ヒトリエが『BORUTO』EDテーマで掴んだ新境地「メンバーとお客さんありきの孤独に踏み込めた」

ヒトリエ『BORUTO』EDで掴んだ新境地

「『BORUTO』じゃなかったらこういう曲になっていない」(wowaka)

ーーそんな中で、「ポラリス」はどういうイメージで作っていったんですか?

wowaka:少年マンガって主人公がいるじゃないですか。独りぼっちで、でも世界に対して諦めていなくて、自分の中で大事にしているものがあって。それを探していくと、やっぱり独りぼっちの真ん中があるんだけど、それだけではいられない。大事にしたい人がいて、頼らないといけない人がいて、頼ってくれる人がいて。そういう、心の箱から漏れているキラキラしているものに対して曲を作り続けている感覚は自分の中にもずっとあって。あ、これは少年マンガと一緒の部分だって気づけたんですよ。それをきっかけに作りました。

ヒトリエ 『ポラリス』 / HITORIE – Polaris

ーーこの曲にも〈ひとりきりでも続く生〉という歌詞が出てきますけど、孤独ってヒトリエの表現のベーシックにずっとあるものだと思うんです。でも今回「ポラリス」で歌っている孤独って、これまで歌ってきたものとは微妙に違うような気がします。

wowaka:やっぱり、人と関わろうとすればするほど、向き合わなければいけない自分がどんどん深くなってくると思うんですよね。ちゃんと自分でモノを作って、歌を歌って、お客さんの前に立って、っていうことをずっと続けてきて、「あ、こういうことかもしれない」と分かった自分だから出会えた「もっと向き合わなければいけない自分」があったんです。そういう意味で、メンバーありきの孤独、お客さんありきの孤独に初めて踏み込めたのかもしれません。

ーー言葉もタフだし、アレンジもタフだし、言い換えればものすごくシンプルに感じる。

イガラシ:制作している時期に(wowakaの)様子を見ていたら、わりと閉じこもっている時期なのかな、って思ってたんですよ。今まではそういうときに出してくる曲って、ダークな方向に突き抜けた感じの曲が多い印象だったんですけど、この曲はそうじゃなかったから「あ、変わったな」という感じはありました。

ーーたしかに、曲の本質としては孤独だし、1人で進んでいかなきゃいけない厳しさとか痛さみたいなものがテーマになっていて。ダークな方向に振り切ってもおかしくないですよね。もしかしたらそれは『BORUTO』が着火剤になって逆方向に振れたのかもしれないですね。

wowaka:うん、絶対そうですね。やっぱり『BORUTO』じゃなかったらこういう曲になっていないですからね。

シノダ:なんか、不思議な曲だなと思うんですよね。サビのメロディが僕はすごく好きで、ささやかなメロディというか。ガツンとぶん殴るようなメロディじゃなく、メロディがあって、そこに伝えたい言葉を乗っける、作りがすごくきれいだなって。その横でめちゃめちゃシンプルなギターを弾くんですよ、僕は。それがなんか良いなあって思って。

ーーそんな「ポラリス」に対して、一見正反対の感覚があるのがカップリングの「RIVER FOG, CHOCOLATE BUTTERFLY」ですが。

wowaka:「ポラリス」の1カ月くらい後にできたんです。

シノダ:ぶったまげましたね、この曲。「これ、これ、これ!」っていう。

wowaka:両極端にしたいと思って作った感じでもないんですけどね。イガラシにも言われていたのが、僕、この時期にインドに行ってるんですよ。だからそういうのも影響したのかなって。違うところに行って、自分の孤独みたいなものに向き合って、何か肌で感じて出てきた側面というか。

イガラシ:デモをもらって歌詞を読んだときに、完全にインドの曲だと思いました。

wowaka:だからこれは、ガンジス川でバタフライをする曲なんだよ、きっと(笑)。

ーーただ、「ポラリス」も“俺とあなた”という関係性の歌だし、「RIVER FOG, CHOCOLATE BUTTERFLY」もそうじゃないですか。通じる部分はあるなと思います。

wowaka:あ、そうですね。それも本当、『ai/SOlate』からの流れで言えるようになったんです。

ーー〈泥の中/ふたりでバタフライをしたい〉というのも相手とのコミュニケーションだし、すごくエロティックですよね。

wowaka:ああ、なるほど! そういう感じもあるのか。

ーー一方、「日常と地球の額縁」も収録されるというのもトピカルですよね。wowakaとして発表していたボーカロイド曲をヒトリエとしてもう一度やるというのは、「アンノウン・マザーグース」もありましたけど、過去曲をやるというのはまたニュアンスが違うじゃないですか。

wowaka:これは、『ai/SOlate』をリリースして、ツアーをやることになって、そのリハの時に突然やろうってことになって。

シノダ:ボカロ曲を何か1つやろうか、っていう話になったのかな。

wowaka:これまでもライブの中で「ワールズエンド・ダンスホール」とか「ローリンガール」をやるっていうのはあったんですけど、この曲がねえ……ボーカロイドでアルバム(『アンハッピーリフレイン』)をリリースする時に、最後にできた曲なんですね。自分を絞って絞って書いた、最後の一滴みたいな曲がこれなんですよ。だからこの曲を作っていた時の思い出と、この曲に対してもっとできることがあったんじゃないかっていう思いとで、一種のトラウマみたいになっていたんですよね。目を背けてたというか、どう付き合ったらいいか分からなくて。でもシノダが「そろそろいいんじゃねえ?」って提案してくれて。

