ダンスミュージック産業の現況や課題は? イビサで発表された最新レポートから読み解く

ダンスミュージック産業の現況や課題は?

 とはいえ、一部のスターDJの活躍を一側面だけ切り取って楽観視するのも問題だろう。オンラインのファンベースについてまとめたデータでは、SNSなどのフォロワー数の増加率をもってKravitz、Lens、de Witteの躍進を伝えている(p.11)。しかし、最もInstagramのフォロワー増加率が高いde Witteのフォロワー数が66万人であるのに対して、売れっ子覆面DJであるMarshmelloのフォロワー数は2300万人。文字通り、桁が違う。「成長」という観点から見れば、たしかに女性DJの存在感はうなぎのぼりなのかもしれないが、あくまでもこの変化は始まったばかりにすぎない。

 本レポートでは女性DJの活躍に焦点をあててはいるものの、いささかチェリーピッキング気味の感も否めない。こうした機運が生まれていることをスプリングボードに、継続的で意識的な取り組みにも目を向ける必要がある。その点、このレポートでも紹介されているKeychange、#bookmorewomen、shesaid.soなどの取り組みは注目に値する。とりわけ、「2022年までにフェスラインナップのジェンダー平等を実現」という目標を掲げたKeychangeには150以上のフェスが賛同し、動き出している。

 やや参照するデータが恣意的に思えるところもあるが、以上のように知るきっかけ、考えるきっかけを提供してくれる貴重なレポートだ。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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