き方が変わるわけもなく(笑)。それを経て「自分らしく、でも今までとちょっと違う書き方ってなんだろう?」と考えて書いた歌詞が「ゼロイチキセキ」でした。今までの書き方だったらたぶん文節をここで収めているなってところもはみ出して書いているし、サビの〈ゼロとイチのセカイで〉って始まり方も普段だったらしていないような書き方をしているし。ちょっと自分の中でチャレンジするきっかけをもらえた曲かなって気がします。

ーーなるほど。

南條:ライブでいうと、『Nのハコ』(※2016年7月発売の2ndフルアルバム)を引っさげた『N』ツアー(※2016年9月に全国5都市で開催の『南條愛乃 LIVE TOUR 2016 "N"』)がターニングポイントだったと思います。実はこのときのツアーは初日の名古屋から、すごくモヤモヤとした気持ちで始まっていて。『東京1/3650』のときは自分的にいいアルバムができたなと思って、だんだんソロ活動が楽しくなり始めていたんですけど、それと同時に声優もやっているので出演した作品やキャラクターから受ける印象がソロの活動と逆転してしまったときがあったんです。ソロとしてステージに立っているのに、本当に南條愛乃としてステージに立っていていいのかわからないというか、みんなキャラクターを求めて来てくれているんじゃないかとステージに立つのが怖くなっていた時期に始まったのが『N』ツアーだったんです。

『南條愛乃 LIVE TOUR 2016 "N"』ライブ模様

ーーそうだったんですね。

南條:『Nのハコ』というアルバム自体もある意味そこがテーマになって作っていたアルバムではあったんですが、ツアーファイナルに進むにつれてわかったのが……私もそうやって葛藤していたけど、ライブ会場に集まってくれたお客さんのほぼ全員はキャラクターじゃなくて南條愛乃としての歌を聴きに来てくれていて。でも、私と同じようにどう接していいかわからないというか、私もお客さんも両方で探り合っていたみたいな感じだったんです。葛藤していたのは私だけじゃなかったんだなっていうのがわかったときに、私もお客さんも含めて“南條愛乃ソロ”という土壌がまだ発展途中で、みんなでいくらでも作っていけるものなんだなと気づいて、「ここは帰る場所だし自然体でいていい場所なんだ、より大事にしたいし守っていきたい」と強く思いました。そう気づけた頃からだんだんとライブ自体に対しても、会場に来てくれる方に何かを還元していきたいって気持ちに変わっていった気がします。

『Yoshino Nanjo Live Tour 2017 <・R・i・n・g・>』ライブ模様

ーーだからなんでしょうか、そのあとの3rdフルアルバム『サントロワ∴』(※2017年7月発売)を携えた『・R・i・n・g・』ツアー(※2017年9~11月に全国6都市7公演開催の『Yoshino Nanjo Live Tour 2017 <・R・i・n・g・>』)の映像を観たときに、それ以前とちょっと変わった印象を受けたんですよ。

南條:そうかもしれませんね。『・R・i・n・g・』ツアーは本当にお客さんにお返ししたいという気持ちで、思いを共有できる場所作りを改めてやりたいと思ったツアーでしたし。

『Yoshino Nanjo Live Tour 2017 <・R・i・n・g・>』ライブ模様

ーーとなると、『THE MEMORIES APARTMENT』のツアーでは会場ごとに当時のツアーを凝縮したことをやりながら、そういう当時の思い出も振り返りつつ公演に臨んだと。

南條:はい。実は市川公演初日のセトリと最終日の静岡公演のセトリってほぼ一緒なんですけど、初日は「これからツアーが始まるぜ。ベストのセトリを聴いてくれ!」っていうテンション感だったのに、2日目から『東京 1/3650』に立ち返り、『N』ツアーでは実はこういう気持ちでやっていたんだというのを打ち明け(苦笑)。約1カ月に5年分を凝縮した記憶を持って最後の静岡公演に臨んだので、もう「ベスト・オブ・ベスト!」みたいな(笑)。なので、初日の勢いとはまた違ったものが出せたんじゃないかなって気がします。

「色から受ける印象を歌詞にしたらライブ由来の新曲になるかな?」

ーー5枚組CDのうち1枚は、新曲5曲を含むスタジオ作品となっています。

南條:このツアー作品に「新曲を付けたい」と言われたのが今年に入ってからで、結構急な提案だったんですよ。私の中では次に出すものは「『THE MEMORIES APARTMENT』のライブ作品」と気持ちもコンセプトも固まってしまっていたので、今から新曲を作りたいという気持ちにはまったくならなかったんです。書きたいテーマはあったんですけど、それを今出す気持ちにはなれないし。でも、どうせ新曲を作るならライブに付随したものにしたいという気持ちもあって、どうしたら新曲と1年前のライブがつながるのかなと考えたんです。

ーーそのヒントが色だった?

南條:はい。ライブって曲によっていろんな感情になるじゃないですか。熱い曲を聴いたら熱い気持ちになるし、悲しい曲を聴いたら悲しい気持ちになるし。そこから、熱い思いは赤とか悲しい気持ちは青とか感情を一度色に落とし変えて、色から受ける印象を歌詞にしたらライブ由来の新曲になるかな? というところでこの新曲5曲が生まれました。

(ピンク)『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様
(青)『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様
(赤)『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様
(緑)『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様
(黄)『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様
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(ピンク)『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様
(青)『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様
(赤)『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様
(緑)『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様
(黄)『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様
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ーーそういえば去年のライブも、色が関連づいた演出はいくつか用意されていましたね。

南條:色って私にとっては切っても切り離せなくて。昔、絵を描くのが趣味だったりもしたので、そのせいもあるのかなって気もします。でも、昔から歌詞を書くにしても色って結構出てきていたので、あんまり私的には特別な発想ではなかったんですよ。

ーー興味深いのが、ソロデビュー作となったミニアルバム『カタルモア』(※2012年12月発売)の1曲目が「blue」と、すでに色と関連付いているんですよ。あの作品は6曲入りで、今回のオリジナルCDも同じ6曲入り。偶然だとは思いますが、5周年に関わる一連の活動を経て、ちょっと一周した感があるのかなと。

南條:5周年を経てベストアルバムを経て、ソロとしての土台がこの5、6年である程度固まって、ここから新しいスタートが切れるみたいな気持ちでいたので、そのタイミングにまたミニアルバムっていうのもなんだか面白い気がしますね。確かに「blue」と言われてハッとしました。怖いな(笑)。今やっているツアー(※取材時。2019年5~6月に実施された『南條愛乃 Acoustic Live Tour Vol.1 17/47 ~わたしから会いにいきます!~』)で新曲を毎回1曲披露しているんですけど、「青の曲」のことをプロンプターに「blue」と書いていて、一度そのまま「blue」と読んじゃったら「あ、『blue』って曲あるな」とすぐに「青です」と言い直したんです(笑)。そこでは気づかなかったんですけど、確かにまた巡ってきた感じがありますね。

ーー改めて、今回は5つの色(ピンク、青、赤、緑、黄)から受ける印象をモチーフに作詞していったわけですね。

南條:例えばピンクっていう色が導き出すのは“かわいい”だと思うんですね。今回の楽曲はすべてコンペティションで選んだんですけど、青だったら“同調”とか“シンクロ”というイメージからバラードがいいとか、ピンクだったら“かわいい”からそういう曲調がいいみたいにオーダーを出しました。選考する際には作曲家さん名は伏せられた状態だったんですけど、何曲か上がってきた中からピンときたものを選んで、そこからどういう歌詞にしようかなという作り方をしていきました。

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