東京スカパラダイスオーケストラが語る、エレカシ宮本浩次とのコラボ曲に込めた“30年分の音楽人生”

スカパラ、宮本浩次との制作秘話

茂木「“僕たちの人生そのもの”が4分半に収まってる」

一一上手い(笑)。歌詞の深みを見ると、今だから書ける言葉も多いのかなと思います。少なくとも90〜00年代にはなかった言葉。

谷中:90年代の頃は人生について語る必要もないぐらいの「明日以外すべて燃やせ」だったんですよ(笑)。無我夢中すぎて語る余裕もないくらい。今は、やっぱりだいぶ大人になったしね。

加藤:谷中さんの歌詞もどんどんストレートになってきてるよね。それこそ宮本さんとご一緒したいっていうアイデアは、第一次3部作と言われてる2001年(注:初の歌ものコラボとなった、feat.田島貴男「めくれたオレンジ」、feat.チバユウスケ「カナリヤ鳴く空」、feat.奥田民生「美しく燃える森」)の時からあって。当時も宮本さんの名前は挙がってたんですね。あの時だったら逆に引き受けてもらえなかったのか、引き受けてもらえていたら何ができたのか、どういう言葉を歌ってもらえたかなって今考えると……そこからスカパラは来年デビュー30周年、エレファントカシマシはさらに長いキャリアを重ねていて。移り変わりの激しいシーンの中でも、フェスとかで同世代を探すと隣にエレファントカシマシがいて。お互い違う道だけど、前を向いて歩いてきた、そこが融合してこの歌詞になったと思うんですね。

茂木:もう言葉に人生が全部出てるよね? お互い30年やってて、改めてコラボってなるとそういうものが出てきちゃう。で、いざ宮本さんが歌うと「この人、これを30年間やってきたんだ!」って。やっぱ命の賭け方、使い方が凄い。MVの撮影の何時間かであっても、全開で歌唱してるんですよ? MV撮影だから音楽はすでに大音量で鳴ってるのに。30年やってたらそういう場面は器用にかわせるじゃないですか。でも全然そういうことをしない、しようともしない人で。それこそ「ひとつひとつにすべて燃やすのが僕らのやり方だよね?」っていう、お互いの30年分の共感はありましたね。「こういうメロディがあって」みたいな話の次元を越えて、もう「僕たちの人生そのもの!」って言えるような。それがこの4分半の曲の中に収まってるから。

一一あと、宮本さんってバンカラなイメージがありますけど、実はこんなにも端正なシンガーなんだって気付かされましたね。ひとつひとつの音階、音符の拍の長さまで、きっちり歌いきっている。

茂木:そう、ものすごくきっちりしてる。歌唱だけじゃない、単語ひとつひとつの吟味の仕方が丁寧なんですよ。すっごい驚いちゃって。

加藤:そう。ほんとに〈あいうえお〉の発音のポイントが違う。これって日本のロックの歴史みたいな話になっていきますけど、日本のロックは、まず英語の歌唱を日本語に当てはめていくところから始まって、いろんな試行錯誤とか工夫を先代の方がされてきて。そこで何箇所かターニングポイント、発明みたいなものがあったと思うんですね。その中のひとつが宮本さんの歌唱だと思う。日本語を日本語として鳴らす。誤魔化しなく、日本語的に鳴らす。それがわかると、自分でもエレファントカシマシの聴こえ方もまた変わってきたりして。

谷中:そういう意味でもコラボレーションって重要で。コラボレーションの歴史が自分たちの成長の軌跡でもあるんですよね。同時に今回の宮本くんも、椎名林檎さんとやったりスカパラとやったことを、エレファントカシマシに持ち帰ってもらって、それがエレファントカシマシにとってプラスになったら、こんな素晴らしいことはないですよね。

一一みなさんはどうですか。来年にはいよいよデビュー30周年で。何か大きなお祭りのようなものは行われるんでしょうか。

茂木:お祭りね、でっかいのやるでしょう! 凄いと思うよ、来年も。

加藤:なんかやりたいね。まだそんなに考えられないけど。ほんとに明日以外はすべて燃やしてるんで(一同笑)。でも、今年はバンドもほんとに充実してて、いい年だったと思いますよ。前半の南米ツアーも含めてね。ちょっとずつ向こうに蒔いてきた種も実っていて。

茂木:コロンビアとか凄かったよね?

加藤:そう。6万人の集まるフェスのメインステージに出たり。

一一6万人って壮絶ですね。

加藤:もうね、どこが最後尾なのか見えなくなるまでずーっと人。それであちこちにサークルモッシュができて。

茂木:盛り上がったねぇ。こっちの全力さ、必死さに盛り上がってた。谷中さんが歌う曲なのにマイクがトラブルで出なくて、「やっと出たー!」っていう瞬間に6万人がグワーッと盛り上がる(笑)。

谷中:俺が必死に歌ってる姿だけがビジョンに映ってたらしくて、声が出た瞬間「あぁ良かった!」みたいな。その喜びと一体感はすごく伝わってきた。楽しかったよね。

加藤:海外のロックフェスでは僕らはスカの曲をベースにしたセットでやるんですけど、かたや今年のライジングサン(RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZO)ではメインステージの大トリをやったんですね。その時、僕らとコラボをしたことのあるボーカリストの方々に残っていただいて、9人に歌ってもらったんです。ドラマーの中村達也さんにも参加してもらったんですけど、あれだけゲストを迎えて立て続けに演奏することもなかったので、逆に客観的になれたのかな。自分でも「ほんとスカパラって独特だなぁ」と思ったんですよ。

