気鋭のヒップホップクルー CIRRRCLEに聞く、国やバックグラウンドを超えた音楽を作ること

CIRRRCLEに聞く文化を超えた活動

「日本は自分らしくあることが結構難しい国」

ーーSpotifyでも2018年の夏頃から「Fire Emoji」や「New Music Friday」といったグローバルなプレイリストにCIRRRCLEの楽曲がフィーチャーされ始めましたが、それ以降、周りに変化はありましたか?

Amiide:友達がちゃんと聴いてくれるようになりましたね。で、その友達からさらに広がっていって、芋づる式にCIRRRCLEの楽曲がバーッと広がっていった感じはすごくありました。

ーーちなみに、インカム的な変化は?

Amiide:プラマイゼロくらいですかね。

A.G.O:結構、投資してるんですよ。曲を作るのはそんなにお金が掛かってないんですけど、機材を揃えたりビデオを作ったりするのにお金が掛かってますね。今は、全部僕らのポケットから出してる資金なんで。

Jyodan:まさにランチマネー(昼食代)を貯めて、自分たちに出資してるよね。ご飯を食べるのを我慢して、翌週のMV撮影費に充てる、みたいな。

ーー主にストリーミングサービスを通して、世界的に楽曲が聴かれているというイメージですが、地域ごとのマーケットは意識していますか?

A.G.O:難しいところなんですけど、曲によって聴かれている国が全然違うんですよ。「Talk Too Much」は、ブラジルでめっちゃ聞かれてるんです。「Fast Car」はアメリカ、しかもLAあたり。あとは、アジアでもインドネシアや台湾を中心に聴かれていて。全然知らないインドネシアのインスタグラマーから連絡が来たりして。

Amiide:今は、アメリカとアジアがメインですね。次はヨーロッパを狙いたい。

ーー今は、A.G.OさんとAmiideさんが東京にいて、Jyodanさんの拠点はLAということですが、普段はどうやって楽曲を制作しているんですか? 物理的な距離に制作を阻まれることはない?

A.G.O:楽曲を作る面では、あまり心配はないですね。「Fast Car」は2人が向こう(LA)にいて、骨組みをもう作ってたんですよ。それが送られてきて、「あー、なるほどね。じゃあ、お前らこういう感じが好きだろ?」ってアレンジを加えて送り返して。

Amiide:私は今、ビートを作る勉強もしてるんですけど、「こういうのを作りたいなー」って楽曲のべースを自分で作って、「はい、コーラス考えて〜」ってJyodanに送って、その後にA.G.Oに「お願い!」って送るんです。

A.G.O:で、僕が「ここは違うな」っていう箇所を直して、ちゃんとプロダクトにして戻すっていう。

Amiide:クリエイティブの面では、そんなに言い合うこともないよね。「そこは、こうしたらいいなじゃん?」くらいで。あと、Spotify上で毎週更新しているCIRRRCLEのプレイリストがあるから、それを通して自分たちが何を好きか、常にチェックしている感じです。

プレイリスト「OMAKASE SATURDAY by CIRRRCLE」

ーー私は「Foreign Things」のAmiideさんの歌詞が妙にリアリティがあって好きなんですが、リリックは実話ですか?

Amiide:大体、曲のコーラス部分が先に決まるんですけど、コーラスは大体Jyodanが作っていて。歌詞は大体実話です(笑)。

Jyodan:歌詞の内容は自分のドキュメンタリーって感じです。僕の元カノは散財するのが好きで、それが「Foreign Things」のアイデアになりました(笑)。

Amiide:彼のアイデアに自分の妄想を足して、さらに実際に経験したことをミックスして書いてるって感じです。

ーーCIRRRCLEとしての直近の明確な目標は?

A.G.O:『FAST CAR』のEPができた時に「やっと俺らがやりたい音楽ができた!」って感じだったんです。今はEPしかないので、フルでしっかり「CIRRRCLEはこうです!」とバチッと出せるものが作りたいな、と。短期的なゴールはそれですね。

Amiide:あとは、ワールドツアーをしてみたいです。

Jyodan:今、結成2年目で、これまではラッキーなことにイージーな気持ちでお互いを思いやりながら活動してこれた。でも、これからどんどん状況が複雑になっていくと思うんです。だからこそ、僕はいい曲を書いてラップする、Amiideはシンガー、A.G.Oはプロデューサー、という役割にもっと集中したい。あと、これから音楽業界で成功するためには、自分たちの身は自分で守らないといけない。でも、俺たちはその方法をまだ知らないんだよな。

Mari:そう、そこを学んでいかなきゃ。CIRRRCLEは今、頑張らなきゃいけないグループなんです。なので、スケジュール管理とか経理の面や方向性のベースの骨組み私が引き受けて、メンバーたちには音楽活動に集中して欲しいですね。

ーーこうしてそれぞれの話を聞いているだけでも、3人ともキャラが違うというか、全くことなる役割なんだなと感じます。3人のドキュメンタリームービーとかがあれば面白そう。

Amiide:各々のバックグラウンドが違いすぎて、それぞれのカルチャーがぶつかり合いまくるんですよ。2週に1回くらい、「イヤ!」みたいな意見のぶつかり合いがありますね。本当に文化の違いを感じる。

A.G.O:音楽性の違いでは喧嘩しないんですけど、考え方の違いが喧嘩のきっかけになるんですよね。僕は、新潟生まれ新潟育ちの超日本人。18歳の時、大学進学をきっかけに東京にきました、っていうめっちゃ普通の人なんですよ。Jyodanはアメリカで生まれて色んな場所で育ってきたし、Amiideも拠点が2個あるような感じで。それで、ぶつかっちゃう。

Amiide:そもそも、日本は、自分らしくあるっていうことが結構難しい国じゃないですか。アイドルだったら恋愛が出来ないとか、セクハラも蔓延っているし。でも、そんな中で、こういうチームが自分たちの好きなことをしている、自分がなりたい自分になれるってことを伝えていきたいです。CIRRRCLEのカルチャーも、黒人、レズビアン、ティピカルジャパニーズってバラバラだから。

ーー3人とも、アイデンティティやエスニシティ、セクシュアリティの面にもいてもユニークですよね。そう言った部分は、作品にも反映されている?

Amiide:自分は反映されていると思います。歌詞の中でも絶対「she」とか「her」って単語を使うようにしているし。でも、私1人だけじゃダメなんですよ。世界っていろんな人がいて成り立ってるし、それをキュッとしたのが、CIRRRCLEの3人。日本も、ちょっとずつでも変わってきてると思うし、だからこそ、自分たちももっとメッセージを伝えていきたいですね。

(取材・文=渡辺志保/撮影 =はぎひさこ)

■リリース情報
「Petty(Remix)feat. MRSHLL」
1月23日(水)¥150(税込)

■関連リンク
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