MYTH & ROIDが語る、「shadowgraph」に取り入れた理論 「7年周期で音楽が変わる」

ミスドが語る“7年周期”の音楽理論

世の中が求めていた部分に今回の僕たちがハマった

――一方で、カップリング曲として収録されている劇場版『幼女戦記』の主題歌「Remembrance」はどんな風に制作していったんですか?

Tom-H@ck:この曲は制作サイドから「こういう曲を作ってほしい」という明確なオーダーがあった形でした。普段はKIHOWの声を何本か重ねたりもしますけど、この曲は声も一本だけにしていて、生々しい歌が聴こえるものになっていますね。

KIHOW:「shadowgraph」と同じような雰囲気もありつつも、でも、また違うような雰囲気の曲ですよね。私が歌っているときに思い浮かべている「人」がまた違う、という感覚です。これまでの楽曲もすべてそうですけど、私の場合、その曲ごとに自分の裏をかいていこうという気持ちがあって。今回のカップリングも、かなり楽しいレコーディングになりました。人が戦って、亡くなって――という『幼女戦記』の光景を思い浮かべながら、むしろ戦争だけでなくて、より普遍的な「追悼」や「記憶」という、タイトルにもなっている要素をメインに捉えて歌っていきました。

――KIHOWさんが加入する前にMayuさんがボーカルを担当していたTV版『幼女戦記』のテーマ曲「JINGO JUNGLE」とも、随分違った曲調になっていますよね。

Tom-H@ck:そうですね。今回のシングルは2曲ともMYTH & ROIDの中では静かな作風の曲になっているのが珍しいポイントで。いわゆるガンガン攻める曲や、ミディアムテンポの曲でなくても勝負できるというのは、これまでの流れがあったからこそ「それが出来るようになった」ということなんだと思います。それが出来るアーティストって「いいな」と思うんですよ。ただ、この変化は自然に出てきたことで、タイアップ作品がそういうものを求めていた。つまりある意味、世の中がそういうものを求めていた部分があって、そこにちょうど今回の僕たちがハマった、ということなのかもしれないですね。

――なるほど。「これまでの流れがあったからこそできるようになった」という感覚について、詳しく教えてもらうことはできますか?

KIHOW:これは私には話せないです(笑)。(Tom-H@ckさんに)どうぞ。

Tom-H@ck:それこそ、「自動的」(=「ぼくは自動的なんだよ。名を不気味な泡(ブギーポップ)という」/『ブギーポップは笑わない』の台詞)ですよ(笑)。僕の場合、若い頃ってやっぱり視野が狭くて、ひとつのこだわりがあったらそこにガッと行ってしまうところがあって。でも、年齢を重ねていくと、そういう風には生きなくなるじゃないですか? アーティスト活動もまさにそうで……。そういう意味で「自動的」だと思うんですよ。歩んできた結果、狙っていない扉が開いた、というか。僕の場合、それをアーティスト活動や音楽に教えてもらっているような気がしていて。そういう意味での「自動的」なんです。昔はこういうものは作れなかったし、色んなものが積み重なって、色んな扉が開いていったからこそ、自然に大きな扉が開いてきた、という種類のものなのかな、と思いますね。


――実は今回、収録曲を聴かせてもらって、今回はその部分について聞かせてもらいたいな、と思っていたんです。いわゆる激しい曲を入れなくてもシングルとして成立するというのは、グループとしての可能性がどんどん広がっているということでもあるのかな、と。

Tom-H@ck:そうですね。(KIHOWさんに)……僕ら、何をしたいんだろうね?

KIHOW:どこに進んでいくんでしょうね(笑)。

Tom-H@ck:もちろん、言いたいことや表現したいことはたくさんありますけど、その半分ぐらいは「未知であってほしい」とも思うんですよ。狙いは半分、でももう半分は流れる船のように流されていくようなものでいいかな、と。ただ、反骨精神のようなものは変わらず持っていて、中でも僕の中で一番大きいのは「こうと決めたら絶対にこう」という日本人らしい気質に対しての反骨精神なんです。それを音楽に置き換えると、たとえば違うジャンル間での偏見がものすごくある、ということもそうで。

KIHOW:それはすごくありますよね。

Tom-H@ck:僕の場合、仕事上J-POPのアーティストにも楽曲提供しているし、アイドルにもMYTH & ROIDのような音楽にも、映画にもかかわってきて。そうやって色々な仕事をしてきたこともあったからこそ思うのは、実は「その違いなんてほとんどない」ということなんです。だからこそ、「何で毛嫌いしてしまうんだろう」「何でそこまで自分を守る必要があるんだよ」って思う。

――自分の好きなものをアイデンティティに組み込んでしまった結果、それ以外のものを冷静に楽しめない状況になるという人は、実際結構いますよね。

Tom-H@ck:だからこそ、MYTH & ROIDの場合、TVアニメのタイアップが多いために、人から見ると「アニソン」という枠に入るんだろうと思いますけど、そういう僕らがJ-POPや洋楽を好きな人たちにもちゃんと聴いていただいて、よりボーダーレスな環境を構築していける存在になっていきたいし、その状況を変えていけるようにしたい。しかも、決して大ナタを振るうのではなくて、徐々に徐々にその考えが浸透していって、気づけばみんながそう感じるようになれば、それが一番いいんじゃないかな、と。もちろん、これは僕たちだけでできることではなくて、色々な人たちの力で初めて実現することだと思いますけど、僕たちはちょうどそんな風に聴いてもらえつつある実感があって。アニソンが好きな人にも、そうじゃない人にも「いい音楽だね」と聴いてもらえる存在になれればいいですよね。

KIHOW:私もそう思います。

――ここ何年かで、ようやくその垣根がなくなりつつあるのも感じるところですし。そうなってくると、MYTH & ROIDの次のアルバムもますます楽しみになります。

Tom-H@ck:はい。これまでにも言ってきたように、構想はすでに1年ほど前から練っていて、どんな作品にするかという方向性も決まっています。だから……そろそろなんじゃないですか(笑)。ひとつ言えるのは、より規模を大きくしたい、ということですね。国内に向けても、海外に向けてもみんなが楽しいと思ってもらえるような、ワールドワイドで発信できるようなエンターテインメントとして次のアルバムを作りたい、と思っていますね。

(取材・文=杉山仁/写真=はぎひさこ)

■商品情報
8th Single 『shadowgraph』
発売日:
2019年2月27日(水)
価格:
¥1,200+税
収録曲:
1.shadowgraph(TVアニメ「ブギーポップは笑わない」オープニングテーマ)
2.Remembrance(「劇場版 幼女戦記」主題歌)
3.shadowgraph(instrumental)
4.Remembrance(instrumental)

MYTH & ROID公式サイト
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