King Gnu「白日」が2019年リリース曲として上半期ストリーミング1位、ヒットの理由を再考察

King Gnu「白日」ロングヒットの理由は?

「白日」は間口が広く、同時に通を唸らせる要素のある曲

 たとえば、スローテンポであるはずなのに、ビートが2倍で刻まれ続けているため、いわゆるスローバラードとは異なる印象を受けるテンポ感。Aメロ→Bメロ→サビという定型的なJ-POP構造とは違う展開。拡声機を片手に歌う常田大希(Gt/Vo)と、その常田に“嫌われない歌声”と称された井口理(Vo/Key)によるツインボーカル。譜割りが細かく、音程を激しく上下させるようなボーカルのライン(カラオケで多く歌われているようだが決して歌いやすい曲ではない)。このように、「白日」には従来のJ-POPにおけるヒットソングとは異なる要素が多く、「こういう曲調の方がきっと流行るから」という予定調和は読み取れない。しかしそれゆえに、この曲には何となく看過できないような、絶妙な違和感、フックが多数ある。

 一方、バンド名のロゴに「JAPAN MADE」とあるように、彼らは自身の楽曲にJ-POP的な要素を意識的に取り入れていることをインタビューなどで度々明言している。ここで言うJ-POP的とは、言い換えると“歌をフィーチャーする”ということで、特に「白日」は特にそういう要素が強い。この曲は、井口のファルセットボイスとピアノの二重奏から始まっているし、以降も井口の澄んだ歌声が美しく聴こえるようなバランスで成り立っている。

 つまり「白日」という曲自体が、間口の広く、同時に通を唸らせる要素のある曲だったからこそ今回のようなロングヒットに結びついたのだ。バンドシーンといえば、少し前までは「どういう曲調だったらフェスで盛り上がるか」という尺度が偏重されがちな傾向にあった(いわゆる“四つ打ち”が流行ったのもそのためと言える)が、今はそれほど重視されていないように思う。“配信からヒットが生まれる”という環境が整ったことによってそうなっていったのか、自らのクリエイティブの強度を信じ、世に提示することのできるミュージシャンが増えたからそうなっていったのか――という点に関しては“鶏が先か卵が先か”みたいなところがあるが、いずれにせよ、シーンが面白くなってきたことは明らかだ。今後の展開が楽しみであると同時に、バンド、捨てたもんじゃないぞと今は思っていたりする。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。


■作品情報
King Gnu 配信シングル「白日」
日本テレビ系土曜ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』主題歌
ダウンロード/ストリーミングはこちら

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