SATANIC CARNIVAL プロデューサーI.S.Oが語る、フェスでストーリーを生み出すロマン

サタニックが生む“ロマン”

「どっちか論」じゃないといけないのか? 

一一ブッキングだけじゃなく、イベント制作もI.S.Oさんひとりで担っているわけですよね。相変わらずイベンターは入れずに。

I.S.O:はい。入れてないです。自分で書類書いて。この部屋はこうやって使います、みたいな計画書を書いて。あと消防の申請とかも。

一一イベンターから「そろそろウチを挟みませんか」みたいな声がかかることはないんですか。

I.S.O:それはないです。普段、PIZZA OF DEATHはイベンターさんとやっているけど、そこに筋通して「直接自分たちでやらせてもらっていいですか?」って頼むところから始まってる。そこに今さら「ひとつ噛ましてください」って言ってくるのは馬鹿げてますよ(笑)。お互いの守備範囲もわかってるし。今さら「楽したいですか? お金くれるなら楽させますよ」って言ってこないですよね (笑)

一一ははは。実際は全然楽じゃないと思うけど、楽しめるくらいには回せるようになっている。

I.S.O:うん、そうですね。

一一ただ、さっきの既視感の話でいえば、続けることはマンネリと背中合わせですよね。特にサタニックは毎回同じバンドがよく出ている。

I.S.O:うーん、そこはスペースの限界なんですよね。ライブハウス感っていうのは、あれくらいの会場じゃないと味わえないし。野外でパーンとやっちゃうと違ってくる。だから、マンネリしないように自分なりに工夫はしてます。「やっとこのバンドがメインステージに」っていうストーリーもそうだし、メインステージの最後の3バンドに関しては独自の演出を付けるようにしていて。その瞬間だけはワンマンライブを作る、ぐらいのテンションで綿密に打ち合わせするんです。だからメインステージに行けるかどうかもストーリーだけど、ケツの3バンドに入れるかどうかっていう流れもあって。2段階どころか3~4段階あるんですよ。

一一4段階?

I.S.O:まずはEVIL STAGEに出る、EVIL STAGEのトリをやる、SATAN STAGEに移る、最後の3バンドに入る、最後にトリをやれるか、っていう。フォーリミとかまさにそうですね。EVILの一番手から始まって、毎回出演時間が遅くなっていって、遂に今年はメインのトリ。始まる前も、今までの映像を全部ビジョンに流しながら「……遂に!」っていう演出があって。そうやって見てると感慨深いものもある。ちゃんとしっかり掴んでいったなぁって思う。あとアツいのはNOISEMAKER。

一一どんなストーリーがあるんでしょう。

I.S.O:最初に出てもらった時から「NOISEとフォーリミは絶対行くだろう」っていう見込みだったんですよ。1回目に出てもらった時、彼らはもうA-SKETCHと契約してて。なんですけど、契約してからのNOISEが意外とうまく行かなかったんです。客観的に見ても、好きだけど誘えないなぁって。で、2017年に久しぶりに出演してもらったんですけど、その後「事務所とレーベルの契約が終わった」って聞かされたんです。でも、その厳しい状況下で彼らはめちゃくちゃ格好いい曲を自主で出したんです。「SADVENTURES」っていう曲。これは誘うしかないと思わされて。で、2018年にはEVIL STAGEのトリで素晴らしいライブをやって。その後、リリースしたミニアルバムもまた良くて。ジャケットのアートワークも、海外のWK Interactっていうストリートアーティストを日本に呼んで、渋谷のでっかいビルの壁にペイントさせるっていうのを実現させてたんですよね。そういうのを一通り見てるから、今、SATAN STAGEでやる価値のあるバンドだって思えて、今年SATAN STAGEに出てもらったら……まぁ余裕のライブでしたね。ステージの大きさもバンドに見合っていて。やっとバンドが立つべきステージに辿り着いた感じでした。

一一もうバンドの波乱万丈な歴史に完全に寄り添ってますよね。それはPIZZA OF DEATHの仕事なのかって言われたら、答えはYESなんですか。

I.S.O:いや、PIZZA OF DEATHの仕事じゃないですよね。だからSATANIC CARNIVALはPIZZA OF DEATHのイベントじゃない。それは最初に明言してる。その気持ちでやってるから、たまたまそういうストーリーが生まれると自分にもすごい相乗効果があるんですよ。

一一このフェスがあり、バンドとの交流を続けることで、I.S.Oさん個人に得るものがあると。そうなるとメンツはさらに固まりがちになると思うんですけど、それでも若手枠を用意して、初登場の若手バンドを出していくことは大事ですか。

I.S.O:絶対出したいですね。そもそもシーンが続いていってるわけで、若い子にはストーリーってあんま必要ないじゃないですか。「やべぇ!」みたいな勢いのほうが大事だったりする場合がある。だからこそ「え、お前ら出れるんだったら俺らも出れんじゃね?」みたいな感覚も若いバンドマンには持ってほしいし。自分に可能性を感じられるって、いいことじゃないですか。どうせ無理だよ、とは思ってもらいたくない。そうなると意識的に若手を誘いたくなるんですね。あと今回かなりチャレンジだったのがw.o.d.。

