浪川大輔の歌声はなぜ癖になる? 『HIYAKE!ダンシング』に感じる多彩な“エンタメ性”

浪川大輔の歌声、なぜ癖になる?

 また、「D→A→B→C→D」進行は始まりと終わりの共通した“回帰型”。2度目のDメロには“着地感”や“安心感”がもたらされる構造だ。一般的な回帰型の「C→A→B→C」進行と違って、展開の多さからグイグイと前へ踏み込んでいくイメージも付加される。それでいて2度目のDメロには小結尾のような着地感をしっかりと感じ取れるため、展開の多さと着地の締まりを同時に持った、いわば“起承転転結”のような楽曲展開だ。

 2番では、Dメロをカットしてコール&レスポンスのブロックであるEメロ〈エーオ エーオ HI・YA・KE ! Dancin’〉へ一度迂回。間奏を挟んでラストは「B→C→C→D→D」と締める。最後のDメロ2連続は終結部としての意味合いが非常に強い。ライブでの盛り上がりも重視しつつ、楽曲の展開も不自然さがない。安心感と高揚感が適度にミックスされた現代J-POPの王道のような作りだ。

 ところで、浪川大輔といえば映画の吹き替えやアニメなどで誠実な青年の声をあてている声優というイメージが強い。『スター・ウォーズ』シリーズのアナキン・スカイウォーカー役などがよい例だろう。しかし、実はこれまでのディスコグラフィーにおいて、正統派男性ボーカルの楽曲に混じり、今作のようなパーティー感のある楽曲を一貫してリリースしてきた“幅の広さ”を持ったアーティストでもある。

 たとえば、『UTAO』(2012年)収録の「ファンキー☆トゥナイト」、『Ring』(2013年)収録の「ファンキー☆フィッシング」、『ELEVATION』(2016年)収録の「激アツ超絶Saturday Night!!」、『My Treasure』(2017年)収録の「俺にはおっさんが見えている」、『Picture』(2018年)収録の「イエローマン」……といったように、必ずリリースに1曲ほど彼の“もうひとつの一面”を感じ取れるような楽曲を忍ばせてきた。

 今作は、まさにその浪川のもうひとつの顔を全面に押し出したような楽曲だ。ある意味、そうした路線の曲を満を持して表題曲としてリリースしたとも言えるだろう。同じく声優の吉野裕行とのユニットUncle Bombでもバラエティ豊かな楽曲を歌っているが、昨今盛り上がりを見せる声優アーティストのシーンでは、こうした“幅の広さ”が鍵となるのかもしれない。ひとつの路線に縛られず、多様な引き出しを見せられる器用さが、これからの歌い手には求められるように思う。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
blog
Twitter(@az_ogi)

■リリース情報
浪川大輔『HIYAKE!ダンシング』
発売日:5月29日(水)
価格:【豪華盤】2,000円(+税)/CD+DVD※初回限定生産
【通常盤】1,400円(+税)/CD

<CD収録曲>
1.HIYAKE!ダンシング(作詞:大森祥子/作曲・編曲:園田健太郎)
2.No theory(作詞・作曲:佐伯youthK/編曲:宮崎誠)
3.ノンストレスナイト(作詞・作曲:大内慶/編曲:ノンストレス)

<DVD収録内容>
1.HIYAKE!ダンシング(MUSIC CLIP)
2.TRAILER

<初回生産分封入特典>
メッセージカード
※豪華盤/通常盤で、それぞれ写真・メッセージが異なる。

■ライブ情報
『Kiramune Presents Daisuke Namikawa Live Tour 2019 “YELLOW MAN” 「ダンシングナイト」』
<大阪公演>
Zepp Namba
6月1日(土)開場17:00/開演18:00
<宮城公演>
Rensa
6月8日(土)開場17:00/開演18:00
 <広島公演>
BLUE LIVE HIROSHIMA
6月29日(土)開場17:00/開演18:00
 <愛知公演>
ボトムライン
7月14日(日)開場16:00/開演17:00
<千葉公演>
舞浜アンフィシアター
7月20日(土)開場17:00/開演18:00
7月21日(日)開場15:00/開演16:00
ゲスト:Uncle Bomb ※7月20日(土)のみの出演となる

■関連リンク
浪川大輔 オフィシャルサイト

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