眩暈SIRENが表現する、暗闇に差す一筋の救済 楽曲を通した“感情の共有と共鳴”を見た

眩暈SIREN、楽曲を通した“感情の共有と共鳴” 

 エッジの効いたオオサワレイ(Gt)のギターと繊細さと儚さを感じさせるウル(Piano/Vo)のピアノが眩暈SIRENならではの世界観を構築し、その地盤を森田康介(Ba)&NARA(Dr)のリズム隊がしっかり固める。そして、京寺(Vo)はネガティブさの強いストレートな言葉をまるで吐き出すかのように歌い続けるのだが、ウルによるスクリームとの対比もあってか、そこにほんひと握りの希望が感じられる……そんな瞬間がこのライブ中、何度か感じられた。

 この感覚は何なのだろう……曲間に始まる京寺のセリフめいた独白やその流れで演奏される楽曲の数々からは、観る者の心に過去に経験した“痛み”を呼び戻す。しかし、今の自分はひとりではない。ステージには眩暈SIRENがいるし、周りには自分と同じような人間がたくさんいる。そこに覚える安堵感……この「感情の共有/共鳴」こそが眩暈SIRENというバンドに惹きつけられる理由なんじゃないか。京寺はMCで「もっともっと新しい曲を作って、聴いてもらって、またみんなに会えるように」とオーディエンスに告げたが、この言葉にも楽曲を通した「感情の共有/共鳴」に似たものを感じた。

 “闇”(それは文字通りの意味であると同時に、心が晴れないという意味も含む)から始まったライブも、終盤の「かぞえうた」あたりから光が射し始める。届けられる言葉の数々は決してポジティブとは言い難いものがあるが、そこと聴き手が共鳴することで見える“先”がある。少なくともこの日のライブを観たかぎりでは、そう前向きに捉えることができる。「故に枯れる」「思い出は笑わない」とクライマックスに進むにつれ、その思いはさらに強い確信へと変わる。バンドの演奏も激しさとエモーショナルさを増していき、最後はどこか希望や救いを感じさせる形でライブは幕を下ろした。

 眩暈SIRENは早くも次のツアー『夕立ち TOUR 2019』を4月からスタートさせる。全国8都市へと拡大したこのツアーの最終公演では、過去最大規模となるLIQUIEROOM ebisuでのワンマンライブも予定されている。ライブを重ねるごとに動員と会場の規模感を広げている彼らがなぜここまで支持されるのか、ぜひその答えを各会場で直接受け取ってほしい。きっと音源を聴いているときとはまた違う「感情の共有/共鳴」を得られるはずだから。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■セットリスト
眩暈SIREN『囚人のジレンマ TOUR 2019』
2019年2月10日(日)渋谷WWW X
<秋山黄色>
01. やさぐれカイドー
02. Drown in Twinkle
03. クラッカー・シャドー
04. Rainy day
05. 猿上がりシティーポップ

<眩暈SIREN>
SE. Voice
01. ジェンガ
02. その嘘に近い
03. HAKU
--SE--
04. 偽物の宴
05. ハルシオン
06. 空気よりも透明な
--SE--
07. 夕立ち
08. 囚人のジレンマ
--SE--
09. かぞえうた
10. 故に枯れる
11. 思い出は笑わない

眩暈SIRENオフィシャルサイト

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