amazarashi、「新言語秩序」が迎えた終着地点 “言葉”への意思表明を感じた武道館公演

amazarashi、「新言語秩序」が迎えた終着地点

 そしてライブはいよいよ、この武道館公演の直前に公開された書き下ろし小説の第4章でバッドエンドを迎えた官邸前での大規模デモのシーンに突入。スクリーンにはプラカードを持った「言葉ゾンビ」による大規模なデモ行進や、彼らを扇動する言葉ゾンビの若きカリスマ・希明(きあ)の姿と、彼らに紛れ込んで“テンプレート逸脱行為”を記録していた「新言語秩序」の人間・実多(みた)の姿が映し出される。そして「言葉ゾンビ」に正体を気づかれた実多が、希明に「何か言いたいことはあるか」とマイクを手渡される、物語のクライマックスがやってくる。

 事前に公開された書き下ろし小説の第4章では、その一瞬の隙を突いて実多が希明を刺してバッドエンドを迎えるが、この日の公演では、物語がトゥルーエンドへと分岐。希明からマイクを受け取った実多が、自分の言葉を語りはじめる。そうしてはじまるのが、ライブ冒頭では“検閲済み”で朗読され、内容がほぼ読み取れなかった「独白」の検閲解除バージョンだ。書き下ろし小説を読んだ方なら分かる通り、実多には「言葉を殺さなければならない」と思うに至る、幼少期の壮絶な経験があった。彼女は、父親によるレイプや凄惨ないじめを経て、言葉の力に絶望し、言葉を憎むようになる。しかし、このトゥルーエンドでは、実多の独白を表現したと思しき曲の中で、秋田ひろむが彼女の苦悩や心の内を歌いはじめ、この日一番の熱量を詰め込んだドラマチックな演奏と共に、テンプレートを逸脱した実多の本当の言葉が堰を切ったように溢れ出す。そうして語られるのは、自らが殺した言葉、憎んだ言葉、そして本当はかけて欲しかった言葉の存在だ。最後は観客のスマートフォンが発する照明を受けながら、「言葉を取り戻せ」「言葉を取り戻せ」と秋田ひろむが絶唱してライブを終えた。

 amazarashiの『朗読演奏実験空間“新言語秩序”』は、“言葉の力”をめぐる物語だ。そして、この物語の中で、言葉は力を持つゆえに残酷なものにも、希望を与えうるものにもなる存在として描かれている。そして、 “それでも”、いやむしろ“だからこそ”、amazarashiはこれからも言葉を紡いでいくーー。この公演を通して感じたのは、言葉の可能性を信じて歌い続けてきた秋田ひろむによる、そうした強い意思表明のようなものだった。豊かな語彙を駆使したシナリオやスクリーンを使ったビジュアル表現、熱量全開の演奏に、観客が参加することで成立する照明/ステージ演出が加わり、amazarashiの表現は今まさに大きな広がりを見せている。「観る」よりも「体験する」に近い魅力を持つ彼らのライブが、この先の活動に向けて新たな可能性を広げていく瞬間を見せてもらっているような、圧巻の一夜だった。

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■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

(写真=Victor Nomoto)

■アプリ情報
新言語秩序アプリダウンロードはこちら

■リリース情報
amazarashi
New Single『リビングデッド』
2018年11月7日(水)
配信はこちら

初回生産限定盤[CD+GOODS]
スペシャルボックス仕様
¥2,130+税
[CD] 3tracks + 2instrumental
[GOODS]新言語秩序バリケードテープ
<収録曲>
1. リビングデッド
2. 月が綺麗
3. 独白(検閲済み)
4. リビングデッド -instrumental-
5. 月が綺麗 -instrumental-

Loppi・HMV限定セット(ネックストラップ付)
TOWER RECORDS
TSUTAYA ONLINE
amazon
楽天books
Sony Music Shop

通常盤[CD]
¥1,185+税
<収録曲>
1. リビングデッド
2. 月が綺麗
3. 独白(検閲済み)

Loppi・HMV限定セット(ネックストラップ付)
TOWER RECORDS
TSUTAYA ONLINE
amazon
楽天books
Sony Music Shop

予約購入者特典
TOWER RECORDS全店(オンライン含む/一部店舗除く):オリジナルステッカー(A)
TSUTAYA RECORDS(一部店舗除く)/ TSUTAYAオンラインショッピング(予約のみ):オリジナルステッカー(B)
HMV全店(ローチケHMV/一部店舗除く)/全国のローソン・ミニストップ店頭Loppi端末:オリジナルステッカー(C)
Amazon.co.jp:オリジナルステッカー(D)
楽天ブックス:オリジナルステッカー(E)
応援店:オリジナルステッカー(F) ※店舗リストは追って公開

■ライブビューイング情報
『amazarashi Live「朗読演奏実験空間“新言語秩序”」DELAY VIEWING』
2018年11月25日(日)19:00開演
2018年11月26日(月)19:00開演
※2018年11月16日(金)公演の再上映。
全席指定 3,600円(税込)※限定チケットホルダー付

会場:全国各地の映画館

■関連リンク
amazarashi『朗読演奏実験空間“新言語秩序”』特設サイト
Official web
Facebook
Twitter
mobile モバイルサイト「apologies」(スマートフォン、フューチャーフォン)
LINE ID:@amazarashi

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