The Winking Owl、メンバー復帰で踏み出した新章への一歩「悩んでる感じが完全に取っ払われた」

The Winking Owlが語る、新体制でのスタート

やっと表に出すことができた「ポップでキャッチーなもの」(Yoma)

ーーそんなRanmaluさんを再び迎え、The Winking Owlは3年ぶりのフルアルバム『Thanksラブレター』をリリースします。この3年の間にはミニアルバム『Into Another World』(2017年5月発売)やシングル『Try』(2018年11月発売)もありましたが、まずRanmaluさんが脱退したあとにThe Winking Owlをどういう方向に進めようと考えていましたか?

Yoma:僕たちはインディーズ時代にエモやポストハードコアというジャンルで括られてきたんですけど、メジャー1作目のフルアルバム『BLOOMING』ではそれを受け継ぎつつ、よりメジャー感がある進化したサウンドを目指していました。でも、自分たちとしてはもっと前からよりポップでキャッチーなものも好きだったのに、前作ではそこまでやりすぎないようにしていたところがあって。実は6曲目の「Night & Day」は『BLOOMING』を制作しているときにはデモができていたんですけど、当時はまだ出すタイミングじゃないよねってことになって、去年の11月に出したシングル『Try』のカップリングで先に発表していたんですけど、やっと表に出すことができた曲なんです。

ーーそうだったんですね。となると、Luizaさんが書く歌詞にもその影響が及ぶんじゃないかと思いますが?

Luiza:そうなんです。以前からサウンドと歌詞をイコールにさせないとひとつの作品にはならないと意識していて。私は回りくどい表現の仕方が昔から好きで、そのほうが奥ゆかしさがあると思っていたんです。時間が経ってから読んだときに最初の解釈と変わっていたりするのって、自分の中の成長にもつながったりするじゃないですか。そういうのって面白いなと思っていて書いていたんですけど、そればかりに固執しちゃうとよくないなと。特にこのアルバムのサウンドには外側に向けて他者とつながっていけるような書き方が合うと確信して、そういう歌詞を書こうと決めました。ただ、すごく大変でしたけど(笑)。

ーー逆にストレートでわかりやすくすることに、恥ずかしさもあったり?

Luiza:そうなんです。4曲目の「片想い」なんてどストレートに書いたので、「大丈夫かな?」ってみんなに確認を取りましたし(笑)。この曲はR&Bっぽいなと自分の中で解釈していたんですけど、R&Bの歌詞ってどストレートなものが多いから、だったら思い切って書いてみようかなというのもありました。あとは、7曲目の「one for all」もです。これは初めて他者とつながりたいっていう内容で、価値観が違う人と仲よくやっていくことがテーマなんですけど、ちょうど去年にサッカーワールドカップがありましたよね。サッカーってパスを回さないとゴールまで繋がらないじゃないですか。ひとりで蹴り続けるのってあんまりよくないと言われているのを知った上でサッカーを観たら、素晴らしいスポーツなんだというのを改めて理解したんです。

ーーワールドカップがきっかけで、他者とのつながりと向き合ったと。

Luiza:はい。だいぶ自分と向き合いましたね、この曲に関しては。すごくつらい作業でした(苦笑)。自分の弱いところも認めないと言葉として表現できないし、相手を否定しちゃうことになってしまうし。そういうことがあったおかげで自分も成長できたし、歌にも影響はあるのかなと思います。

ーー3年前のインタビューで、Luizaさんは『BLOOMING』の歌詞に「探す」というワードが多く含まれていると言っていましたが、それを踏まえて新作を聴くと「見つかった」のかなと思いまして。

Luiza:ああ、なるほど。そうかもしれませんね(笑)。

ーー他者に向けて語りかける、意思を伝えてつながることで見えたものもあるでしょうし。アルバムタイトルに使われている“ラブレター”というワード自体、まさに他者とのつながりを表すものですしね。

Luiza:まさにおっしゃるとおりです。ラブレターは異性だけに使う言葉にしておくには勿体ないなと思って。

ーー気持ちを伝えるというのもそうだし、相手との気持ちの共有というのもあるし。でも、このタイトルはこれまでのThe Winking Owlの作品からすると、かなり勇気のいるタイトルかなと。「片想い」や「君のままで」といった曲名しかり。

Luiza:ですね。日本で活動しているので、日本人がパッと見て読める、それも他者に向けて客観視できるようにというのを意識して、ちょっと冒険してみました。

挑戦するにあたって何かしらイメージや裏テーマがあった(KenT)

ーーポップでキャッチーなものって、一見シンプルでストレートという印象がありますけど、実はものすごく計算されていたり作り込まれていたりするものだと思うんです。このアルバムで皆さんがトライしている演奏やアレンジもまさにそういうものだなと。演奏面、めちゃめちゃ凝っていますものね。

KenT:はい、仕上がってます(笑)。なかなか挑戦が多かったですね。

ーーそれこそわかりやすいメロディ、わかりやすい言葉を伝えるとなると、歌を邪魔しない演奏も必要になってくるのかなと思いますが?

Yoma:そうですね。今回は今までよりもわかりやすく、難しい演奏という部分はちょっと少ないんですよね。ギターソロも前作より全然少ないですし。だからといって簡単になったわけではなく、地味に難しい演奏が結構増えたんじゃないかな。

ーーRanmaluさん、久しぶりのレコーディングはいかがでした?

Ranmalu:実は復帰したときにはもう完成していたので、制作には関わっていないんです。確かにおっしゃるとおり、『BLOOMING』のときに悩んでいた感じが完全に取っ払われて開けた感じが全編通して感じられる。でも、演奏する側としては難しいアプローチもあるので、そういう意味ではミュージシャンとして、プレイヤーとして成長させてくれる曲たちが揃っていると思います。

KenT:うん、間違いない。

ーー個人的にはドラムがとにかくカッコいいなと思って。ちょっとしたフレーズが耳に残るんですよ。

KenT:そう言っていただけると、頑張ったかいがあります(笑)。さっき挑戦が多いと言いましたけど、挑戦するにあたって何かしらイメージや裏テーマというのがあって。これは初めて言うんですけど、4曲目の「片想い」はサビでは4つ打ちでわかりやすい大きいビートなんですけど、AメロやBメロ、フィルなんかはグルーヴィーなものが多くて、イメージとしてはレッチリ(Red Hot Chili Peppers)のチャド・スミスなんです。

ーーそういうエッセンスが含まれていると。

KenT:はい。5曲目の「Confession」は日本のロックバンドだけど洋楽に近いアプローチということで、ワンオク(ONE OK ROCK)のTomoyaさんを意識したし、8曲目「君のままで」は先輩のFIVE NEW OLDのHAYATOさんのドラムをイメージしたり。もちろん自分の要素も混ぜつつなんですけどね。僕のカラーが一番ストレートに出ているのは、10曲目の「Loser Unbeatable」かな。何も考えずに叩ける、疾走感があるビートで、フィルの一つひとつが毎回アドリブで叩けてしまうような感じなんです。もしアルバムを1周聴いて「KenT、丸くなったな」という印象を持った人がいたとしたら、何度か聴いてほしいな。楽曲の良さを引き立たせるためにこういうプレイをしているんだってことを理解していただきたいですし。そこは聴きどころといいますか。注目していただきたいポイントです。

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