Official髭男dism、初の日本武道館公演で作り上げた“音楽そのものが鼓舞する空間”

ヒゲダン、初の武道館レポ

 テンポチェンジの巧妙さに唸る「バッドフォーミー」、メロディのダイナミズムが切なさを増幅する「LADY」、ジャジーなイントロからスタートしたファンクチューン「55」ではボーカルエフェクトがモダンなイメージで、小笹のカッティング、見せるためではなくボトムを揺らすセクシーなグルーヴを醸す楢崎のラインも冴える。松浦も部分的にラップを挟むなど、メンバーの音楽的な筋力が際立った。

 演出面では効果的に「FIRE GROUND」のみで火柱を使い、ファンクの中にQueen的な大仰さを持つこの曲を大いに盛り上げた。ハードロック的なソロを弾いた小笹は、文字通りの熱さから一転してアルペジオのループというモードチェンジの重要な役割を担う。畳み掛けられるような「FIRE GROUND」のエンディングから、「Pretender」への待ってました! とばかりにオーディエンスが食らいつくように拍手をする様子は、まるで会場が一つの生き物になったような一体感だ。藤原はアップライトピアノを弾きながら、今、おそらく日本で最も聴かれているメロディを丁寧に、そしてエモーショナルに歌う。生演奏でもAメロとBメロの質感の違いにこだわり、全員で呼吸を合わせる。さらに粋だったのが、「Pretender」のアウトロにホーンを融合し、自然な形で「ノーダウト」のコード感を作ったことだ。誰もが期待する人気曲から本編ラストまでを無理なくつなぐためのライブアレンジだったのだろう。

藤原聡(Vo/Pf)
小笹大輔(Gt)
楢崎誠(Ba/Sax)
松浦匡希(Dr)
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藤原聡(Vo/Pf)
小笹大輔(Gt)
楢崎誠(Ba/Sax)
松浦匡希(Dr)
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 その本編ラストにセットされたのは先行配信が始まったばかりの「宿命」。プリミティヴなビートを松浦だけでなく、小笹もフロアタムを叩いて作り上げる。〈奇跡じゃなくていい、美しくなくていい~宿命ってやつを燃やして、暴れ出すだけなんだ〉という、受け身ではなく戦う姿勢が表れた歌詞が、今のヒゲダンと重なり、新曲をラストに据えた強気が腑に落ちた。

 武道館規模でもメンバーの表情を捉えたり映像を映し出すための演出をしなかったのは、楽曲と演奏で勝負することに賭けたチームの心意気なのだろう。アンコールではステージ前方からドラムがせり上がり、藤原と松浦のツインドラムによる「Amazing」が実現。フレキシブルなミュージシャンという意味でアンダーソン・パークばりの印象を与え、小笹はセンターで典型的な大味のギターソロを弾くという、ヒゲダンならではの“ひねりの効いた豪快さ”を体現。大ラスにはオーディエンスが8分のクラップ~倍速クラップで参加できる「Stand By You」を。場内の照度もマックスに上がり、12,000人の笑顔とテンションが目視できた。音楽そのものが鼓舞する空間、その理想をOfficial髭男dismは初の武道館で完遂して見せたのだった。

(Photo by TAKAHIRO TAKINAMI)

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

Official髭男dism - 宿命[Official Video]
Official髭男dism「宿命」

■配信リリース情報
Official髭男dism「宿命」
配信はこちら

■ツアー情報
『Official髭男dism one-man tour 19/20』
10月26日(土)千葉・市川市文化会館
10月30日(水)奈良・なら100年会館 大ホール
11月1日(金)大阪・グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
11月2日(土)大阪・グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
11月7日(木)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
11月10日(日)石川・本多の森ホール
11月15日(金)北海道・小樽市民会館
11月17日(日)北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
11月23日(土)香川・サンポートホール高松
11月24日(日)兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
11月29日(金)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
11月30日(土)東京・オリンパスホール八王子
12月7日(土)岐阜・長良川国際会議場メインホール
12月8日(日)愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
12月13日(金)広島・広島文化学園HBGホール
12月15日(日)島根・島根県民会館 大ホール
12月20日(金)宮城・仙台サンプラザホール
12月22日(日)福島・いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
1月4日(土)福岡・福岡サンパレス
1月5日(日)福岡・福岡サンパレス
1月12日(日)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
1月13日(月)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
1月19日(日)鳥取・米子市公会堂
1月21日(火)岡山・倉敷市民会館
1月26日(日)新潟・新潟テルサ
1月31日(金)鹿児島・宝山ホール
2月2日(日)熊本・熊本県立劇場 演劇ホール
2月10日(月)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
2月11日(火)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール

指定席:¥6,000(税別) 
指定親子席:大人¥6,000(税別)/こども¥3,000(税別)
モバイルFC先行:7月8日(月)21:00〜7月23日(火)23:59

■リリース情報
3rd Single『宿命』
7月31日(水)発売
CD Only /¥700+税
※紙ジャケ仕様

<収録曲>
M1.宿命(2019 ABC 夏の高校野球応援ソング/「熱闘甲子園」テーマソング)
作詞・作曲:藤原聡 編曲:蔦谷好位置、Official髭男dism
M2.宿命(instrumental)
封入特典:「宿命」スコア
特設サイトはこちら

■テーマソング情報
熱闘甲子園
キャスター:古田敦也、ヒロド歩美(ABCテレビアナウンサー)
8月6日(火)スタート、決勝戦まで連日放送
ABCテレビ・テレビ朝日系列全国ネット
月〜木・土 23:15~23:45
金・日 23:10~23:40
※変更の場合あり
※決勝戦まで連日放送
※雨天等で全試合中止時は放送休止・大会終了まで放送期間延長あり

Official髭男dism 公式サイト
Official髭男dism 公式Twitter
Official髭男dism公式Instagram(@officialhigedandism)
Official髭男dism 公式YouTube Channel

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