鬼龍院翔、単独公演で示した“歌”への思い バラード曲やMUCCカバー披露した『ひとりよがり6』

鬼龍院翔が示した“歌”への思い

 “ファンの喜ぶこと”を考えた結果、新曲を持ってきたという鬼龍院。「振動」も、やはり失った愛について後悔し、逡巡する楽曲だ。サビでは〈どんなに歌っても 歌は届かない ただの振動〉といい切る。そう、音は、音楽は突き詰めてしまえば、“空気の振動”が鼓膜に伝わって起こる現象だ。先述したように、大抵の場合は離れた心というものはどうにもならない。仮にそれを歌にしても、仮に個人資産が何億円あっても(仮の話です)。ただ、その”振動”が、こんなにも多くの人の心を揺さぶることだってあるのだ。

 「Tomorrow never world」では「皆さんの近くに行きます!」とステージを離れ、客席に降り立つ鬼龍院。1階席のみならず、2階、3階席まで歌いながら練り歩いていく。思わぬファンサービスに着席したまま喜びを隠せない観客たち。歌い終わると同時にヨタヨタと息を切らせながらステージに戻るという不器用な姿も、ファンから愛される理由なのだろう。そして本編最後は「春が来る前に」で締めくくられた。

 アンコールでは、「今まで孤独を磨いてきたけど、(客席の)皆の顔を見て、『ひとりよがり』やってよかったと思いました!」と、ポップで力強い応援歌「らふぃおら」、自分自身に問いかけるようなバラード「広がる世界」といった、ゴールデンボンバーの魅力のひとつである前向きなナンバーを披露。そしてラストの「あしたのショー」では、スクリーンにインスタグラムのログが映し出される。『ロボヒップ』ツアーの準備など、今年の鬼龍院の様子が描かれるのだが、ツアー中盤からメンタルの問題なのか作曲ができなくなったり、じっとしていると不安になるため外を彷徨っていたという告白がなされる。現在は無事に回復しているとのことで、“昨日までのショーも中々頑張ってるよな(^_^)”と、様々な過去があって、現在の鬼龍院があるということを改めて感じさせられた。ラストのラビでは紙吹雪が降り注ぎ、達成感のある表情をみせる鬼龍院に、観客は大きな拍手で応えていた。

 歌い終わると、「重いものを見せてしまってスミマセン、要するに今は元気ですということです」と、最後まで彼らしい腰の低さでステージを後にした。

 最後に「今年、精神的に辛かったけど、歌ってる時だけは楽しかったから。僕、歌がないとダメだから、またライブでお会いできたら嬉しいです」と鬼龍院は観客に呼びかけていた。明日の翔は、また全国をまわり、歌い続けて行くのだろう。

(取材・文=藤谷千明)

※記事初出時、一部情報に誤りがございました。訂正の上、お詫び申し上げます。

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