Helado Negro、アレックス・リリー……オルタナティブな音楽性を持った新世代SSW新譜5選

Weyes Blood『Titanic Rising』

 かつてはサイケデリックな音楽集団・Jackie-O Motherfuckerの一員として活動していたナタリー・メーリングのソロユニット、Weyes Blood。最近ではFather John Misty、アリエル・ピンク、Perfume Geniusなどの作品に参加して注目を集めてきた彼女の新作は、名門サブポップに移籍しての第一弾。本人は本作を「ボブ・シーガー meets エンヤ」とコメント。これまでのシンセ中心のサウンドから、生演奏を加えた重層的でスケールの大きなサウンドに変化。少女時代に聖歌隊で歌っていたという彼女の優美で神秘的な歌声を彩り豊かに支えている。そして、ノスタルジックでありながら、どこに着地するかわからない不思議なメロディにも磨きがかかった本作は、間違いなく現時点の彼女の最高傑作だ。

WEYES BLOOD — MOVIES (Official Video - in 4k)
ジェニー・ルイス『On the Line』

 オルタナカントリーバンド、Rilo Kileyのボーカルとしてキャリアをスタート。2006年からソロ活動をスタートさせたジェニー・ルイスの5年振りの新作は、リンゴ・スター、ベック、ライアン・アダムス、ドン・ウォズ、ジム・ケルトナーなど錚々たるアーティストがバックアップ。腕利きミュージシャンたちによるバンドサウンドを軸に据えて、細部まで磨きあげたプロダクションは、今回紹介した作品のなかでも群を抜くリッチさだ。そして、ルーツミュージックに根差したソングライティングも円熟味を増すなか、歌声には妖艶さも加わって、オルタナ世代のスティーヴィー・ニックスみたいな風格も感じさせたりもして。セクシーでありながらも媚びたところを感じさせないジャケットのデザイン同様、堂々たる仕上がりだ。ジャケットでは切れている顔は、きっと満面の笑顔に違いない。

Jenny Lewis | Red Bull & Hennessy (Official Music Video)

■村尾泰郎
ロック/映画ライター。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CULÉL』『OCEANS』などで音楽や映画について執筆中。『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『はじまりのうた』『アメリカン・ハッスル』など映画パンフレットにも寄稿。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。

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