ジャニー喜多川の“個人の成長を信じる”という哲学 男性アイドルの礎築いた功績を振り返る

 また、太田氏は、以前、『蜷川幸雄のクロスオーバートーク』(2015年/NHK第一)にジャニー氏が出演した際に話していた“成長しない子はいない”という言葉が特に心に残っていると語る。

「ジャニーさんは必ず誰もが成長して個性を発揮できるものなのだと信じ、その個性を見出すことが自分の役割だと感じていたように思います。ジャニーさんの審美眼、タレントを見る目が天才的だったということはもちろんありますが、個人の成長を信じるということがジャニーさんの哲学であり、信念だったのだと。また、成長を見届けるというのは私たちがアイドルを応援する喜びとも一致します。テレビでアイドルたちが活躍し始める1970年代以降の時代の流れと、ジャニーさんが送り出すタレントの魅力がマッチした。だからこそ、ジャニーズ事務所は男性アイドルグループの一大事務所となっていったのでしょう。中でもSMAPはテレビを通してグループが成長する姿を視聴者に見せてくれた筆頭であり、その後デビューしたグループもその道を辿っている。そう考えると、先ほどお話させていただいた「少年たち」は、成長する姿の美しさのシンボルでもあるのかもしれません」

 ジャニー氏が社長として一時代を築いてきたジャニーズ事務所だが、今年1月にはジャニーズJr.の育成や公演プロデュースを手がけるジャニーズアイランドを子会社として設立。2018年いっぱいで芸能界を引退した滝沢秀明を社長に据え、新たなスタートをきったばかりだ。

「新たなメディア展開には慎重なジャニーズ事務所でしたが、ここ数年でネット進出にも積極的になっています。特にジャニーズJr.世代はいわゆるデジタルネイティブ。YouTubeやVTuberなどの活動も抵抗なくできる世代です。ジャニーズJr.のメンバー、グループの適材適所をみつけることは、間口を広げるという意味でも必要なこと。テレビでもネットでも、それぞれにあった成長の見せ方がある。こうした新たな取り組みにもジャニーさんの精神は受け継がれていくのではないでしょうか」

 最後に、ジャニー氏と言えば、グループのネーミングセンスや、「YOU、◯◯しちゃいなよ」という独特な言い回しが注目されるなど、メディアに登場せずとも常に存在感を放っていた印象もある。

「グループのネーミングにはそれぞれ不思議な説得力とインパクトがありますよね。また、テレビなどのメディアを通してタレントたちが語るエピソードのおかげで、ジャニーさんのことを身近に感じることができていた。裏方でありながら、ジャニーさん自身もエンターテイナーとして私たちを楽しませてくれました。プロデューサーとして名を馳せた人はたくさんいるけれど、そういった意味でもジャニーさんは日本の芸能史上とても稀有な存在でした」

(文=編集部)

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