ジャスティン・ビーバー、デビュー10年の軌跡に見るアーティストとしての“成長”

 その後も彼はコラボレーションを通じて次々に曲を送り出し、話題を提供し続けて、2017年も音楽界を席巻。そう、すでにスペイン語圏でヒットを博していた、ルイス・フォンシとダディー・ヤンキー、ふたりのプエルトリコ出身のスターによる曲「デスパシート」のリミックスに参加し、全米チャートで16週間1位をキープするという快挙を成し遂げ、ラテンポップの世界的ブームに貢献したのである。

 そんなコラボ曲も幾つか収めた『ザ・ベスト』は、ジャスティンがサビを歌う、DJキャレドの昨年のヒットシングル「ノー・ブレイナー」で幕を閉じる。試練を乗り越えてトップに返り咲き、単なるお騒がせセレブでもアイドルでもなく、進化の渦中にある才能豊かなシンガーソングライターとして認知されるに至った彼だが、では次のアルバムでは何を企んでいるのか? ヘイリー・ボールドウィンとの結婚があったからといって、屈託ないラブソング集を想像するのは安易過ぎるのかもしれない。なぜってつい先頃、ジャスティンがうつ病の治療を受けていると報じられたばかり。メンタルヘルスについて語って、また心の内をさらけ出すのかもしれないし、今の社会情勢を論じる可能性だってある。とにかく『パーパス』で自らクリエイティブなハードルを上げたからには、今度はいい意味でのプレッシャーを感じているに違いない。

■新谷洋子
女性ファッション雑誌の編集者を経て、フリーランスの音楽ライターに。メインストリーム・ポップからインディー・ロックまで、主に海外アーティストの取材、ライナーノーツの執筆、歌詞対訳を手掛けているほか、訳書に『モリッシー インタヴューズ』がある。ジャスティン・ビーバーには過去に2度インタヴューしている。

■作品情報
『ザ・ベスト』
発売中
価格:2,200円+税
品番:UICD-9087
アルバムの試聴はこちら
ジャスティン・ビーバー オフィシャルサイト

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