一一どういう意味でしょうか。

加藤:どの曲も歌モノなんだけど、でもホーンのメロディがものすごく聴こえてくる。歌があってもなくても、まず音楽を奏でて、それを人に伝えていくという当たり前のことを僕らはやってきたんですね。歌が乗ってるかどうかはアウトプットのひとつでしかなくて、やっぱりスカパラに流れてるメロディというものをずっと奏で続けてきた30年なんだなって自分でも思ったんです。デビューアルバムでいうと、「MONSTER ROCK」っていうスカの様式美みたいな曲があって、それを世界中で鳴らしながら、同時に「君と僕」みたいなメロディの美しさ、日本人が心にずっと持ってる切なさを奏でる表現があって。その両極端をスカパラはずっと追いかけてる。で、「君と僕」のようなメロディに、本当に歌が乗っかってきたのが2000年以降だなと思って。そういうことを今年改めて意識できたのは良かったですね。

一一わかりました。これは余談なんですけど。子どもの小学校のブラスバンドが文化祭で隣の中学のブラスと合同演奏してて。曲が「Paradise Has No Border」だったんです。ここまで浸透してるのかって嬉しくなって。

谷中:いやー、ありがたい!

茂木:あの曲の浸透度ってほんと凄くて。僕が住んでいる近所の学校でも当然のようにやってるし。もしかしてこれ、ほとんどの小中高の吹奏楽でやってるのかな? もうほんと何より嬉しい! 

加藤:でも、あれも実は歌ものになる予定だったんですよね。

一一え、マジですか?

加藤:そう。アウトプットは歌ものにしようっていう話でNARGOさんが書いてきた曲なんだけど、結局インストになったんですよ。これ、さっきの話と通じるものがあって。

一一スカパラはどんな曲であっても、ホーンのメロディが聴こえてくる。

加藤:そう。そしてホーンのメロディだからこそ、歌詞の意味とかは関係なく、小学生とかも喜んで聴いてくれたりする。これって音楽の醍醐味ですよね。嬉しいです、ほんとに。

(取材・文=石井恵梨子/写真=林直幸)

■リリース情報
『明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次』
発売中
CD+DVD:¥2,484(税込)
CD ONLY:¥1,080(税込)

<CD収録内容>
M1.明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次
M2.Are You Ready To Ska?
M3.砂の丘~Shadow on the Hill~ Live at 川口総合文化センター リリア(from 2018 TOUR「SKANKING JAPAN」"めんどくさいのが愛だろっ?"編)

<DVD収録内容>
1.明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次(Music Video)
2.2018.9.29 川口総合文化センター リリア公演ドキュメント from 2018 TOUR「SKANKING JAPAN」"めんどくさいのが愛だろっ?”編
※「サザンクス筑後、ユメニティのおがた、オリンパスホール八王子、犬山市民文化会館公演に来る人は絶対に観てはいけないビデオ」閲覧・ネタバレ注意
3.Opening Movie from 2018 TOUR「SKANKING JAPAN」"めんどくさいのが愛だろっ?”編

ECサイト:
amazon:ジャケットサイズステッカー(1枚)汎用特典
CD+DVDCD Only

TOWER RECORDS:チケットホルダー(1個)
CD+DVDCD Only

■ライブ情報
『東京スカパラダイスオーケストラ 2018 Tour「SKANKING JAPAN」”めんどくさいのが愛だろっ?”編』
10月30日(火)東京・サンパール荒川 (18:30/19:00)
問:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999

11月14日(水)長野・須坂市文化会館 メセナホール 大ホール (18:30/19:00)
問:須坂市文化会館 026-245-1800

11月17日(土)高知・高知県立県民文化ホール オレンジホール (17:30/18:00)
問:デューク高知 088-822-4488

11月18日(日)広島・三原市芸術文化センター ポポロ(17:00/17:30)
問:キャンディー・プロモーション広島 082-249-8334

11月23(金・祝)徳島・鳴門市文化会館 (17:30/18:00)
問:デューク高松 087-822-2520

11月25日(日)島根・安来市総合文化ホール アルテピア(17:00/17:30)
問:キャンディー・プロモーション岡山 086-221-8151

12月1日(土)福岡・サザンクス筑後(17:00/17:30)
問:サザンクス筑後 0942-54-1200

12月2日(日)福岡・ユメニティのおがた(17:00/17:30)
問:ユメニティのおがた 0949-25-1007

12月4日(火)大分・J:COM ホルトホール大分 (18:30/19:00)
問:テレビ大分販促事業部 097-537-5515

12月8日(土)東京・オリンパスホール八王子 (17:30/18:00)
問:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999

12月9日(日)愛知・犬山市民文化会館 (17:30/18:00)
問:JAILHOUSE 052-936-6041

チケット料金指定 ¥6,200(税込)※3歳以上有料/3歳未満入場不可
※高校生以下は会場にて¥1,000キャッシュバックあり

『東京スカパラダイスオーケストラ 2018 Tour “SKANKING JAPAN”ファイナル公演”スカフェス in 城ホール”』
日時:12月24日(月・祝)
開場16:30/開演17:30
会場:大阪城ホール
チケット料金:¥6,800(指定席/税込)
一般発売日:10月27日(土)10:00〜
出演:東京スカパラダイスオーケストラ
ゲストアーティスト:斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)/TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)/峯田和伸/宮本浩次

<備考>
・3歳以上有料*3歳未満入場不可
・高校生以下は会場にて¥1,000キャッシュバックあり
問い合わせ:キョードーインフォメーション
TEL:0570-200-888(10:00~18:00)

■関連リンク
東京スカパラダイスオーケストラ公式HP

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる