CYNHNが生み出した燃えあがるような“青” 初ワンマンで見せたヴォーカルグループとしての真骨頂

CYNHNが生み出した燃えあがるような“青”

「どんなに深く憧れ、どんなに強く求めても、青を手にすることはできない。すくえば海は淡く濁った塩水に変り、近づけば空はどこまでも透き通る。人魂もまた青く燃え上るのではなかったか。青は遠い色。」

 CYNHNが、谷川俊太郎の『青は遠い色』を朗読する場面もあった。雨音とエレクトロニカな音が流れるなかで、傘をさしながら読み上げていた。

 これは、演出家の松多壱岱とのコラボレーションによるもの。これまでも「演じまスウィーニー」と題したコンセプトで、演劇的な要素を取りいれたMVを制作してきたCYNHNが、ライブにおいても演劇的な要素を盛りこんだシーンだった。

 3月20日にリリースされる「空気とインク」と「wire」は続けて披露。前者はアメリカンロック、後者はポストロック的なアプローチである。「wire」では百瀬怜のストレートな歌唱がいかされており、シンガロングも起きる楽曲だ。

 個人的に涙腺が緩みそうになったのは「タキサイキア」だった。綾瀬志希は〈モンダイナイ〉と歌うパートでファンとコール&レスポンスをしたが、〈モンダイナイ〉と歌う彼女は葛藤を抱えながら歌に人生を賭けている人物でもある。『Link to Blue』の翌日には、こんなツイートをしていた。

「音楽は人を狂わすし歌は私を壊す。でもその安全地帯にいない危険性が音楽に必要だし有毒であればあるほどハマってしまう。君もいまその瞬間を共有しているんだよ。」(引用:綾瀬志希(CYNHN)オフィシャルTwitter

 本編のラストを飾ったのは、2018年の2ndシングル表題曲「はりぼて」だった。サビ前で、崎乃奏音が音程を外すことも恐れない勢いで歌う瞬間のカタルシスはいつも強烈だ。

 CYNHNが変わったと私が感じたのは、「はりぼて」が生まれ落ちたときだった。CYNHNのメインソングライターとして多数の楽曲を書いている渡辺翔は、「はりぼて」においてCYNHNのメンバーの内面を描きだしている。人目を気にして笑ってごまかしてきた過去を描きながら、サビの最後にはこんなフレーズが登場する。

〈はりぼてのハートでもいつの日か誰かのなにかになりたい〉

 CYNHNが「はりぼて」を歌った瞬間、たしかに見えたのだ。青い光で発火する瞬間が。楽曲と歌い手の内実が呼応したときにだけ生まれる、小さな火花が見えたのだ。

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