シノダ:僕はもともと彼のアルバムの中でもこの曲が好きだったんですよ。異様な立ち位置にある曲で、妙な存在感があって。このバンドに入ることになって、この曲ライブでやれるのかなと思ってたら跳ね除けられて(笑)。それで定期的にアプローチしていたら、ようやく実った。彼はついにやるモードになったんや、って。

wowaka:最初はちょっと遊び感覚みたいな感じで合わせてみたんだよね。そうしたら「良いんじゃない?」ってなって。それでツアーで人前で演奏して歌って、すごく新鮮な気持ちで、改めてこの曲に出会えた感覚があった。1個のボカロ曲として、というよりは、今の自分たちを象徴するような曲として、これをシングルに収録するのはめちゃくちゃ自然だなと思えたんですよね。だから“ボカロの曲をヒトリエでセルフカバーしました”という感覚ではないんですよ。

シノダ:ツアーを通して鍛え上げてきたからね。

ーー聴いていてもそういう感じはしないですよね。自然に3曲目に収まっているというか。

wowaka:そう。ヒトリエを始める直前の曲なので、ヒトリエのプロトタイプというところもあるんでしょうね。

ーープロトタイプと最新型が自然に同居するシングル、というのは良いですね。次のフェーズのスタート地点として。

wowaka:うん。今こういうフェーズに立って、次は何をしなきゃいけないだろうかというのはちゃんと向き合って、戦っていこうと思ってますね。

(取材・文=小川智宏)

■リリース情報
New Single『ポラリス』
2018年11月28日(水)リリース
初回生産限定盤(ポラリス盤)[CD+DVD+ホログラム缶バッジ] ¥2,000+税
通常盤(日常盤)¥1,200+税
※初回プレスBORUTO描き下ろしイラストステッカー仕様

<CD収録曲>
M1.ポラリス
M2.RIVER FOG, CHOCOLATE BUTTERFLY
M3.日常と地球の額縁

<DVD収録内容>
ポラリスMUSIC VIDEO

※店頭特典
タワーレコード:ポラリスカード(未発表新曲先行試聴コード付)
Amazon特典:ポラリスクリアファイル
拠点特典:ポラリスステッカー

「ポラリス」先行配信はこちら

■番組情報
テレビ東京系アニメ
『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』
2018年10月~12月クール エンディングテーマ
10月7日から毎週日曜17:30~オンエア
再放送 毎週土曜7:30~ BSジャパン 毎週火曜25:58~
ネット局:テレビ東京/テレビ大阪/テレビ愛知/テレビせとうち /テレビ北海道/TVQ九州放送

公式サイト

■ライブ情報
『ヒトリエ TOUR 2019 "Coyote Howling"』
3月1日(金)大阪 心斎橋 BIG CAT OPEN 18:00 / START 19:00
3月9日(土)三重 松阪M'AXA OPEN 17:30 / START 18:00
3月10日(日)静岡 Sunash OPEN 16:30 / START 17:00
3月16日(土)広島 セカンド・クラッチ OPEN 17:30 / START 18:00
3月17日(日)香川 高松 DIME OPEN 16:30 / START 17:00
3月21日(祝・木)石川 金沢vanvan V4 OPEN 16:30 / START 17:00
3月23日(土)愛知 名古屋 CLUB QUATTRO OPEN 17:30 / START 18:00
3月30日(土)新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE OPEN 17:30 / START 18:00
4月7日(日)岡山 CRAZYMAMA 2nd Room OPEN 16:30 / START 17:00
4月21日(日)北海道 DUCE SAPPORO OPEN 16:30 / START 17:00
5月11日(土)福岡 DRUM Be-1 OPEN 17:30 / START 18:00
5月12日(日)鹿児島 鹿児島SRホール OPEN 16:30 / START 17:00
5月25日(土)宮城 仙台 Darwin OPEN 17:30 / START 18:00
5月26日(日)岩手 盛岡 the five morioka OPEN 16:30 / START 17:00
6月1日(土)東京 新木場 STUDIO COAST OPEN 17:00 / START 18:00

ニューシングル「ポラリス」CD封入先行
2018年11月28日(水)12:00~12月5日(水)23:59迄
1人4枚まで、抽選にて受付

『nexUs TOUR 2018』振替公演
12月28日(金)愛知・伏見JAMMIN’
OPEN 18:30 / START 19:00
w/バズマザーズ (キュレーター:シノダ)

■イベント情報
『BARIYOKA ROCK 2018』
12月26日(水)福岡 Zepp Fukuoka
OPEN 13:00 / START 14:00

『COUNTDOWN JAPAN 18/19』
12月31日(月)幕張メッセ国際展示場
OPEN 13:30 / START 15:00

■関連リンク
公式WEB
Twitter
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LINE ID:@hitorie
モバイルサイト「HITORI-ATELIER」

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