欅坂46 志田愛佳、突然の卒業発表 グループの土台を作った“クール”と“ピュア”の側面

 彼女にはそうした気丈な姿とは打って変わって涙もろくピュアな一面があった。

 今でもファンの間で語り継がれている2017年4月24日に放送された『欅って、書けない?』の企画「メンバー内の好きを整理しよう」、俗に言う”相関図回”では、仲が良いとされている渡邉理佐の”好き”が自分に向いてないと知らされると突然涙を流した。それまで冗談気味に進行していたスタジオが、急に彼女たちの琴線に触れたかのように緊迫感を持った雰囲気へと一変。虚実が入り乱れ、笑いと涙で溢れた放送回となる。また、2018年4月16日放送「徹底解明!オダナナはなぜモテるのか?」、俗に言う”オダナナ回”の後編では、メンバーの織田奈那の人柄を褒め称えるためのバラエティ色の強い企画だったのが、彼女の涙によって感動の回へと変貌を遂げている。

 どちらも彼女が引き金となり、それが他のメンバーにも感染してスタジオ全体に渡る涙の放送回となっている。どこか彼女の心の向き次第でグループ全体のテンションが左右している感さえあった。クールな中にある純粋で傷つきやすい一面を見た我々は、同じくクールでカッコいいイメージの欅坂46の中にある人間味溢れる数々のストーリーをリアルに感じ取ることができたのだ。

 そんな彼女は、ダンススキルは高い方ではなかったが、それでも大きな目を活かした鋭い眼光で注目を浴びることが多かった。文字使いや言葉のセンスが独特で、語尾を「。!」で締めるスタイルは最後まで崩さなかった。ブレた自撮り写真をして「溶けてる」と表現する感性、そしてその写真をそのままブログやメッセージアプリで公開する思い切りの良さ・勢いは、彼女だけにしかないものだった。容姿含めそうした諸々を踏まえても、彼女は我が道を行く存在であった。アイドル・欅坂46のクールな側面を担っているメンバーのひとりだったが、初期はまだ平手友梨奈も可愛らしい少女だったことを考えれば、彼女がいなければ今の欅坂46は生まれなかったかもしれない。欅坂46というグループは、確実に志田愛佳の影響を受けていた。

 卒業者が続く欅坂46。グループ史上例を見ない転換期に差し掛かっている。彼女の去った後の欅坂46には、グループ全体を変えてしまうような存在が必要かもしれない。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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