ドミコ さかしたひかるが語る、ライフワークの中での音楽表現「興奮できるものって偶発的」

ドミコ さかしたひかるが語る音楽表現

やっと、バンドサウンドのアルバムになった 

一一自分でも追求したくないって以前言ってましたよね。わかってしまうのが面白くない、と。

さかした:あぁ、そうですね。なんでこの曲がこういうフレーズで構成されているのかとか、自分で分析したくないっていうか。もちろんキリがないっていうのもあるけど。僕、機械が好きで(録音中のICレコーダーを指して)こういう機械もすごく格好いいなと思うんですけど、でもネジで蓋開けて中身見たらすごいシンプルな基盤が出てきたりする。その瞬間にガッカリする。

一一へぇ。こういう構造なのか! って嬉しくはならない?

さかした:それはそれで楽しいけど、ひとつの機械、ガジェット目線で考えるとガッカリしちゃう。いろんな複雑なものが混ざり合って、偶然できたのものです、マジックみたい、っていう感じのままでいてほしいから。そこはあんまり紐解いていきたくないなって思うんですね。

一一そういうものを自分の頭で作るっていうのは、矛盾になりませんか。

さかした:一見矛盾に見えるんですけど、でも僕が作る時はけっこう溢れ出てくるものをそのままアウトプットするんで。たとえば機械の話に戻ると、秋葉原に行って基盤を買って1から組み立てていくんじゃなくて、頭に散らばってるそこらへんの機械を適当に繋げて、ひとつのマシンを作るような、けっこう偶発的な部分が大きいので。けっこう自分でもマジック要素を体感できますね。もちろん一個一個の部品を探っていけば、ものすごくシンプルだったり、意外にこういう組み合わせだったんだ、っていう種明かしもあるだろうけど、そこは別に見なくていいのかなって思うんです。わりと子供の時にSFとか怪獣とか、信じてたんですよね。作られたものだって知った時はすごくショックで。ウルトラマンとかめっちゃ好きだったんですよ。あと、魔女とかも実はいないって知ってショックだったり。

一一……さかしたさん、現代の人ですよね?

さかした:はははは。まぁ田舎にいたんで、わりと遅れてたかもしれない。

一一今ってスマホ片手で何でも調べることができるじゃないですか。表面的な情報なら簡単にわかるし、わかった気になれてしまう。むしろ謎を求めるほうが難しいと思うんですけど。

さかした:うーん……まぁでもそうですよね。

一一変な質問ですけど、こういう作品を作れてしまう自分は面白い奴だなぁって思ったりしますか?

さかした:思わないです(笑)。けっこう「周りのバンドと比べても独特だね」って言われ方をしますけど、あんまわかってないんですね、僕が。言われて初めて「そうなんだ」って思う程度だし。あくまで自分が作って面白いもの、興奮できるものって、やっぱり偶発的なもので。そういう自分のテンションを保つためにも、知らないままがいいって思いますね。

一一曲作りは長谷川さん(ドラム)と一緒ですか? それともさかしたさんがある程度一人で作ってしまう?

さかした:ある程度は自分でやりますね。リズムのところで、まぁ長谷川のドラムっぽい感じ、それはドミコっぽい音っていうものに深く関わってるので、そこを付け足す時にやっと長谷川が登場する感じ。

一一全体を自分ひとりで作っちゃうと、偶発的なバンドマジックって起こり得ないですよね。

さかした:そう、一人でやるとそうですね、誰しも。だから完璧に一人で作り上げると、そのぶん興奮がない。できるっちゃできるんですけど、あんま面白くなくて。そうやって一人で作り上げていくのも昔は好きでしたけど、達成感だけでは物足りなくて。結局自分ひとりで作り上げていくと、そのあと聴く必要もなくなっちゃう気がするんですよ。

一一どんどんハードなバンドサウンドに近づいているのは、そのあたりと関係しているんでしょうか。

さかした:うーん、どうだろう? まぁ最初言ったように、時間が経って嫌でも経験とか知識が入っていくうえでの変化はあって。今回レコーディング終わって思ったのが、CD何枚も出してるけど、やっと、バンドサウンドのアルバムになったなってことで。自主制作の頃から考えると5枚目ですけど、バンドの音になったのはこの1~2作って感じです。

一一一曲目なんて荒々しいガレージパンクのバンドみたいで。これで血気盛んなキッズがわーっとライブに来て、みんな拳を上げるようになったりしたら、嬉しいですか。

さかした:いやぁ、想像つかない(笑)。まぁ全然、いろんな人がいていいと思うし、全然嫌じゃないですけど。……キッズ……仲良くなれるかなぁ?

一一ははははは。

さかした:根暗な奴が好きそうですよね、ドミコは(笑)。引きこもって聴きたいっていう人が多そう。

一一そんな人たちもライブで盛り上がれる曲だと思います。あとは、ドミコがきっかけで変な世界を知っていく若いリスナーは多いでしょうね。

さかした:あぁ。最近は「初めてライブハウスに来ました」みたいな人が何人かいて。それはめちゃくちゃ嬉しかった。ライブ自体が初めてっていう人もいて。すげぇと思って。そういうこと……今思い出しました。もっとなんか「そういう出来事があって頑張ろうと思った、いい曲書こうと思いました」みたいな話ができれば良かったですね(笑)。

ドミコ(domico)/ペーパーロールスター(PAPER ROLL STAR)(Official Video)

(取材・文=石井恵梨子)

『Nice Body?』

■リリース情報
『Nice Body?』
発売:2019年2月6日(水)
価格:¥2,315(税抜)
全10曲収録
<収録曲>
1 . ペーパーロールスター
2 . さらわれたい
3 . My Body is Dead
4 . 裸の王様
5 . 服をかして
6 . わからない
7 . アーノルド・フランク&ブラウニー
8 . あたしぐらいは
9 . マイダーリン
10. ベッドルーム・シェイク・サマー  

■ライブ情報
『ドミコ「Nice Body Tour?」』(全てワンマン公演)
2月15日(金)埼玉:北浦和KYARA                                                                
2月23日(土)浜松:FORCE                                                             
3月2日(土)福岡:the voodoo lounge  
3月3日(日)宮崎:SR BOX                     
3月9日(土)広島:BACKBEAT               
3月10日(日)名古屋:CLUB UPSET       
3月16日(土)札幌:KRAPS HALL          
3月20日(水)宮城:enn 2nd                 
3月24日(日)大阪:umeda TRAD          
3月29日(金)新潟:CLUB RIVERST       
3月30日(土)金沢: GOLD CREEK         
4月6日(土)岡山:ペパーランド                 
4月7日(日)香川:高松TOONICE            
4月19日(金)東京:LIQUID ROOM           
5月18日(土)沖縄:output                      

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