UVERworld『約束のネバーランド』OP曲はなぜ心を奮わせる? アニメと相乗効果生む楽曲の特性

UVERworld、なぜアニメ作品と相性が良い?

 例えば『青の祓魔師』の第1期オープニングテーマだった「CORE PRIDE」(2011年)。この曲は先の『ALL TIME BEST』リリースに伴う投票企画で9位に選ばれるなど、ファンの間でも人気の高いことで知られるが、ここで歌われる〈自分に負けない「プライド」〉とは、悪魔(サタン)の子どもという逃れられない運命を背負いながらも、悪魔を倒す祓魔師(エクソシスト)になることを目指す『青エク』の主人公・奥村燐の心境とも重なるものだ。そして「悪魔の子どもが祓魔師になれるわけがない」という周囲の意見を吹き飛ばし、自らの可能性を切り拓いていく燐の姿は、多くの人から「成功するわけがない」と言われながらも、滋賀から上京して現在の地位を勝ち取ったUVERworldのメンバーたちの姿と重なるものでもある。余談だが、メジャーデビューのタイミングでサポートに回った誠果(Sax)が2014年に再び正式メンバーに迎え入れられた経緯など(詳細は彼らの楽曲「誰が言った」の歌詞などをチェックしてほしい)、バンドの境遇自体が少年マンガのストーリーのようなところも、彼らの楽曲がアニメ作品との相性がいい一因なのかもしれない。

 それだけにUVERworldは少年マンガ系のアニメ、特にジャンプ作品を原作とするアニメのテーマソングを手がけることが多く、先に挙げた作品以外にも『D.Gray-man』の第1期オープニングテーマ「激動」(2008年)、劇場版『青の祓魔師』の主題歌「REVERSI」(2012年)、『青の祓魔師 京都不浄王篇』のオープニングテーマ「一滴の影響」(2017年)、『僕のヒーローアカデミア』第3期のオープニングテーマ「ODD FUTURE」(2018年)を担当。いずれの曲でも作品の世界観やテーマ性と寄り添いつつ、自分たちらしい楽曲としてアウトプットしてきた。特にトロピカルハウス周辺の海外のポップミュージックのトレンドを野心的に採り入れた昨年の「ODD FUTURE」では、アニメ用の90秒バージョンとフルバージョンではアレンジを完全に作り変え、アニメ版ではイントロにシンセの印象的なフレーズを追加したり、リズムはロック的なアプローチになってたりと、作品や尺に合わせた細かいこだわりも見せていた。

TVアニメ「約束のネバーランド」ノンクレジットオープニング

 そして今回の新曲「Touch off」では、冒頭にどこか不穏な雰囲気の電子音とヒップホップ風のビートを置いて『約束のネバーランド』の閉塞的な世界観を示しつつ、そこに「CORE PRIDE」でも象徴的に使われていたサックスの鮮烈なブロウを切り込ませることで、外の世界に逃れようとする主人公たちの決して諦めることのない意志やヒロイックな強さを表現。歌詞の〈拝む神なんて居ないや 星もないや〉というフレーズには絶望的な状況が浮かぶが、続けて〈でも願う事は辞めなかった〉と力強く歌い、〈わずか数センチだって 願った場所に向かって 進んで行く〉ことで未来をつかみ取ろうとする泥臭いまでのあがきは、一縷の望みを少しずつかき集めて“孤児院”からの脱出を図る物語の主人公たちの状況そのものでもあるし、TAKUYA∞がこれまでに伝えてきたメッセージとも合致する。

 また、アニメ用のショートバージョンの尺で聴くとヘビーなデジタルロックという趣きの強いこの楽曲だが、2番以降ではさらなるアレンジの展開が用意されていて、先の「ODD FUTURE」やトラップのビート感を独自に消化した「GOOD and EVIL」「EDENへ」といった近作と同じく、進化の手を止めない彼らの新しい姿を提示したものになっている。特にブロステップ風のドロップからコール&レスポンスの応酬を繰り返すパートは、EDM以降のポップスの様式を踏まえながらもバンドの持つ熱量を活かした激しいものになっており、間違いなくライブで強力な武器として機能するはずだ。

 曲の最後でTAKUYA∞が歌でもラップでもなく叩きつける〈本当の自由など無い ならばこれはそれを否定する為の旅〉という言葉は、これからさらに創造の翼を自由に羽ばたかせようとしているバンド自身の活動宣言にして、未知の自由に向けて勇気ある一歩を踏み出す『約束のネバーランド』の主人公・エマたち、そして自由の意味を忘れてしまったすべてのリスナーたちに贈るエールなのかもしれない。このように作品との相乗効果で心を奮い立たせてくれるのが、UVERworldというバンドなのだ。

(文=流星さとる)

■リリース情報
UVERworld『Touch off』
発売中
・初回生産限定盤 SRCL-11057~8(CD2枚組)
¥1,667(+税)
・通常盤 SRCL-11059
¥1,204(+税)
<収録曲]>
1.Touch off
2.ConneQt
3.Touch off (instrumental)

<初回特典>
2018年12月21日に日本武道館(女祭り)と横浜アリーナ(男祭り)にて1日2公演同日開催された最新ライブからライブ音源4曲を収録
1.SHAM ROCK (ARENA TOUR 2018.12.21 at Nippon Budokan -QUEEN’S PARTY-)
2.EDENへ(ARENA TOUR 2018.12.21 at Nippon Budokan -QUEEN’S PARTY-)
3.Q.E.D. (ARENA TOUR 2018.12.21 at Yokohama Arena -KING'S PARADE-)
4.GOOD and EVIL (ARENA TOUR 2018.12.21 at Yokohama Arena -KING'S PARADE-)

・期間生産限定アニメ盤
¥1,296-(+税)
<収録曲>(期間生産限定アニメ盤のみ)
1.Touch off
2.ConneQt
3.Touch off (short ver.)
4.Touch off (instrumental)

■主要配信サイト
iTunes
レコチョク
mora
Apple Music
LINE MUSIC
Spotify

■ライブ情報
『UVERworld LIVE HOUSE TOUR 2019』
2019年2月27日(水)ZEPP NAGOYA
2019年3月04日(月)3月5日(火)ZEPP TOKYO
2019年3月08日(金)ZEPP SAPPORO ※彰生誕祭

■WOWOWオンエア情報
<ラインナップ>
UVERworld ARENA TOUR 2018.12.21 TAKUYA∞生誕祭 ~女祭り at 日本武道館~(2019年3月放送予定)
UVERworld ARENA TOUR 2018.12.21 TAKUYA∞生誕祭 ~男祭り at 横浜アリーナ~(2019年4月放送予定)
<関連番組>
UVERworld TYCOON TOUR 2017 TAKUYA∞生誕祭 2019年1月10日(木)午後0:30
UVERworld ARENA TOUR 2016 TAKUYA∞生誕祭 2019年2月8日(金)
WOWOW特設サイト

UVERworldホームページ

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