岡村靖幸とYUKI、“ドキドキとワクワク”に懸けるプライド ホットスタッフ40周年イベント2日目

ホットスタッフ『Ultra Boy Meets Super Girl』レポ

 岡村が作り出した熱狂がインターミッションによって落ち着きを取り戻した頃、ステージの主役はYUKIへと受け継がれた。斬新なふくらみを見せる真っ白なコスチュームおよび彼女自身のルックスに会場が引き込まれる中、「プリズム」が投下される。それに続くは「ランデヴー」と、息を継がせぬナンバーの連発。舞台を含めたビジュアルも、またロックやクラブサウンドを先鋭的なポップ感とともに取り込んだサウンドも、その突き抜けぶりは圧巻のひとことだ。MCになると岡村について触れ、「素敵だったね。私はYUKIです……負けないわ!」と、敬意とともに強い気持ちを示した。

 この日はシングル曲中心のベスト的なセットリストで、そこはイベントという場で初めて自分を観るお客さんを意識していたと思われる。そうした中でのYUKIのステージは、前述のような衣裳や照明などの演出の妙もありながら、たとえば「チャイム」ではエイトビート的なロック、「tonight」ではゴスペルを思わせるバラードと、サウンドの指向性もイメージ以上に幅が広い。そしてそこで最も際立っていたのはほかでもない、彼女自身のボーカルだった。その声はパワフルである上に、優しく、しかもセクシーで、つねに陽性のエネルギーがたぎっているかのよう。とくに中盤に披露された曲たちは、YUKIの音楽においてはそのボーカルの魅力こそが根っこにあるという事実を体感させてくれた。

 後半に入る前、YUKIは客席からの声を聞いて、「かわいい? 美しい? 素晴らしい? 世界一? うんうん」と微笑んだあと、昔のことを話しはじめた。かつて在籍したバンド、JUDY AND MARYのデビュー当時だから90年代の半ばだろう、自分のことを「まあ態度の悪い、まあ生意気な子でしたよ」と振り返り、時には客が5人しかいないライブハウスで演奏したことも、と……そう、このリアルサウンドで公開されたホットスタッフの横山副社長と同じ話をしてくれたのである。その頃、同社は一緒に仕事をしたいとバンドを熱心に応援してくれたそうで、彼女はそれから現在までのパートナーシップに対する謝辞とともに、「50周年(のイベント)も呼んでいただきたいと思います(笑)」と語った。おかげでこちらもまた回想モードになるが、そういえばデビュー時のあのバンドは「ロリータパンク」なんて呼ばれていて、YUKIの声はハイトーンがこちらに突き刺さるように鋭かった。あれから25年、今ではその歌声は、じつに大きなスケール感とパワーをたたえるまでになったのだ。

 その後は映画『コーヒーが冷めないうちに』の主題歌「トロイメライ」がプレイされたのだが、この曲は「後悔にしばられている主人公たちを思い浮かべて作りました」とのことで、その言葉からもYUKIが人間として成長したであろう事実が感じられる。そしてこの稀有な存在感を誇るアーティストのステージは、「フラッグを立てろ」の強靭なポップネス、「鳴いてる怪獣」のアリーナロック的なエクスタシーと続いたのちに、冒頭に触れた岡村との歓喜の共演タイムを迎えたのだった。

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