ケツメイシはファンと共に年を重ねるグループに 『ケツノポリス11』から考える“長生き”の秘訣

 ジャンルに則ったマナーではなく、“日々をそのまま”が主題であるのだから、彼らは加齢だって隠さない。「さくら」の大ヒットが2005年ですが、同年のアルバム『ケツノポリス4』には、もう中年だ、体臭もあるぞと自らオッサン宣言をする「三十路ボンバイエ」なんて曲がありました。そして、メンバー全員が40代になった今回のアルバムでは、上司と部下の板挟みになる仕事の辛さ、予想とは違っている現在地、子供とはしゃぐ週末バーベキュー、あとは地元の仲間と乾杯する宴会ソングなどが生まれていく。筆者は同世代なのでよくわかりますが、同時にこれは、刺激やスリルを求めるヤング世代にそこまで色目を使っていないということ。彼らの音楽は相変わらず自分たちの日々そのままで、“ケツメイシと共に年をとっていくアラフォーのキミ”に向けられているのですね。こんなふうにファンと共に年を取っていくラップグループのあり方、20年前には想像もできませんでした。

 繰り返しますが、これがヒップホップだと言う気はまったくありません。でもヒップホップ開眼以降のJ-POPで最も長生きしている人気グループはケツメイシです。奇しくも先日にはRIP SLYMEの活動休止が発表されたばかり。ちょっとユルいけど憎めない彼らのストーリーはどこまで続くのか。毎回同じタイトルが冠され、『KETSUNOPOLIS 8』、『KETSUNOPOLIS 9』以外は同じ場所で撮影されたメンバーの記念写真がジャケットになっている『ケツノポリス』シリーズ。なるほど、ここまで続いてみれば、これは立派なファミリーポートレイトだと納得できます。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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