DECO*27が語る、新会社設立で拡張したボカロPとしての未来「文化は人がいないと生まれない」

DECO*27が語る、新会社設立で拡張した未来

DECO*27の10年間を詰め込んだ一枚に

DECO*27 - 夜行性ハイズ feat. 初音ミク

ーーDECO*27さんはよく「ミクの声自体が好き」と言っていますが、あの声だからこそ表現できる感情がある、ということですね。今回の制作でもそれを改めて実感した、と。

DECO*27:今回のアルバムも「彼女の声じゃないとできなかっただろうな」と思います。たとえば、「乙女解剖」の〈涎をバケットの上に塗って〉も、結構きわどい表現ですしーー。

ーー「夜行性ハイズ」はどうですか?

DECO*27:これは『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』と、『第70回さっぽろ雪まつり』に関連したコラボ曲で、僕も実際に札幌でコラボを見て感動しました。曲としては、ネガティブなことをダメだと言わずに、「それでもいいよ」と許容して前に進んでいこうという曲ですね。ミクと、愛美さんが演じる(戸山)香澄が一緒に歌っているところも、不思議なくらい自然に感じました。次の「ヒバナ」は、もともとは「ゴーストルールⅡ」として作った曲ですね。仮タイトルもそのまま「ゴーストルールⅡ」で、「あの曲を聴いてくれてありがとう」という気持ちを込めた曲でした。でも、それだけでは面白くないので、英語のフレーズを入れたりして。今では再生数が「ゴーストルール」を超えていて、自分でもビックリしているんです。歌い手の方も、VTuberの方も、色んな方が歌ってくれていてすごく嬉しいですね。

DECO*27 - 愛言葉Ⅲ feat. 初音ミク

ーーそして最終曲は「愛言葉Ⅲ」です。この曲はとにかく感動的な曲ですね。

DECO*27:「Ⅰ」と「Ⅱ」があって、いよいよ3部作の完結編です。これまでの10年分の感謝を込めて、「みんなありがとう」という気持ちを曲にしたら、みんなもすごく喜んでくれた曲で。でも、早くも「Ⅳはいつかな?」というコメントもあったりしたので、今はそれがめちゃくちゃプレッシャーです(笑)。まだ全然作ってはいないですけど、「Ⅳ」にするのか、「0」にするのか、それとも「THE ORIGIN」にするのか「RETURNS」にするのか……。どうしようか考えているところですね(笑)。歌詞の話で言うと、〈僕ら”II”を嫌って ”I”に戻って〉という部分は、たとえばお付き合いしている人がいて、一度は離れてしまったけれど、よりを戻して、この「Ⅲ」で家族になって未来に繋いでいこう、という内容になっていて。これは、ただ恋愛の話だけではなくて、ボーカロイドシーン自体もだいたい3つの時期に分けられるんじゃないかと思って発想した部分でした。それを数字にたとえて、「それぞれの時代に思い入れを持ってる人がいて、それは人それぞれ違うかもしれないけど、一旦それは置いてみんなで次に行こうぜ」というメッセージも込めているんです。「今も超楽しいよ」って。

ーーボーカロイドシーン全体へのラブソングでもある、と。

DECO*27:そうです。ただ、「Ⅰ」とも「Ⅱ」とも基本的にはコード進行が変わっていないので、その中で新しい曲を作るのは大変でした。これまでとは違う曲にしつつ、同じ雰囲気が感じられる曲にもしたかったので。そのバランスがすごく難しかったですね。今回のアルバムは、この「愛言葉Ⅲ」を筆頭にした最後の過去曲ラッシュの部分の楽曲が制作の最初の頃にできて、そのあと他の部分ができていった感じでした。なので、たとえば「妄想感傷代償連盟」にあった〈行き場のない愚者のメロディー〉という歌詞が、「愛言葉Ⅲ」では〈行き場のある愛のメロディー〉に変わっているように、この最後のセクションの曲で、まずは自分がそれまでやってきたことに決着をつけて、そこから新しい要素を加えた曲に挑戦していった形でした。

ーーそしてやはり、「愛言葉Ⅲ」は初音ミクへのラブソングでもあるわけですよね。

DECO*27:それはもちろんです。もう一緒に10年やってきた仲で、「不思議なパワーを持った子だな」と、今でも思います。

ーー出会った当時と今とで、ミクとの向き合い方に変化を感じる部分はありますか?