一一うん、サタニックにハマるのかってびっくりしました。

I.S.O:そう。「すごく格好いいけど、サタニックとは合わないかなぁ」って躊躇してたけど、お互いに刺激になればと思って誘ったら「出たい」って言ってくれたから。ただ、ハードコアとかオルタナ的なバンド、そこを触るか触んないかはサタニックにとってなかなか難しいところで。もちろん好きですよ? このシーンがもっと多種多様で深いこともわかってます。

一一たとえば、自分が好きなバンドを全部ごちゃまぜにして「どうだ!」って見せる方法と、あくまでみんなが喜ぶ、ちゃんと客が入るメンツっていうものがあるとして。I.S.Oさんはどっちを選ぶんですか。

I.S.O:……それ「どっちか論」じゃないといけないのか? って思います。「どっちか論」でやらないで、自分のバランス感覚でいいとこ取りしてやろうと思ってる。で、ハードコアのバンドが難しいのは、こういうメンツの中に出ていくと逆に目立つ、刺激になる反面、それこそ「怖ぇ」で終わっちゃうこともあるからで。サブステージと言っても6000人規模のフロアだし、そこで伝わるライブをやらなきゃ意味がなくて。どこまで届けられて、人を巻き込めていけるかっていうのも必要なんですね。

一一確かに、そのバンドに似合う規模、似合う会場ってありますよね。

I.S.O:そう。それこそゴリゴリのハードコアバンドをかっこ良いと思って、誘いたいと考えたても、それがバンドにとって良い見せ方にならないなら誘わない。ハードコアの仲間にも相談して「そうだよねぇ」って言ってたけど(笑)。だからそういうバンドに出会う機会は、サタニックのその先にあればいいかなって思う。サタニックきっかけで何か好きなバンドができて、試しにライブハウス行ってみたらたまたまゴリゴリのハードコアバンドがいたり。そういう出会いでいいと思う。俺も、せっかく出てもらうのに客にポカーンとさせるようでは意味がないじゃないですか。だからお客さんの感性も育てなきゃいけないし、育った人はライブハウスに行けばいいんだし。出演バンドたちもそれをわかってるから「ライブハウス来いよー」ってみんな言うわけですよね。だから、なんでもかんでもフェスに求めようとするのはナンセンスかなって僕は思う。

一一だからこそ、サタニックは入り口であると。ほんとにバンドのメリットを第一に考えてますね。

I.S.O:これって結局レーベルの人間だから、ですよね。バンドを駒として見てないですから。……あ、バンドをただの駒としてて見てるイベントが多いって言いたいわけじゃないですよ!

一一(笑)。わかりました。来年はひとまずお休み、そして2年後に次があることは確かなんですよね。

I.S.O:はい。そのつもりでやってます。難しいですけどね、続けるのは。自分なりにいろいろストーリーはあるけど、いろんなお客さんがいて。メンツだけ見て「あー、今年も一緒な感じじゃん」っていう人も当然いるだろうし。

一一ただ、私がフロアで見ていた限り、かなりのお客さんがサタニックのストーリーを共有していたと思いますよ。

I.S.O:あぁ。そう言ってもらえると救われます。やっぱりこのシーンは強いなって思います。なんだかんだでパンク・ラウド系は活気ありますよね。相変わらず若手もどんどん出てくるし。

一一同時に、中年になってもファンが離れない。子連れのお客さんがすごく多いのも印象的でしたね。これは20年前にはなかった光景。

I.S.O:そうですよね。僕ら世代がみんな親になりだして、今は僕らの後輩に小さな子どもが生まれてるような時代で。90年代から始まったシーンがあって、お客さんがみんな年齢を重ねていって、新たな家族ができたり、彼らの子どもがライブに来たり、また新たなバンドが登場したり。そうやって世代が繋がっていくのはロマンティックだなと思うし、そのロマンの一端を担えているのは、すごくやりがいがありますね。

COUNTRY YARD(写真=半田安政(Showcase))
w.o.d.(写真=岸田哲平)
Survive Said The Prophet(写真=半田安政(Showcase))
SPARK!!SOUND!!SHOW!!(写真=岸田哲平)
EGGBRAIN(写真=本田裕二)
ENDZWECK(写真=岸田哲平)
GARLICBOYS(写真=本田裕二)
バックドロップシンデレラ(写真=瀧本 JON... 行秀)
ハルカミライ(写真=中河原理英)
HAWAIIAN6(半田安政(Showcase))
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MONGOL800(写真=瀧本 JON... 行秀)
G-FREAK FACTORY(写真=中河原理英)
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dustbox(写真=半田安政(Showcase))
The BONEZ(写真=中河原 理英)
Ken Yokoyama(写真=本田裕二)
WANIMA(写真=瀧本 JON... 行秀)
ROTTENGRAFFTY(写真=岸田哲平)
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(取材・文=石井恵梨子/写真=中村ナリコ)

SATANIC CARNIVAL '19 オフィシャルサイト 

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