作詞家 zoppに聞く、“泣き歌”の歌詞に欠かせないこと 「絶対に取り返せない喪失感が大事」

作詞家zoppに聞く“泣き歌”に欠かせないこと

「“泣き歌”はシンガーソングライターの特権」

ーーzoppさん自身が泣ける歌詞を書くときに意識していることはありますか。

zopp:僕は女性リスナーに焦点を当てた歌詞を書くことが多いのですが、“絶対に取り返せない喪失感”が大事だと思います。そういう意味では「死」が一つのテーマで。あとは失恋の場合も、どれだけハードルが高い失恋なのかによって喪失感の深さが違う。一方で「3月9日」や「ひまわりの約束」もそうですが、男性の場合、感謝と恩返しが感動するポイントになることが多い。実は「青春アミーゴ」(修二と彰)もサウンドにも歌詞にもノスタルジックな感じがあって。恩返しや感謝まではいかないですけど、今住んでいる都会と地元、故郷が対照的になっている。久々に地元の友達と会ったり、ふるさと感があると懐かしくなって泣きそうになると思うんですね。

ーー先ほど、職業作詞家が個人的すぎる歌詞を書くのは難しいという話もありましたが。

zopp:今回の『関ジャム』のランキングでは「M」が唯一、ボーカルの岸谷香さんではなくて、バンドメンバーの富田京子さんが書いているくらいで、ほぼ全てその曲を“歌っている人”が歌詞を書いています。おそらくその方が、“その人の言葉”として受け止められやすいのでは。僕ら職業作詞家が書いた歌詞だと、そのアーティストが書いている歌詞ではない=そのアーティストが思っていることではない、という先入観が、無意識にリスナーの内にあるのかもしれません。そう考えると、僕の作詞の仕事で、「泣ける歌を書いてください」というオーダーは少なくて。ただ、結果的に聴いてくださった方が、感情移入して泣いてくれることはあるんですけど。そう考えると、アイドルと「泣き歌」は距離があるかもしれません。

ーー最近のzoppさんの歌詞では、「題名の無い物語」(Hey! Say! JUMP・髙木雄也)がグッときました。

zopp:あの曲は髙木くんが実際に見た夢を歌詞にしたものです。彼の想いが詰まっている歌詞で、結構泣ける歌詞になったな、と思います。夢の中で見て、顔は覚えてなくて、でもすごく好きな人で……という究極の片思いで、やっぱり“喪失感”がテーマですね。実はあれは一度も直しが入らなかったんですよ。今までも色々なグループのソロ曲を書いてきたんですけど、一発OKはなかなかなかったんで、相当ハモったのかもしれませんね。

ーーアイドルの中でも、テゴマスの歌詞は他のグループと少し違う印象です。

zopp:テゴマスの曲は、家族サイドと恋愛サイドの歌詞がありました。家族の話を書いた歌詞は、みなさん、恋愛の歌詞とは違う共感をされていたのが面白かったですね。毎回1%か2%は自分の経験などを歌詞に含ませるんですが、実は「ミソスープ」は自分と“ニアリーイコール”な歌詞なんです。恥ずかしいですが、自分で聴いても、セリフ調の歌詞とかはやっぱりキュンとするな、と思いますね。とはいえ、職業作詞家が「泣き歌」を書くチャンスはなかなかないので、「泣き歌」はシンガーソングライターの特権なのかもしれません。

(取材・文=村上夏菜)

<あわせて読みたい>
第1回(きゃりーぱみゅぱみゅと小泉今日子の歌詞の共通点とは? 作詞家・zoppがヒット曲を読み解く
第2回(SMAP、NEWS、Sexy Zoneの歌詞に隠れる“引喩”とは? 表現を豊かにするテクニック
第3回(ワンオクやマンウィズ海外人気の理由のひとつ? 日本語詞と英語詞をうまくミックスさせる方法
第4回(ジャニーズWEST、NEWS、乃木坂46…J-POPの歌詞に使われている“風諭法”のテクニックとは?
第5回(ジャニーズWEST、山下智久、ドリカム……なぜJ-POPの歌詞には“物語”が必要なのか?
第6回(プロの作詞家がバンドの歌詞にアドバイス? 「ワードアドバイザー」が目指していること
第7回(zoppがももクロ新作で試みた“作詞家の作曲術”「ライバルだった人たちと一緒に仕事ができる」
第8回(作詞家zoppが“アイドル育成集団”をプロデュースする理由「生活に根ざしたコンセプトを」
第9回(zoppが考える、SMAPの歌詞が色あせない理由「調べると、あらゆる視点での面白さに気づける」
第10回(亀と山P、テゴマス…...作詞家zoppが考える“続編”曲の面白さ「深読みは歌詞だからこそできる」
第11回(『関ジャム』出演! 作詞家zoppが語る、ヒットする応援歌の共通点「平歌とサビは目線が違う」
第12回(作詞家 zoppが明かす、“夏うた”への危機感「季語を使う不便さが顕著に出てきた」
第13回(作詞家 zoppが考える、“流行歌”が更新されない理由 「日本人の琴線に触れるメロディが減った」
第14回(作詞家 zoppが語る、クリスマスソングの作詞術 「back numberはある種、王道」
第15回(zoppが語る、これからの作詞家像「キャッチコピー的な歌詞も書ける人が台頭する」
第16回(作詞家zoppが考える、近年の失恋ソングの傾向 「自分のことではなく“超他人事”を歌っている」
第17回(『関ジャム』出演 zoppが語る、結婚式ソングの作詞法「テクニックはない、というのが特徴」

zoppのプロフィールなどが分かるインタビューはこちら

■関連リンク
zoppの作詞クラブ
Twitter

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる