オメでたい頭でなにより「ザ・レジスタンス」はどう生まれた? 赤飯×324×堀江晶太が語り合う

オメでた赤飯&324×堀江晶太インタビュー

「動画サイト出身ってだけで色眼鏡で見られることが多い」

ーーあとは、どんなメッセージが入ってるんですか。

赤飯:僕ら、動画サイト出身ってだけで色眼鏡で見られることがすごく多いんです。〈肌の色や言語 生まれた場所 あげつらい自分の建前を守る〉のところで「ウィー・アー・ザ・ワールド」的なデカい風呂敷の広げ方をしてるんですけど、でも実はそれは〈生まれた場所〉の本当の意味を隠すためでもあって。逆に〈生まれた場所〉が一番言いたかったことでもあるんですよ。だからそこだけ、メンバー全員でコーラスしてます。

324:「そこのコーラス、赤飯だけでよくない?」って言ったら、「いや、みんなも録って」って言われて。あとから聞いたら、そういう理由があるんだって聞きました。

赤飯:どう? 僕からの質問なんだけど、やっぱ色眼鏡的な部分って感じたりする?

堀江:あるある。色眼鏡っていうか、イロモノとは思われることあるよ。

赤飯:実際、動画サイト出身ってだけで曲を聴いてもらえないとか、下に見ていいヤツらだってイメージを持つ人がいるんです。もちろん、フラットにひとつの音楽として聴いてくれる人もいるけど、中にはそういう人がいる。それが心の底から悔しいんですよね。

324:リスナーの人は、最近はネットから生まれた音楽を聴いて育ってる人も多くなってきてるからあまり気にしてないけど、僕たちが邦ロックシーンでやっていく中ではそういう目線が多いかなって、僕はそう感じてる。

堀江:でも僕は、動画サイト出身だからどうこうと言われることに悪い気はしないんですよ。そこの人なんだって舐めてくる人もいるけど、話が弾む人もいるし。

赤飯:なるほどね。僕はわりとそこのネガティブな側面をモロに食らってた人なので。

ーーどんなことがあったんですか。

赤飯:どんだけ熱い気持ちを持ってライブをしていようが何をしようが、「どうせしょうもない素人に毛の生えたようなヤツらでしょ? 聞く気しねぇ(笑)」とかボロクソ言われて下に見られるんです。人生かけてやってる心構えなだけに、さすがに悔しかった……。まぁ直接言い返したりとかはせずに、あくまで表現で昇華するためのガソリンにしてるんで結果オーライなんですけどね。ごちそうさまです。

324:やっぱり、赤飯はメインで自分が矢面に立たなきゃいけない立場だから、それを一番感じるんだよね。

ーー動画サイト出身って部分では、米津玄師さんの活躍もあったり状況はちょっとずつ変わってきてますよね。

赤飯:もちろんもちろん。でもまだゼロじゃないですね。以前、米津さんも色眼鏡で見られることがあるって発言されてたので、やっぱそうなんだなって。ぶっちゃけ僕らの話で言えば、前はインタビューでそこをフィーチャーされると、赤飯がやってるバンドってだけで記事を読んでもらえなくなるので、あえて出自にふれないようにしてもらう時期もありました。あくまでバンド最優先でお願いしますって。でも、最近になって、オメでたの知名度が上がってきて、「これ赤飯がやってたの?」って逆転現象がやっと起きてきてほくそ笑んでます(笑)。

ーーバンドの力で、状況を逆転できたっていうのはいい話ですね。

赤飯:しめしめ……って思ってます!

