家入レオが語る歌への意識と自己プロデュース「どれだけ曲と自分の人生を濃く結びつけられるか」

家入レオが語る“歌への意識”

私はやっぱり「Why?」や「How?」が似合う 

ーーそれと、今回のシングルに「もし君を許せたら」のピアノバージョンを入れた経緯は?

家入:以前、『ミュージックステーション』でこの曲を清塚信也さんとコラボしたんですよ。あの時って、清塚さんが確かスウェーデンに行かれていて、しっかりとしたリハーサルができなくて。本番直前に音確認程度で、生放送を迎えたんですけど、その緊張感を2人で乗り越えた絶妙な高揚感が忘れられなくて。今回、「もし君を許せたら」を再録するという話が出た時、絶対に清塚さんにピアノを弾いてもらいたいと思ってオファーしたんです。

レコーディングの時は同じ録音ブースに2人で入って、向き合いながら「一発録り」をしたんですけど、まるでフェンシングの試合をしているようでしたね(笑)。向こうがそう来るなら、こっちはこう行く! みたいな。

ーー改めてこの曲と向き合ってみて、何か思うところはありました?

家入:私はやっぱり「Why?」や「How?」が似合う人なんだなと思いました。「この世界で」もそうなんですけど、自分自身や第三者に対して問いかけていく歌詞が多いんですよね。例えば、サラダだったら、そこに入っている野菜を一つ一つ描写するような、歌詞の中で細かいディテールを描きこんでいく方もいらっしゃると思うんです。でも私はサラダを目の前にして「なぜ人はサラダを食べなきゃいけないんだろう?」みたいなところに発想がいくんです。

ーー哲学的な発想なのかもしれないですね。曲作りはいつもどんな風にやっていますか?

家入:気がついたらできていることが多いかも(笑)。藤原さくらちゃんとよく話すんですけど、彼女はルーツミュージックにすごく精通していて、彼女からオススメのCDをたくさん貸してもらって、気に入った曲のコードをピアノで追いかけているうちに、そのコード進行から新しいメロディが生まれることもありますし。

ーーへえ! 面白いですね。

家入:でも、私にとって「自作の曲かどうか?」ってあまり関係ないというか。どれだけその曲と自分の人生を濃く結びつけられるかが大切なんですよね。尾崎さんの時もそうだったし、他のコンポーザーの方でも、曲を作っていただいた時はまず自分の人生との共通点を探すところから始まる。「あ、これは私の知っている感情だな」っていうところにフォーカスして……私はアクターではないので「演じる」というのとも違うんですけど、「自分以外の自分」になるというか。そういうプロセスが必要だということを、いつもご一緒しているコンポーザーの方々、尾崎さんはもちろん、久保田真悟(Jazzin'park)さん、杉山勝彦さんたちと共有して、「この言葉は私の中にはないものだから、他の言葉でお願いします」みたいなことも伝えるんです。

ーー他の人が書いた曲の方が、自身の一面を的確に表現していると感じることもある?

家入:ありますね。だからこそ自作曲かどうかのこだわりがないのだと思います。とにかく「いい作品を届けていきたい」というか。「家入レオ」というアーティストに何をさせたら面白いか? というのを、いろんなクリエーターさんたちと一緒に考えていて。今まで築き上げてきた7年間で、皆さんの中にある「家入レオ」があるし、それを全うしつつ裏切っていきたいなって。

 だから、ラブソングを他の人にオファーした時は、上がってきた歌詞に対して「ここまで女の子っぽくなっちゃうと、家入レオらしくないから、この表現をもう少し掘り下げてほしい」とか、リクエストすることもありました。家入レオでありながら「家入レオ」をプロデュースしている感覚なのかもしれないです。

ーー撮影の時も、フォトグラファーの三橋優美子さんと密に話し合っていましたよね。すごく自己プロデュース能力に長けた方なのだなと思いました。

家入:なかなか応援してくれている方と個々にこうやって深い話をする機会はないですから、7割くらいは「家入レオ」って想像でできあがっていると思うんですよね。例えば写真1枚を見ていただいて、そこからイメージを膨らませてもらったりしているわけで。それをどう見せたらいいかとか、どんな曲を届けたら喜んでもらったり、驚いてもらったりできるか? みたいなことは、自発的に考えたいんですよね。

ーーそういう気持ちって、デビューした頃からありましたか?

家入:いえ、デビューした頃は10代だったので、自分の心の中の痛みというか、「認められたい!」という思いを出すので精一杯でした。でも、少しずつ年齢を重ねていくうちに、少しずつ考え方も変わってきて。中でも、シングル「ずっと、ふたりで」で完全楽曲提供を受けたことは、ターニングポイントだったかもしれないですね(作詞作曲:杉山勝彦。家入が曲制作に参加しなかった初の楽曲)。その時に改めて「自分は歌うことが好きなんだ」と思えたし。他の人が見た「家入レオ」というものを強く意識したきっかけだったんじゃないかと。

ーーところで、昨年は家入さんにとってどんな1年でした?

家入:去年は、ライブなどを観てくれた周りの人から「進化したね」って言っていただくことが多かったんです。自分では全く意識してなかったんですけど、だからこそ過渡期に来ているのかなと思いました。で、後半からは自分自身の変化に気づいてきて。「こうしたい」と思ったことが現実になるスピードが上がっているなと。例えば、「この人と一緒に仕事をしたい」「この方にレコーディングやライブに参加してほしい」って、今の私にはちょっと背伸びしているようなお相手だったとしても、取り敢えず言葉にしてみようと思って、どんどん公言していたらいい出会いがたくさんあったんですよね。

ーー昨年は名越由貴夫さんともライブをやったんですよね。それも、そういった出会いの一つ?

家入:まさに。小さい頃からCHARAさんが大好きで、『スワロウテイル』ももちろん観ていたし、YEN TOWN BANDでギターを弾く名越さんにはずっと憧れがあったんですね。ツアーを昨年は一緒に回らせていただいて、ライブが終わった後に反省会も兼ねて打ち上げでご飯を食べたりして。そこでみんなから絶賛されていた名越さんのプレイが、次の日の公演では全く違うものになっているんです。もう「過去のもの」として手放し、次の新たなアプローチに挑戦しているんですよね。普通、自分で気に入っていた場合はもちろん、誰かから褒められたら、そのことに執着してしまいがちじゃないですか。

ーー現状維持というか。

家入:そうそう。でも名越さんは、そういう執着心が全くなくて、「今この瞬間に奏でたものが一番いい」という自信に満ち溢れているからこそできるんだろうなって。

ーー常に進化していこうとする名越さんの、そういう姿勢に感銘を受けたからこそ家入さんも、人から「進化したね」って言われることが多かったのかもしれないですね。 

家入:常に新しさみたいなものを求めていく、嗅覚や好奇心は持っていなければなと思いました。昨年は、長期の休暇ももらって1人でロンドンへ行ったんですけど、そこでサム・スミスのライブを観たんですよ。日本でライブを観るときって、もちろん観客として楽しもうっていう気持ちはありつつも、なんか送り手の目線で考えちゃうんですよね。「そうか、ここではこういう声の出し方をするんだ」とか、「この照明は素晴らしいな、どこの会社なんだろう?」「舞台演出は誰がやっているのかな」とか(笑)。

だけど海外でライブを観ているときは、100パーセント観客目線で楽しめたんですよね。それって結構、久しぶりの感覚だったからすごく嬉しくて。「そうだ、ライブへ行く時ってこんな気持ちだったな」と思ったし、私のライブを観に来てくれる人たちも、こんな気持ちでいてくれてるのかな? という確認もできて。

ーーサム・スミスのライブはどうでしたか?

家入:日本でも観たことはあったんですけど、やっぱり母国でのパフォーマンスは特別だなって思いましたね。もちろん、プロフェッショナルだから、どこへ行っても同じクオリティのものを目指しているんでしょうけど、でもやっぱり故郷でやる時って普段とは違うんだろうなって。

ーーなるほど。あと、海外でライブを観ると開放的な気持ちになりません?

家入:そうなんですよ。お客さんももうカラオケ状態というか(笑)。もう大合唱が始まって、こんな風に自分の気持ちをためらいなく出せるっていいなあって思いました。

ーーでは最後に、今年の抱負を聞かせてもらえますか?

家入:今年は丁寧な生活を目標に持っていて。割と去年の半ばくらいまでは「いい歌を歌いたいからいい経験をしたい」って思っていたんですけど、それを逆にするだけで、こんなに世界観が変わるんだって思って。やっぱり生活がやせ細っていくと、表現もできなくなる。スーパーに自分で行って、素材を確かめて買って、ちゃんと料理をしたい。「いろんなところに常に出ていないと、すぐ忘れ去られるよ?」みたいな意見も耳に入るけど、それってやっていることで安心感を得ようとしながら、実は焦燥感に駆られているだけだと気づかされたんです。今年はもっと自分のペースで生活しながら、作品に向き合っていきたいですね。

 あと、音楽がベースにありつつ全く違うことにも挑戦したい。今、日経新聞でエッセイの連載をやっているのですが、これからも文章は書いていきたいし、声優もやりたい。「家入レオ」の可能性を見てみたいですね。

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(取材・文=黒田隆憲/写真=三橋優美子)

■リリース情報
15thシングル『この世界で』
発売:2019年1月30日(水)
映画『コードギアス 復活のルルーシュ』オープニング主題歌
初回限定盤 12CDS+DVD ¥1,700+税
<12CDS収録曲>
1, この世界で (映画「コードギアス 復活のルルーシュ」オープニング主題歌)
2, Spark (パラスポーツアニメ「車いすテニス編」テーマ曲)
3, もし君を許せたら (Piano Version)
4, この世界で(Instrumental)
5, Spark(Instrumental)

<DVD収録内容>
1, この世界で Music Video
2, この世界で MV Making Movie

完全生産限定盤 12CDS+CD ¥2,900+税
<12CDS収録曲>
初回限定盤と同内容
<CD収録曲>
“B-Side Collection”
1. ripe(1st「サブリナ」2012.2.15) テレビ朝日系「笑顔がごちそう ウチゴハン」エンディングテーマ
2. カラフル(2nd「Shine」2012.5.16)
3. 心のカ・タ・チ(3rd「Bless You」2012.9.12) 薬物乱用防止キャンペーンソング
4. Wake you up(4th「Message」2013.5.22) festaria “Wish Upon A Star”TV CMソング
5. Who’ s that(5th「太陽の女神」2013.11.6)
6. 願い事(8th「Silly」2014.11.19)
7. I am foolish(9th「miss you」2015.2.11)
8. Driving day(9th「miss you」2015.2.11)
9. Shooter(10th「君がくれた夏」2015.8.19)
10. わたしの歌(12th「僕たちの未来」2016.5.11)
11. ヒーロー(13th「ずっと、ふたりで」2017.7.26) SMBC/三井住友銀行「ひとりひとりが日本代表。」CMソング

アニメジャケット限定盤 12CDS ¥1,400(+tax)
デジパック仕様/「コードギアス 復活のルルーシュ」イラストジャケット
<12CDS収録曲>
初回限定盤と同内容

■ライブ情報
『家入レオ 7th Anniversary Live at 大阪城ホール ~Premium Symphonic Night~』
日時:2019年2月24日(日) 開場16時/開演17時
会場:大阪城ホール

『家入レオ7th Live Tour 2019』
5月10日(金)山梨 コラニー文化ホール 開場 18時/開演 18時30分
5月12日(日)石川 白山市松任文化会館 開場 16時30分/開演 17時
5月19日(日)香川 サンポートホール高松・大ホール 開場 16時30分/開演 17時
5月24日(金)茨城 日立市民会館 開場 18時/開演 18時30分
5月26日(日)愛知 名古屋国際会議場 センチュリーホール 開場 16時/開演 17時
5月30日(木)北海道 コーチャンフォー釧路文化ホール 開場 18時/開演 18時30分
6月1日(土)北海道 わくわくホリデーホール 開場 16時30分/開演 17時
6月8日(土)岐阜 バロー文化ホール 開場 17時/開演 17時30分
6月9日(日)滋賀 滋賀県立文化産業交流会館 開場 16時30分/開演 17時30分
6月14日(金)秋田 秋田市文化会館 開場 18時/開演 18時30分
6月15日(土)宮城 仙台銀行ホール イズミティ21 開場 17時/開演 17時30分
6月21日(金)島根 島根県芸術文化センター「グラントワ」大ホール 開場 18時/開演 18時30分
6月22日(土)広島 広島JMSアステールプラザ 大ホール 開場 17時/開演 17時30分
6月28日(金)群馬 太田市民会館 開場 18時/開演 18時30分
6月30日(日)山形 荘銀タクト鶴岡 開場 17時/開演 17時30分
7月6日(土)静岡 静岡市民文化会館中ホール 開場 17時/開演 17時30分
7月13日(土)福岡 福岡サンパレスホテル&ホール 開場 16時30分/開演 17時30分
7月14日(日)長崎 諫早文化会館 開場 16時30分/開演 17時
7月19日(金)兵庫 神戸国際会館 こくさいホール 開場 18時/開演 19時
7月27日(土)千葉 幕張メッセ国際展示場9.10ホール 開場 16時/開演 17時
特設ページ

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