新しい地図の3人の持ち味はより尖ってきた 香取が明かした稲垣&草なぎとの関係性から考える

 稲垣には多くのマイルールがある。朝は朝食、卵のゆで時間は沸騰してから6分から6分半、映画館の座席は通路側、私服は黒かモノトーン、無駄な物は買わず、定期的に届く花を愛でる。“夜中は効率が落ちる”というのも、彼の中にある実績に基づくものだろう。そのなかでも、彼が最も大切にしているのは、バランス感覚だ。「長い間グループでやってきたから、今日誰が何を言い出すかわかんなかったりするじゃないですか(笑)。だからそういう柔軟性とか、その場で生まれるものとかは大切にやってきたし、それは僕の中で不滅って言ったらちょっと大げさだけど、変わらないことかもしれないですね」。ポリシーが強いことと、ライブ感を大事に対応していくことは、一見すると矛盾している。だが、彼の中ではその柔軟性を持ち合わせたいというのもポリシーの一つなのだ。

 そんな稲垣のスタンスも理解し、その上で草なぎを自由にできるのは、香取の視野の広さゆえ。「一番コンサバなのが吾郎ちゃん。彼は慎重で冒険をしない人。で、僕は自分ではどっちでもないと思ってるんです。でも、周りの人は僕をアンチ・コンサバだと見ている気がする。一番型破りなのは、草なぎですよ。常に『ぶち壊して行こうぜ!』みたいな感じ(笑)。それこそ新しい地図を始めるときに、僕と吾郎ちゃんがあれこれシミュレーションをしていろんな計画を立てていたのに、僕らの背中を蹴り飛ばし、プランを踏み荒らし『飛べ〜!』とかいうタイプです(笑)」という言葉に、「南の島行こうぜ」発言が重なってしまう。だが、そんな突拍子もない草なぎの行動が、新しい地図を広げる原動力にもなったと香取。アーティストとして個展が決まったのも、たまたまその場にいた草なぎが「彼の絵は素晴らしいんです!」と猛アピールをしたことがきっかけだったと語る。

 3人は、1年を振り返って「新しい地図は、グループ名じゃない」と明言した。それは一人ひとりでも成立する奏者が、3人集まってアンサンブルをしているような感覚に近いのではないだろうか。稲垣が洗練された音を追求したかと思えば、草なぎがそれを崩しにいくユニークな音を鳴らす。「そうくるなら!」と稲垣が反応し、香取もその変化に気づき予測不能な展開をまとめ上げていく。だからこそ、彼らのやりとりにはいつも予定調和がないのだ。これからも、よりのびのびと、より自由に。彼らが気持ちよく音を奏でる姿を楽しみたい。その主旋律に、共演者やスタッフ、そしてファンを含めた多くのNAKAMAの音が加わって、新しい地図の音楽になっていくのだから。

(文=佐藤結衣)

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