堀江:PENGUIN RESEARCHはイロモノ上等ってところがあるんだよね。ボーカルは声優をやってるし、僕もボカロPだし、バンドよりも作曲家の経歴の方が長いし。でも、実力で上がればいいんでしょって感覚でずっとやってきたので。オメでたも、思ってることは一緒だよね。

324:そうそう。うちらは、自分が世に求められる天才じゃないのはわかってたから、メインストリームとの真っ向勝負は避けて、自分なりのレールを敷いていかないといけないと思ったんだよね。

堀江:そこそこ。オメでたと僕らと、いいなって勝手に思ってる共通点があるんですよ。今一番盛り上がってるおしゃれな世界観というか、心情世界を投影した水彩画みたいな音楽感を真っ向から捨てに行ったバンドじゃん。そっち側に行かなかった、行けなかった側の人たちなんですよ。そういう人間が吹っ切れて、これがかっこいいでしょってやってるとこが好きなんだよね。

赤飯:それは確かにあるね。

堀江:うちもそうなんです。うちのボーカルも今はそういうの似合わないんで。淡い感じじゃなく、もっとわかりやすい生身の泥くさい方が似合うし、言ってしまうとダサい方が似合う。うちのバンドは、ボーカルに一番ふさわしい音楽をやろうってバンドなので、ダサかっこいいのは何かを追求してて。意外とそういうバンドって、僕らの周りにはいなくて。

324:わかる。(ペンギンのボーカルの生田)鷹司くんも赤飯もそうだけど、等身大が一番かっこいい。伝えたいメッセージが100%本人の言葉で、それをそのまま言ってるからこそのかっこよさがあるから。アウトプットしたものがダサかったり、流行ってるものとずれてても、やっぱり信じてるものは結局そこだからウソはつきたくないし。

赤飯:そうそう。ウソはつきたくない、それに尽きる。

堀江:それをしっかりやってるから、オメでたは貴重な仲間だなと思いますね。

ーーあと、これも根本的な話ですが、インターネット上で個人で音楽活動を始めて、のちにバンドを組んで人前で演奏する方向性を選んだ理由についてもお聞きしたいんですが。

赤飯:そもそも僕は、高校のときからずっとバンドをやりたかった人間なんです。ただ、バンドという活動にうまく自分を結び付けられずに、たまたま花開いたフィールドがそこだったということなんです。

ーーインターネットの世界はひとりで作ったものをアウトプットするには、すごく有効な場所ですよね。

324:そうです。最初、面白そうだからやってみようからスタートしたものが、あれよあれよと大きな流れができて、それに巻き込まれたっていうのはあるよね。

赤飯:そうそう。だから、やりたいことと求められるもの、そこで巻き起こってることの理想と現実のギャップみたいなものも途中からはありましたし、そこからだんだんモチベーションが下がっていったし(笑)。そのタイミングで、メンバーと出会って今のバンド活動の流れができたって感じですね。

ーーやっぱりバンドをやりたかったと。

赤飯:はい、バンドがやりたかったんです。僕の立場から言うと、動画で活動してたときは、与えられたものに自分のアイデアを加えて形にするものなので、自分の言葉で歌うこと、自分が本当に表現したいものをアウトプットすることができなかったんです。もちろん相性のいいものもたくさんありましたが、あくまで受け身じゃなくて、能動的に自分で何かを生み出したかった。そういうところにやりたいこととのギャップを感じてたんですよ。僕は、自分が人前で動いてなんぼってところに喜びを感じちゃうので、昔からそういう場所を好んで求めに行ってました。当時からイベントで生バンドでやれるのが一番楽しいと思いながら活動してましたし、そこは変わらないですね。僕は、一生ステージに立ち続けたいって気持ちが強いです。

324:あと、赤飯のことで言うと、昔から音楽へのこだわりが強かった。今でも覚えてるけど、昔、赤飯と名古屋であったイベントで、初めて僕がギターを弾くことになったんです。そのときに赤飯から、ここのセクションの音をもうちょっとこうしてほしいって注文を受けたんです。当時、まだ僕は実力も足りてなくてテンパって(笑)。「できる?」「そんな難しいこと言ってるつもりはないんだけどね」って言われて、すごい怖い人ってイメージだったんですよ(笑)。

赤飯:ウソや、煽ってるつもりないで(笑)。

324:っていうのも、他の人のバックで弾くときって普通に生の演奏があればいいって感じだったんです。でも赤飯は違って、真摯に音楽に向き合ってるんだなって。この人は求める水準が高いんだなって思ってました。

赤飯:そんな印象だったんや(笑)。そうやって指示してた人間がね、今はメンバーに指示出される側ですわ(笑)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる