L’Arc~en~Cielはバンドとしての“夢”を魅せてくれる 『LIVE 2018 L'ArChristmas』レポート

『LIVE 2018 L'ArChristmas』レポ

 そして。hydeが伸びやかに声を伸ばし、難易度の高い高音キーでのtetsuyaがコーラスを加えた「Dearest Love」を挟み、中盤では、ライブでは恒例となっているkenのギターソロから繋げられた「MY HEART DRAWS A DREAM」でオーディエンス全員が声を重ねて大合唱した後、「Hurry Xmas」へと流れていった。

 hydeは「Hurry Xmas」が始まるとtetsuyaの元へと足を運び、tetsuyaの左肩に右の肘をかけて歌った。さらにhydeは右手をtetsuyaの右肩へとまわして肩を抱くと、tetsuyaは自分の右肩に乗せたその hydeの手を、右手で軽くポンポンッと触りコンタクトを取ったのだった。

 そんな2人の姿に客席からは大きな歓声が上がったのは言うまでもない。

 何よりも望んだL'Arc〜en〜Cielのライブで、何よりも望んだ光景だったのではないだろうか。この2人の出逢いがなければ、今、この世にL'Arc〜en〜Cielというバンドの存在はない。こんなにも多くの人達を幸せへと導けるバンドの始まりが、この2人の出逢いだったかと想うと、改めてここに計り知れない出逢いの奇跡の大きさを感じる。

 こうして今、hyde、ken、tetsuya、yukihiroという4人のL'Arc〜en〜Cielでステージに立ち、多くの人をさらに幸せへと導いている景色をとても素晴らしく、そんな幸せに包まれた場所を共に共有できたことを嬉しく思った。

 10人のサンタクロースが現れ、会場にクリスマスプレゼントのカラーボールを投げたり、フロアにウエーブを起こしたりと盛り上げた後、4人はメインステージの中央からまっすぐに伸びた花道の先端に設けられたセンターステージに身を移し、クリスマスバージョンにアレンジされた「未来世界」で声を重ね、「静かの海で」へと繋げていった。初期曲でもある「静かの海で」が届けられることを想像したオーディエンスはどれくらいいただろう? 割れんばかりの大歓声がその驚きの大きさを示していた。フロアでは、その曲が聴けたことに泣き崩れるオーディエンスもいたほどだった。

 このブロックでは、メンバーそれぞれがギターを持ち、リードボーカルを交代で務める「trick」も届けられた。

 それぞれの個性を感じるモデルのギターを持っていたのもとても印象的。ランディ ローズを思わす黒地に白い水玉のフライングVを持ったtetsuyaの姿にも、そこへの憧れとルーツを感じ、改めて彼らL'Arc〜en〜Cielの音の中にあるロックのルーツを噛み締めた。デジタル色の強い「trick」や、この流れで届けられた妖艶なヘヴィロック「X X X」やグルーヴィな「Wings Flap」は、彼らが吸収してきたであろう音楽ルーツを、見事にL'Arc〜en〜Cielという個性にしていると感じることができた。その瞬間は、少し違う角度からL'Arc〜en〜Cielを楽しめた瞬間でもあった。

 4人はメインステージへと戻り、hydeが今回の公演のセットリストについて話した。今回のセットリストは、2017年4月に開催したライブに向けてリクエストを受けつつも、披露できなかった上位の曲の中から、冬の曲を中心にセレクトしたのだという。この流れから、インディーズの頃からやっている曲だという曲紹介を挟んで「White Feathers」へと繋げた。光のないフロアは、キャッチーさの少ないこの曲を真っ直ぐに受け止め、彼らの音に耳を傾けた。後半フロアに光が灯り真っ白な羽根が舞い散った景色は、言葉にできないほどとても美しい世界だった。

「こっちがプレゼントを貰ったような気分。クリスマスのおかげで今日僕たち会えたわけでしょ? 今日は本当にありがとうございました。導いてくれたこの日に感謝します」

 “こっちがプレゼントを貰ったような気分”と言ったhydeの想いに、心が暖かくなるのを感じた。

 そしてラスト。この日、彼らが最後の曲として選んでいたのは「雪の足跡」。パイプオルガンの音とフィドルの音に包まれる中、ken、tetsuya、yukihiroはゆっくりと音を重ね、hydeはそこにそっと歌を乗せた。「きよしこの夜」のフレーズで締めくくられたスペシャルな「雪の足跡」は、オーディエンスの生涯忘れることのない想い出となったことだろう。

 この日ステージから届けられた22曲の1曲1曲も、吹き上げた真っ白な紙吹雪も、客席の上を転がった虹色の風船達も、オーディエンスが腕に付けていたプログラミングされたL’edバンドでフロアに描き出された光のL'ArChristmasの文字も、会場の外の装飾や景色やグッズも、そこにあった景色の全てが、それを目にした人達の人生に大きく刻まれていくことになるのだと思うと、彼ら4人が、そしてL'Arc〜en〜Cielというバンドが、今、ここに存在する意味の必然を感じる。

 こんなにも多くの人達を幸せに導くことができるL'Arc〜en〜Cielというロックバンドが、この時代に、そして日本に存在してくれることを誇りに思う。

 素晴らしい曲達をありがとう。素晴らしいライブをありがとう。

 hyde、ken、tetsuya、yukihiro、そして、この日のライブを彼らと一緒に作ったオーディエンス1人1人に感謝を。

 そして。この先も共に歴史を重ねていってくれることと、また、ここで会えることを願って。

(文=武市尚子/写真=今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子)

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