B'z、平成の音楽シーン駆け抜け勢いそのまま令和へ 楽曲とパフォーマンスから牽引力の秘密を探る

世界屈指のハイレベルなライブステージ

 B’zサウンドの要となる松本孝弘のギタープレイも、ファンを魅了する大きな要素の1つだ。Led Zeppelin、Aerosmith、Bon Jovi、Mötley Crüe、Guns N' Rosesなど、松本のプレイから感じられるルーツは枚挙にいとまが無いほどで、それこそが“平成のギターヒーロー”として多くのギターキッズを虜にしてきた所以だ。『ミュージックステーション』のテーマ曲「1090 〜Thousand Dreams -」を作曲したことはあまりに有名で、7月に横浜アリーナで開催されるスケートショー『氷艶hyoen2019-月光かりの如く-』のテーマソングも手がけている。また海外ミュージシャンとの交流も幅広く、2004年には、エリック・マーティン(Mr. Big)、ジャック・ブレイズ(Night Ranger)らと共にソロプロジェクト“TMG”で活動。ソロアルバム『TAKE YOUR PICK』(2011年)では、ジャズ/フュージョンの巨人の1人であるラリー・カールトンと共演し、同作は第53回グラミー賞で「最優秀インストゥルメンタル・ポップ・アルバム」を受賞した。世界のミュージシャンも、松本のプレイには一目置いている。

 松本のギターソロも堪能できるのがライブで、ド派手の一言に尽きる。ライブ名にはデビュー当時から「LIVE GYM」と名付けられている通り、ステージの2人も観客と共にとにかく動き回って汗だくになる。B’zのライブでエポックメイキングなのは、デビュー5周年の1993年に静岡県浜松市にある「渚園」で開催し、2日間で10万人を動員した初の野外ライブ『B'z LIVE-GYM Pleasure'93 "JAP THE RIPPER"』だろう。この会場でライブを行ったのは、当時は浜田省吾に続いてB’zが2組目で、以降もサザンオールスターズ、TUBE、ONE OK ROCKだけ。以降、アリーナ、スタジアム、ドームと着実にライブの規模を拡大していった。

 同時にステージ演出もスケールアップし続けた。火を噴く巨大ロボットが登場した『B'z LIVE-GYM. a BEAUTIFUL REEL.2002 GREEN』、『B'z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT-』では、吊り上げたレーシングカーを落として爆発させる演出で度肝を抜いた。『B'z LIVE-GYM 2017-2018 “LIVE DINOSAUR”』では、巨大なピンクの恐竜が登場。昨年のスタジアムツアー『B'z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI-』では、火の鳥の翼を象ったトラスが組まれ、2人をキャラクターにした巨大バルーンが登場した他、稲葉がピアノを弾きながら「ALONE」を歌って、最後には花火が打ち上がった。徹底したエンターテインメント性。まるでテーマパークのような仕掛けが、いたるところに施されている。

 破格のスケールなのは、圧倒的なボーカルと演奏によるライブステージがあればこそ。ステージを埋め尽くすように並べられたスピーカーから放たれる爆音、唸りをあげるチョーキング、壮大なフレーズ。ライブでは、松本のギタープレイをフィーチャーしたコーナーもあり、あの圧倒的なギタープレイを前にしては、どんな巨大セットも小さく感じる。ステージを縦横無尽に駆け回る稲葉浩志は、何十曲とエモーショナルに歌ってシャウトしても声を枯れさせないのが驚き。鉄の喉を持っているのでは? と思うほどだ。1曲目から最後まで完璧な歌を聴かせ、ライブ終盤には筋肉美でも観客を魅了する。そうした2人を支えるのは、名うてのプレイヤーたちだ。それも今年のツアーからは、サポートメンバーを一新すると発表されて大きな話題になった。例えばギターには、『DINOSAUR』からアレンジャーと参加しているYukihide“YT”Takiyama。松本のTMGを始め、Whitesnake、オジー・オズボーン、Slash’s Snakepit等のサポート経験もあるドラマーのブライアン・ティッシー。INABA / SALASのレコーディングに参加したルー・ポマンティの息子であるサム・ポマンティがキーボード。そして、五弦ベースを操るインド人の女性ベーシストのモヒニ・デイ。彼らと共に、どんなサウンドを展開してくれるのかも、今後のライブの見どころになるだろう。

 B’zは、5月29日のニューアルバム『NEW LOVE』のリリースに続けて、6月8日からツアー『B’z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE-』を開催。令和となって最初のツアーで、どんなステージで胸をいっぱいにさせてくれるのか楽しみだ。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

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