18scott×SUNNOVAが語る、濃密なヒップホップアルバム『4GIVE4GET』で示したシーンの行方

18scott×SUNNOVA対談

どんなトラックでも、自分がやれば絶対にヒップホップにできる

——ふたりで楽曲を作り始めたのは何がきっかけだったんですか?

18scot:SUNNOVAさんにバックDJをやってもらった直後、すぐ1曲作りましたよね?

SUNNOVA:うん。トラックメイカーとしての彼もすごくいいなと思っていたし、「この人はソロでやっていくんだろうな」と思ってたんです、最初は。そのなかで「何曲か一緒にやれたらいいな」くらいで。ただ、何曲か作っていくなかで、ふたりで作ることで広がりが出ることに気付いて。もともと好きな音楽やスタイルが違うからこそ、お互いにないものを補完できるんじゃないかなと。そういう幅の広さを持っているラッパーって、シーン全体を見渡してもそんなにいないと思うんですよ。

18scott:ラッパーとビートメイカーが一緒にやる意味は、まさにそこにあると思っていて。自分でも作れるようなビートだったり、似た傾向の人と一緒にやる理由は何もなくて、自分では思い付かないこと、センスの外側にあるビートを作れる人と一緒にやるからこそ、ひとりでは作れない曲につながるっていう。SUNNOVAさんのビートはヒップホップのそれではなくて、いろんな音楽を吸収した独自のものですからね。あと、僕自身が「自分がラップをすればヒップホップになる」と思っているのが大きいですかね。

SUNNOVA:そうだね。

18scott:どんなトラックでも、自分がやれば絶対にヒップホップにできるっていう。ヒップホップとかけ離れたものを自分のラップでヒップホップに持ってくることで、いままで聴いたことがない音楽を作れると思っていたんですよ。

SUNNOVA:ラップは歌唱法のひとつであって、「ラップ=ヒップホップ」でいうことではないと思うんです。でも、彼のラップは「本当にヒップホップだな」という感じがあって。僕のトラックと彼のラップが合わさると、すべてヒップホップのレールに乗るんですよ。

18scott:いまって、ラッパーの腕が試されてる時期だと思うんですよね。USで流行っているようなビートであれば、どんなラッパーも乗りこなせると思うんです。それがカッコいいかどうかか別にして。そうじゃないビートにラップを乗せたときに、いかにヒップホップのカルチャーを消さず、いいものにできるか?というのがラッパーの実力じゃないかなって。今回のアルバムは「どんなトラックでもヒップホップに昇華できる」という提案でもあるんですよね。

SUNNOVA:うん。楽器のプレイヤーには手グセみたいなものがあって、「あの人が弾くとブルースっぽくなるよね」みたいなことってあるじゃないですか。18scottのラップはそれに近しいものがあると思いますね。どんなジャンルのトラックでもヒップホップになるっていう。

——いちばん聴いてきた音楽も、やはりヒップホップ?

18scott:そうですね。父親の影響で小学校の頃から聴き始めたのが、KREVAさん、RHYMESTERさんなどの日本のヒップホップで。中学生になるとB系ファッションが流行って、「クラスのイケてるやつはヒップホップを知ってる」みたいな雰囲気があったんですけど、僕はもっと前から聴いてたから「あいつ、結構すごいよ」みたいなポジションで過ごしていて(笑)。

SUNNOVA:(笑)。そういうのあるよね、ジャンルは違っても。

18scott:そうですそうです(笑)。僕はその頃から「自分でやりたい。ステージに立つ側になりたい」と思っていて。人知れずリリックを書いたりもしてたんですよ、中学のときから。ふだん聴いてる曲のトラックに合わせてラップしたり……。みんなやってたと思いますけどね、まわりのヤツらも。

——それはちょっと意外ですね。アルバムを聴いても、USヒップホップの影響が強いのかなと思ってました。

18scott:「USばっかり聴いてたんでしょ?」ってよく言われるんですけど、海外のヒップホップをちゃんと聴くようになったのは、わりと最近なんですよ。サブスクが発達して、めちゃくちゃ聴きやすくなったので。藤沢のタワレコは最近復活しましたけどしばらくなかったし、iTunesでダウンロードするのもめんどくさかったから、「サブスク、すげえ」って(笑)。

SUNNOVA:ホントだよね。聴いてなかった名盤も気軽に聴けるようになったり。

18scott:そうそう。新譜もすぐチェックできるし、時間があれば1日中聴いてますね。ただ、系譜みたいなものがわからないんですよ。「このラッパーはNYで」とか「アトランタで」とか、誰と誰がつながってるとかはあまり知らなくて。いちばん色濃いルーツは日本語のラップなんですよね、やっぱり。高校の頃のフロウなんて、ほとんどMummy-Dさんだったので(笑)。

SUNNOVA:そうなんだ?(笑)。

18scott:学生の頃に作ってた音源を聴くと「○○っぽい」という感じがあるし、まだまだ自分のスタイルが確立できてなくて。それができたのも最近かもしれないですね。ヒップホップを知ったのは早かったかもしれないけど、自分の表現に持ってくるまでにはかなり時間がかかってます。

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