日向坂46、“ひらがなけやき”としての最後のメッセージに? 欅坂46『黒い羊』収録曲が示すもの

 この曲が解禁された日は、まだ改名については発表されていなかったため、7thシングルの「アンビバレント」(漢字欅)と「ハッピーオーラ」(ひらがなけやき)のように、陰と陽の関係を色濃くだした曲だと思われた。しかし、漢字欅からの完全なる独立が決まったことで、「黒い羊」と「抱きしめてやる」は卒業式の送辞と答辞のような関係性を築き、同時に漢字欅へのエールかつ置き土産的な言葉のようにも聴こえてくるから面白い。

 けやき坂46から日向坂46となった彼女たちは、青空という個性にピッタリなチームカラーが与えられた。潮紗理菜はブログに、「道に迷ってしまったり落ち込んでいる方がいたら優しく上から光を照らせるようなそんなグループになりたいです」と綴り、〈一本の欅から/色づいていくように〉〈季節を着替えて/昨日とは違う表情の/青空が生まれる〉〈思い出がいくつも重なって/木漏れ日が生まれる〉という、まさに彼女たちの未来を予言していたかのような「ひらがなけやき」の歌詞を添えて、日向坂への思いを伝えていたが、「抱きしめてやる」は、まさに潮の思いを擬人化したような曲だと感じる。日向坂から先陣を切った渡邉の写真集のタイトルが『陽だまり』なのもまた、グループ名を匂わせていたのかも知れない。

 さて、日向坂となり完全独立したことで、曖昧だった立ち位置が、これからは自分たちでゼロから築いていくことになる。今までは、漢字欅と対になっていたことで“ハッピーオーラ”という個性が武器になっていた。しかし、以前から加藤や佐々木美玲らはそれに危機感を持ち、新しい個性を探していると、雑誌のインタビューなどで答えていたが、基本的にアイドルはハッピーオーラ全開というイメージがあるため、一つの独立したグループとなった今、これからどう個性を輝かせて行くかが勝負になってくる。

 加藤は記者会見で「尊敬している乃木坂46さんの“美しさ”や“清楚さ”と欅坂46の“パフォーマンス力”や“かっこよさ”を兼ね備えたハイブリッドなグループになるのが夢」(引用:けやき坂46、“日向坂46”への改名にメンバー感涙 齊藤京子「3年間やってきて一番嬉しい」)と明かしていたが、『ひらがな推し』(テレビ東京)で見せる彼女たちのバラエティでの適応能力の高さからは、すでにもうその個性ができあがっているようにも感じる。

 余談だが、今年1月に放送された『ひらがな推し』で、タロット占い師の濱口善幸が、「3月に夢が叶う」と発言しており、今回のシングルデビューに関して的中させていたことが話題になっている。彼は「5月、6月に波乱の可能性が」という言葉も口にしていたが、果たして何か起こるのだろうか。その前にまずは、8thシングル『黒い羊』で、ひらがなけやきとして彼女たちが最後に残したメッセージを味わいたい。

(文=本 手)

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