DECO*27:芯の部分は全然変わっていないですけど、ミクに対する自分の目線が変わってきたような感覚はあります。たとえば、出会った頃は自分と歳の近い女の子だったものが、途中から娘のような見え方になってきたりして。あとは、ミク自身も成長しているんですよ。僕はミクの調声をアルバムごとにちょっとずつ変えてきましたけど、それは「ミクもちゃんと上手くなってるね」ということを表現したかったからでもあって。だから、「愛言葉Ⅲ」や「ヒバナ」のようにすでに動画で出している曲も、今回のアルバム用に少し声を変えているんです。

ーーなるほど、これまでの作品をすべて聴くと、ボーカリスト・初音ミクの成長も分かるようになっているんですね。現在のボーカロイドシーンにはどんな楽しさを感じていますか?

DECO*27:めちゃくちゃ楽しいですよ。初期のボカロシーンはニコニコ動画内で盛り上がっていて、それはそれでとても楽しかったですけど、今はニコニコ動画だけではなくて、YouTubeやBiliBili動画、Twitter、微博(weibo)、nanaのように、色んな場所に広げられる可能性があって。プラットフォームごとに反応も違いますし、たとえば「ここで受け入れられそうな曲だな」と想像できた場合には、歌詞にもそのプラットフォームに寄り添った要素を入れていたりするんです。たとえば、「乙女解剖」の〈半目開きで娘娘する〉の〈娘娘〉って、実は中国語なんですよ。この曲は実際に、BiliBili動画ではダントツで人気の曲になっています。あとは、向こうでも意味が分かるように漢字タイトルにすることもあったりします。

ーー公開する場所が色んなプラットフォームに広がっているからこそ、色んな要素やカルチャーを混ぜることができるようになっている、と。

DECO*27:そうですね。それこそ、〈娘娘〉の部分は中国語圏の人にも楽しんでもらおうと思って入れた歌詞ですけど、それを日本のファンの人たちも「すごく印象に残る」と言ってくれていたりして。そんな風に、色んなところが繋がっているのかな、と感じることはあって、それが楽しいです。そういう意味でも、今は曲を作る感覚というか、思考が全然違ってきていると思いますね。最初の頃は「この曲を聴いてくれ!」という気持ちが100%で、本当にそれしかなかったんですけど(笑)、そこから自分を取り巻く環境が変化して、ミクも成長していって。今はより考えて曲を作るようになったと思います。そう考えると、今回の『アンドロイドガール』は、「僕の10年間を詰められた作品」ですね。そのうえで「まだ終わらないぞ」という気持ちでいるので、これからも楽しみにしていてもらえたらすごく嬉しいです。

(取材・文=杉山仁)

■リリース情報
6thアルバム『アンドロイドガール』
5月22日(水)リリース

初回限定盤(CD2枚組)¥3,000+税
通常盤(CDのみ)¥2,500+税

<収録内容>
01 Reunion
作曲編曲: DECO*27 & Rockwell
02 アンドロイドガール
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
03 スクランブル交際
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
04 モスキート
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
05 乙女解剖
作詞作曲:DECO*27 編曲:emon(Tes.) & Rockwell
06 人質交換
作詞作曲:DECO*27 編曲:emon(Tes.)
07 シンセカイ案内所
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
08 サイコグラム
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
09 夜行性ハイズ
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
10 ヒバナ -Reloaded-
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
11 愛言葉III
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell

<初回限定盤 特典CD>
ボイスドラマ「妄想感傷代償連盟」
出演:浅沼晋太郎、雨宮天
脚本:内田裕基

■リリースイベント
5月22日(水)19:00開場/19:30開演
会場:タワーレコード池袋店6 Fイベントスペース
内容:トーク&サイン&握手会(DECO*27&八三)

5月26日(日)13:30開場/14:00開演
会場:アニメイト渋谷
内容:サイン&握手会(DECO*27&akka) ※トークなし

6月1日(土)11:30開場/12:00開演
会場:第3太閤ビル(名古屋)
内容:トーク&サイン&握手会(DECO*27&Yuma Saito)

6月1日(土)15:30開場/16:00開演
会場:animate O.N.SQUARE HALL(大阪)
内容:トーク&サイン&握手会(DECO*27&Yuma Saito)

6月2日(日)13:30開場/14:00開演
会場:タワーレコード福岡パルコ店
内容:トーク&サイン&握手会(DECO*27&DMYM)

DECO*27 Twitter
『アンドロイドガール』特設サイト

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