三浦大知のボーカル表現を徹底分析 新作『片隅 / Corner』に見る、発声の繊細さとグルーヴの鋭さ

三浦大知のボーカル表現を徹底分析

 さて、以上を踏まえて現在の三浦に戻ってみて考えたいのは、やわらかいからなにが凄いのか、ということだ。簡潔に、アタックの繊細さによって紡がれるグルーヴが凄い、と言っておこう。

 グルーヴを考えるとき、「小節のどこで音が発されるか」というふうに、「点」で考えがちだ。とすると、リズムを強調するには子音などのアタックを強調し、鋭さを押し出すほうがいいかのように思える。しかし、三浦の歌い方はむしろアタックの表現にやわらかい抑揚をつけ、声量をコントロールすることでグルーヴを表現している。バラードにもダンスチューンにも歌い方を大きく変えることなく自然に対応できているのは、このアタックのコントロールによるのではないか。

 こうしたやわらかさを保ったグルーヴの表現による、パワー型ではないがハードなビートにも負けない、しなやかな存在感こそ三浦大知のボーカルの魅力だ。近作では「EXCITE」(2017年)のように若手ビートメーカーとのコラボレーションでその本領が発揮されている。

 もちろんそれはバラードにおいても存分にいかされる特徴でもある。Nao'ymtとのコラボレーションが洗練を極めた『球体』(2018年)はビートのバリエーションやサウンドの明晰さも含めたアルバムとしての完成度が高く評価されたが、極上のボーカルアルバムでもあることは強調しておきたい。個人的にしばしば引き合いに出すのは「綴化」だ。一音一音を水面に波を立てずに置いていくかのような発声の繊細さと、そこから感じられるグルーヴの鋭さのギャップには驚かされる。

 ファン層を着々と広げて日本随一のパフォーマー、エンターテイナーとしての評価を盤石なものにしつつある三浦大知。『球体』を経て『Be Myself』から『Blizzard』、そしてこの度リリースされた『片隅 / Corner』と続いたシングルはその期待を裏切らない。

三浦大知(Daichi Miura) / 飛行船 from DAICHI MIURA LIVE TOUR ONE END in 大阪城ホール

 また、世界公開された『ドラゴンボール超 ブロリー』で「Blizzard」が主題歌に起用された効果もあってか、YouTubeにアップロードされた『DAICHI MIURA LIVE TOUR ONE END in 大阪城ホール』から抜粋された「飛行船」のパフォーマンス映像には海外からのコメントも数多く見られる。今後の活動はいっそうスケールが大きくなるはずだ。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

■リリース情報
『片隅 / Corner』
6月12日(水)
<CD+DVD>¥1,620(税込)
<CD+Blu-ray>¥2,160(税込)

LIVE DVD & Blu-ray
『DAICHI MIURA LIVE TOUR ONE END in 大阪城ホール』
6月12日(水)
<2DVD+2CD>¥7,344(税込)
<Blu-ray+2CD>¥8,424(税込)

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『DAICHI MIURA LIVE TOUR ONE END in 大阪城ホール』各ショッピングサイトはこちら

■関連リンク
三浦大知OFFICIAL FANCLUB「大知識」
三浦大知オフィシャルHP
『白衣の戦士!』オフィシャルHP

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