赤い公園、新曲「消えない」MVに反響 二分割映像と楽曲に込められたバンドの意志

 昨今のJ-POPシーンにおいて、ボーカルが交代したバンドはいくつあっただろうか? 真っ先に思い浮かぶのがフジファブリックで、2009年に志村正彦が亡くなり、ギター&コーラスを務めていた山内総一郎がメインボーカル&ギターを担当している。フジファブリックの場合、同じバンドメンバーが志村の意志を継いでいるが、赤い公園は違うグループ、シーンから石野をボーカルとして起用したという点においても、異例の抜擢だったと言える。先述した小出の働きかけや、津野がハロー!プロジェクトのファンでありアイドルシーンをフラットに見ることができること、石野のボーカリストとしての実力など、理由は様々に思い当たるが、何よりも赤い公園と石野理子における境遇の歯車がガチッと噛み合ったこと。太く、真っ直ぐな信念のベクトルが、「消えない」という思いに行き着く。

 「消えない」の作詞・作曲も担当し、バンドの中心的存在にいる津野は「曲づくりがまた楽しく、、」と『VIVA LA ROCK』出演前日にツイートしている。「消えない」は津野のカッティングギターをイントロに、歌川の変則的なドラム、Bメロからサビへのフェーズでは着火するような勢いの歪んだギターと藤本のベースサウンドが、津野のコンポーザーとしての記名性を感じさせる。ライブでは、石野のボーカルのもと「NOW ON AIR」や「闇夜に提灯」などのバンドの代表曲、「消えない」のほかにももう1曲「スローモーションブルー」という新曲を披露している。藤本が初めて詞曲を担当したというこの曲は、「NOW ON AIR」に匹敵するような爽やかでポップな楽曲。バンドの次の一歩として、「スローモーションブルー」がどのような形で発表されるかも、今後の指針を定める要素であり、今年1月に開催した自主企画で多くの新曲が披露されていたことにも触れておきたい。

 年末は『COUNTDOWN JAPAN 18/19』を筆頭に、3つのロックフェスやイベントに出演する赤い公園。『BAYCAMP』で赤い公園のアクトが終わり、次のステージに移動している際、「俺、昨日、石野理子って調べたんだけどさ」と話している男性2人組の会話が耳に飛び込んできた。年末の出演でも、そんな新たな出会いが多く生まれることを、今から想像している。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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