アンジュルム 和田彩花は“アイドルの可能性”を広げてきた 卒業機にグループ牽引した活動を振り返る

 ただ、スマイレージ時代の後半から、グループも和田彩花自身も目を見張るような成長を見せるようになった。初期メンバーの脱退や二期生・三期生の加入といったグループの変遷によってリーダーとしての自覚が芽生えたことも大きな要因だろう。一個人としては、アイドル活動と同じくらいに彼女のライフワークとなっている美術との出会いも大きかったに違いない。天真爛漫な立ち振る舞いはそのままに、時に母性を感じさせるほどの包容力でメンバーの個性を一つにまとめるリーダーの大役をこなしつつ、美術専攻で大学に進学。アイドルと美術研究を両立することで、彼女はアイドル活動の可能性を十分に広げてきたのだ。

 アイドルだからといって諦めることなく、自分のやりたいことをとことんやり抜く。そんな彼女の姿勢がアンジュルム全体に与えている影響も大きいだろう。アンジュルムが「最強」と言われる理由は、キャリアも見た目も性格も趣味・嗜好もバラバラなメンバーが遊びの場では全員で仲良くはしゃぎ、ステージに立つと一丸となって圧巻のパフォーマンスを披露する、多様な個性が集まった団結力にある。それぞれが自分らしさを活かせる土壌を作りつつも、ここぞという場では一つになって圧倒的な力を発揮することが出来るのも、和田彩花という一つの大きな柱があったからこそに違いない。

 アンジュルムは、特異なコンセプトや奇抜なパフォーマンスに頼ることなく、それぞれのメンバーが個性を発揮することで既成概念を超えていく。それは多様性の許容が当たり前になりつつある今、とても現代的な在り方のようにも思える。そんなアンジュルムを形作った最大の立役者、和田彩花は卒業に際して何を見せてくれるのか。卒業後にどのような未来を見据えているのか。また、残されたメンバーはどのように彼女の残した意志を受け継いでいくのか。6月18日をもって別の道を歩み始める和田彩花とアンジュルム。それぞれのやり方で、アイドルの可能性を広げていってほしい。

■青山晃大
1983年生まれ、三重県津市出身。フリーランスの音楽ライター。「ザ・サイン・マガジン・ドットコム」「Qetic」「CROSSBEAT」他で執筆しています。

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