ASIAN KUNG-FU GENERATION『ホームタウン』、バンドがサウンドにこだわる利点を考える

 一方、既発曲の再録「荒野を歩け」や同時リリースの『Can't Sleep EP』(CDでは初回生産限定で付属)に収められた疾走感のあるエイトビートの楽曲も、パワーが加わってより迫力を増している印象だ。

 このように聴き心地が一変すれば、自ずとリスナーの注意が向くポイントも変わってくる。ツインギターとベース、そしてドラムスのアンサンブルというバンドの個性はそのままであるにもかかわらず、どこか“新しさ”を提示できているのはそのためだろう。また、新たなサウンドを手に入れたゆえの“伸びしろ”がいたるところに感じられるのも新鮮だ。結成から20年を超えてなお、ロックバンドというかたちを活かしたまま、次の表現の可能性を垣間見せる作品を提示できたこと。多くのリスナーからすればもしかしたら些細な達成に思えるかもしれないが、ここにこそ彼らがサウンドのつくりかたを抜本的に見直した意義がある。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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