ウォルピスカーターが語る、ボーカリストとしての美学「毎回音源が100パーセントだと思ってる」

ライブでの再現性よりも音源の芸術性

ーーちなみにウォルピスさんは、2ndアルバム『ウォルピス社の提供でお送りしました。』の初回限定盤にアニソンのカバーCDを付属してましたし、“歌ってみた”でも頻繁にアニソンのカバーをしていますね。

ウォルピスカーター:僕はアニメとアニソンが大好きで、カラオケに行っても必ず歌うぐらいなんですよ。ただ、生身の人間ありきの二次創作の場合はモノマネができてるほど良いと思っているので、そういう曲をカバーするときは絶対に本家の方のモノマネをするんです。だから2ndアルバムに収録したアニソンカバー(supercell「君の知らない物語」、高橋洋子「魂のルフラン」、涼宮ハルヒ「God knows...」)もとにかくモノマネしてます(笑)。

ーー好きなアニソンを3曲選ぶとしたら?

ウォルピスカーター:いやあー、3曲ですか……とにかく好きなのは『涼宮ハルヒの憂鬱』の劇中歌の「God knows...」。それと、これは同人のアルバムにも収録したんですけど、『蒼穹のファフナー』のオープニングテーマでangelaさんが歌ってる「Shangri-La」。僕はangelaさんのモノマネが十八番なので(笑)。あとは『灼眼のシャナ』1期のエンディングテーマで高橋洋子さんの「夜明け生まれ来る少女」ですね。『灼眼のシャナ』のテーマ曲と言えば、2期のオープニングテーマだった川田まみさんの「JOINT」が有名だと思うんですけど、僕は「夜明け生まれ来る少女」が一番好きなんです。

ーーどれも熱くなれるタイプの楽曲ですね。

ウォルピスカーター:今のアニソンはロックバンドの方が歌ってることも多くてお洒落になったイメージがあるんですけど、僕の中でのアニソンというのは2000年代から2010年ぐらいまでが黄金期なんです。その辺りのアニソンロックが日本のカルチャーを席巻したような、「THE アニソン」と言えるような曲が好きですね。

ーー今回の「1%」にせよ、『スペースバグ』のオープニングテーマだった「THE JOURNEY HOME」にせよ、ウォルピスさんが今まで担当されたアニメタイアップ曲は、その系統とは違うタイプの曲です。

ウォルピスカーター:そうなんです(笑)。なので、チャンスがあればぜひ熱いアニソンも歌ってみたいですね。

ーーここからはカップリング曲のお話も。まずソリッドなギターサウンドが印象的な「アノヒノアノウタ」は、ボカロPのいちたさんが楽曲提供されています。まだそれほど知名度のない方ですが、どんな方なんですか?

ウォルピスカーター:たしか投稿を初めてまだ1年ぐらいだったかな? 僕が以前にいちたさんの曲(「f.o.f」)を歌って投稿したことがあって、僕自身がいちたさんの曲のファンなんですけど、「こんなに良い曲を作るのになんで評価されないんだろう?」とずっと思ってたんです。なので、今回、曲を書いていただくことで、いちたさんのことをみんなに知ってもらいたいと思ったんです。やっぱりこの世界は助け合いが必要じゃないですか。僕も昔先輩の歌い手さんに曲を紹介してもらったことで、たくさんの人に曲を聴いてもらえるようになったので、今度は僕が次の世代に対してそうする番だと思いまして。まあ本当は僕がいちたさんの曲を歌いたいからなんですが、そういう下心は隠しつつ、本当はこんなにキレイなことを思ってるんだよ、ということを記事には載せてください(笑)。

ーーそのまま全部書いておきます(笑)。いちたさんにはどんな曲をお願いしたんですか?

ウォルピスカーター:今回いちたさんには制作期間の一番最後に曲を書いてもらったので、「1%」ともう1曲のカップリング曲「僕らのミッシングリンク」の方向性をお話した上で、それとは被らない楽曲を、というお願いをしました。いちたさんの曲はギターが特徴的なので、今回もジャキジャキしたギターサウンドの曲になればいいなあと思っていたら、まさにそういう曲を上げていただいたので「最高!」と思いましたね。

ーーこの曲の歌詞には〈100%の携帯〉というフレーズがあったり、どこか「1%」の歌詞と繋がりを感じさせる内容ですね。

ウォルピスカーター:そうなんですよ。「1%」の歌詞にはあらかじめ目を通してもらっていたので、繋がりを意識していただいたのかもしれません。僕は勝手に「1%」の後日談なのかな? と感じてまして。「1%」は二人が離れ離れになってしまうようなテイストだったので、この曲は離れてしまった二人のどちらか一方の視点で書かれてると考えると、サウンドにもどことなく哀愁というか、寂しい心の内が見えてくる気がしますね。

ーー歌入れの際はそういう部分も意識された?

ウォルピスカーター:それは全然なかったです(笑)。この曲はとにかくキーが高かったんですね。僕は歌入れのとき、基本的に頭から少しずつ録っていくんですけど、こういう高い曲の場合はまず一番高いところを録って、そこからその高いパートの声色に矛盾が起こらないように、前後を埋めていくように歌を録るんですよ。だからとにかくボーカルが一本に聴こえるように意識しながら声を継ぎ足していったので、表現力を挿む余地はありませんでした。今回のシングルはカップリングを含めて、高すぎて僕が生で全部歌えるか不安なんです。だからどうしようかなあと思っているところで(笑)。

ーーライブでの再現性よりも音源としての芸術性に重きを置いてるんですね。

ウォルピスカーター:そうなんです。世間的には生歌至上主義の方が多くて、「生で聴いてこそアーティストだ」とおっしゃられる方が多いですけど、僕はそうじゃないだろうと思っていまして。僕は毎回音源が100パーセントだと思って作ってますし、「音源で死力を尽くしてるんだからそっちでいいじゃない!」と思うんですよ。例えば高い声を出せる歌い手の方でも、ライブを意識してどんどん選曲のキーが下がっていくことがあるんです。でもそれは僕からしたら、どんどん丸くなっていくということなんですよ。投稿したらライブで歌わなくちゃいけないから、高い声を出したいけどがんじがらめになっていくというか。僕もライブをやっていますけど、本当は会場で100点満点の音源を流して、それに当て振りしたいぐらいの気持ちなんですよ(笑)。そのほうがみんな幸せだと思うんです。

ーーライブを意識して自ら制限を作ってしまうのではなく、音源ならではの可能性を追求するのがウォルピスカーターさんのアーティスト性だと。

ウォルピスカーター:カッコ良く言うとそうだと思います。

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