日向坂46、2部構成で表現した“けやき坂46”への別れと新たな始まり デビューライブを振り返る

日向坂46、2部構成で表現した別れと始まり

日向坂46が披露した名曲揃いの新曲たち

 さて、こうした活動を経てきた彼女たちによって育まれたグループカラーは果たしてどういうものか。それを端的に示すのが、デビュー曲「キュン」を皮切りに続け様に披露された新曲群だろう。

 ”好きになりそう”とかけた「ときめき草」は芽生え始めた恋心を歌った春らしい一曲。ベッドの上で泣く姿を歌った「耳に落ちる涙」は爽やかさと切なさの同居した一曲。ファンの間でも人気の高い「沈黙した恋人よ」のストーリーを拡張したような「沈黙が愛なら」はどこか温かい雰囲気のある一曲。「Footsteps」は孤独であっても自分を信じて前へ進もうと歌うストレートな一曲。そして表題曲の「キュン」は恋の始まりを歌ったキャッチーなザ・アイドルソング。

 どれも爽やかかつ繊細な音選びに胸を打つメロディが乗った彼女たちらしい楽曲だ。素直で明るい表情や、純真無垢なイメージ、悔しさを隠さないピュアな性格、温かな雰囲気、思いやりなど、彼女たちの内面がそのまま音になったような名曲揃い。普通、こうしたデビューシングルの収録曲と言うと、曲調にバラエティを持たせすぎて”ハズレ”が一曲くらい混じっているものだが、これらの新曲はどれも彼女たちのアイドル性を見事に捉えている。それは、彼女たちが長い期間かけて培ってきた確固たるカラーがあるからこそだろう。

 ライブ本編を大胆に二部に分けた構成、グループの歴史を辿る演出、新グループの誕生を印象付ける新曲が立て続けに披露された後半部。今回の公演は、特殊なライブ構成でありながら、それがむしろ彼女たちの良さを引き出す最も適した演出となっていた。いよいよシングルデビューを控えた日向坂46。今回のライブで得た勢いに乗り、彼女たちは先輩グループのように坂を駆け上っていくだろう。

(撮影=上山陽介)

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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