Sexy Zone『PAGES』は様々な表情を感じ取れる作品に 楽曲ごとのコンセプトから紐解く

 Sexy Zoneの良いところは、馬飼野康二や船山基紀といった大御所の作家の音楽性を自らのアイドル性に組み込みながらも、若手アーティストによる提供楽曲も積極的に収録している点である。iriは、先日3rdアルバム『Shade』をリリースしたばかりの新進気鋭のアーティストだが、彼女自身はどちらかと言えば暗く内省的な楽曲を歌うタイプだ。そんな彼女がSexy Zoneに楽曲を提供するにあたって、自分自身の作家性を変に曲げずに、メロディの特徴や韻の踏み方などに彼女のスタイルを維持しながら、彼らにしっかりとフィットするような曲を作り上げた。しかも、人気アイドルである彼らだからこそ意味のある楽曲になっているため、演者と作家の双方のカラーが見事に融和し、単なる“楽曲提供”にとどまっていない。iriによって引き出された彼らの新たな一面は、“様々な感情を切り取った”というアルバムのコンセプトにも合致するし、要所で若手作家を起用するグループの姿勢にも通ずる。さらに言えば、次曲の「イノセントデイズ」で〈今日もコンビニの袋ぶら下げて〉というフレーズのもたらす等身大な世界観へのよい橋渡しとなっており、アルバムのストーリー性という部分においても強い根拠がある。アルバム前半の最も注目すべき聴きどころだ。

 後半に入っても、まだまだ多様な表情を見せていく。ライブパフォーマンスが期待できそうなパーティーチューン「Hands up!」、原一博作曲・船山基紀編曲によるミステリードラマ風の「カラクリだらけのテンダネス」、大人なムード漂う「Wonder Love」など多種多様な楽曲が並ぶ。中でも、ケツメイシのRYOJIが楽曲提供、Integral Cloverが共作と編曲を担当した「君がいた夏に…」は、北欧系のEDMを彷彿とさせるチルアウトだが、この先進的なサウンドをうまくセンチメンタルかつノスタルジックな世界観へと繋げていて面白い。アルバムのラストを締める「いつまでもいつまでも」は壮大なピアノバラードで、グループのデビューからこれまでの活動を振り返るような作品となっている。

 このように、今作は楽曲それぞれにコンセプトを持たせて1枚の作品としてまとめることで、彼らの様々な一面や表情を感じ取れるものに仕上がっている。2011年のデビューから徐々にスタイルが固まりつつあった彼らだが、今回のようなリリースを重ねることで、これからもまたさらに新しい一面を見せてくれるであろう。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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