NormCore、初のフルバンド編成で開いた新たな扉 ないとーも駆けつけた3rdワンマン公演レポ

NormCore、フルバンド編成で開いた新たな扉

 ここでサポートメンバーは一旦退場し、残ったNormCoreの3人は音大時代に練習室で一緒に遊んでいた頃を懐かしむように、気軽なセッションをスタート。Tatsuのキーボード、Natsuのクラシックギターをバックに歌われたのは、2018年のボカロシーンを代表する曲となったみきとP「ロキ」。お客さんの手拍子による合いの手も加わって、会場は大きな盛り上がりを見せながらも、どこかアットホームな空気が広がっていく。さらにTatsuが楽器をバイオリンに持ち替え、今度は米津玄師「Lemon」をしっとりと聴かせる。ボカロシーンから登場した二人による2018年の特大ヒット曲を早速取り上げて自己流の解釈でカバーする姿勢からは、やはり現代的なアーティストらしい風通しの良さがある。

左からFümi、ないとー

 その自由なスタンスをより強く感じさせたのが、続いて登場したスペシャルゲスト、人気YouTuber「おるたなChannel」のないとーとのコラボレーションだ。Fümiはこの夏、以前から交流のあったないとーのために、彼の初オリジナル楽曲「28」をうみくん(UMI☆KUUN)名義で制作(作詞はないとー本人が担当)。時おりツイキャスなどでギターの弾き語りを披露していたないとーの音楽的なポテンシャルに目を付け、その才能を開花させて話題になった。そんな縁のあるFümiとないとーはこの日、「28」をデュエットでライブ初パフォーマンス。さらに再登場したバンドの演奏をバックに、ないとーがツイキャス配信でよく歌っていたBUMP OF CHICKEN「プラネタリウム」を一緒に歌ってオーディエンスを沸かせた。あの手この手でお客さんを楽しませるアイデアの豊富さは、きっとFümiがうみくんとしての活動で培ってきたものなのだろう。

Fümi
Natsu
Tatsu
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Fümi
Natsu
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 後半戦は音源よりもハードさを増したNormCore流シンフォニックロック「傷だらけの僕ら」で幕開け。得意のハイトーンボイスも空気を切り裂くような鋭さをみせ、演奏陣もアグレッシブなプレイで盛り立てる。そこからシームレスに新曲「CRY MAX!!」へと移行し、一転してディスコティークなバンドサウンドとラップも交えた軽快なボーカルで会場の景色を明るく塗り替える。ボカロPのれるりりがプロデュースしたこの楽曲はTVアニメ『デュエル・マスターズ!』の新エンディングテーマとして来年1月より放送されることが決まっており、NormCoreの知名度と音楽的な幅をさらに広げるきっかけの曲になりそうだ。

 ライブは早くも必殺の盛り上がり曲に育っているまふまふとの共作曲「カウントダウン」へと続き、TatsuとNatsuの息の合ったコンビネーションとソロ回しも込みでこの日一番の熱さを見せる。最後はUMI☆KUUN名義のアンセミックなポップチューン「I am Just Feeling Alive」で、オーディエンスもハンズアップと大合唱で一体に。アンコールでは、この日がちょうど誕生日だったFümiへのサプライズ企画として、ないとーがバースデーケーキを持って登場するも、記念撮影の際にケーキがすべって地面に落下するというハプニングが起こり、さすがのFümiも「うれしい後に悲しいでパニック(笑)」と動揺を隠せない様子だった。

 とはいえ、どんな時でもファンを楽しませるエンターテインメント精神を失わないのがFümi。アンコール1曲目には、TVアニメ『ユーリ!!! on ICE』のオープニングテーマとして知られるDEAN FUJIOKA「History Maker」のカバーを披露し、音大で声楽を学んだ彼らしい朗々とした歌声で最高の見せ場を作る。同楽曲はもともとライトクラシックとクラブミュージックの要素がハイブリッドしたナンバーなだけあって、NormCoreの音楽性とも素晴らしく相性が良い。そしてラストは、フィンガースナップなどのトロピカルハウス調の音色を散りばめたモダン&壮大なロック曲「One Way To You」で締め括り。Fümiが個人的に嗜好する最新の洋楽ヒットと、ボカロやアニソンといった日本特有の音楽カルチャーの要素を横断しつつ、アカデミックな技術に裏打ちされた歌と演奏でプロフェッショナルな音楽を届けるNormCore。今回のライブではその魅力がより濃縮されていたように思うし、今後それをさらに煮詰めていくことでどんな音楽が生まれてくるのかが楽しみでならない。

■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。

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