King & Prince「君を待ってる」評 彼らが歌うに相応しいリアリティある応援ソングに

 このように、この曲の歌詞のベースにあるのは意外にも“孤独感”や“疎外感”といった感情だ。こうした心情は一般的に自作自演作家の作品に多い。作詞を担当したのは高橋優。テレビドラマ『オトナ高校』の主題歌「ルポルタージュ」などでも話題になったシンガーソングライターだ。つまり、この曲は表面的にはありふれた応援ソング〜春ソングとしての性質を持ちつつも、同時にシンガーソングライター的な側面を持った楽曲になっている。言い換えれば、社会との距離感や世界からの疎外感を持った主人公が、そうした自分の境遇を打破して新しい世界へと飛び出そうというメッセージに作り上げているのだ。負の感情を基点として、それを自分たちの力でプラスに働かせようという主張は、単純なエールよりもリアリティがある。

 デビュー曲「シンデレラガール」で大ヒットを記録し勢いに乗るKing & Prince。しかし一方で、メンバーがひとり活動休止してしまうという壁にもぶつかっている。今作は、そんな明と暗の両面を持った彼らが歌うに相応しい応援ソングである。彼らがこうした作品を重ねることで切り開く新しい時代に今後も注目していきたい。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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