KOHHのラップはなぜ海外アーティストからも求められる? マライア・キャリー楽曲参加を機に考察

 KOHHは、ヒップホップ的なストリートの「リアル」を感じさせるストーリーを背負いつつも、たとえば2017年の「Business and Art」(『DIRT II』収録)で綴られるように、表現者としての信念を貫いてひとりの個人として世界を生き抜く、悩める孤独な人間というややヒロイックなアーティスト像を提示してもいる。

KOHH - ”Business and Art” Official Video

 初期の代表曲「JUNJI TAKADA」や「Fuck Swag」、国際的なブレイクスルーとなった「It G Ma」でのヴァースにおいても他人を気にしない「個」を重んじる姿勢は一貫しているが、過去の巨匠と呼ばれるアーティストに自らをなぞらえる不敵さに加え、その意表をつく人選(〈まるで田中泯〉!)からはヒップホップやポップカルチャーにとどまらない表現への野心が見て取れる。

 セックスや富、名声とそのはかなさをラップして見せながら、確固たる「個」の確立、そして表現に対する真剣さと貪欲さを常に赤裸々に提示する姿こそが、KOHHが持つ、ドメスティックな文脈にとらわれないカリスマ性の源泉なのではないだろうか。国内外で人気を博し、大物ミュージシャンへの客演もそこに理由があるように思う。願わくは、時折顔を見せる、ヒップホップの(あるいは「ロックスター」にも通じる)マッチョイズムからも軽やかに脱却してほしいものだが、高望みにすぎるだろうか?

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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