小袋成彬、芸術性と歌を軸にした濃密な1時間 『分離派の夏』以降のビジョン示した東京ワンマン

小袋成彬ワンマン公演レポ

 この日のセットリストは『分離派の夏』の楽曲に加え、5曲の未発表曲、アリシア・キーズ「If I Ain't Got You」のカバーで構成されていたのだが、全体を通し、ひとつの大きな物語を描いている印象を受けた。青春と呼ばれる時期から大人になるまでの時間、そのなかで経験した悲しみ、憂い、喪失感をリリカルに綴り、豊かな音楽世界へと結びつける。まるで小袋の一人舞台のようなステージからは、彼が歌という表現に向かう根源的なモチベーションが感じられた。おそらく小袋は“歌じゃないと表現できない何か”を掴もうとしているのだと思う。

 小袋自身もギターを弾き、心地よいダイナミズムを演出した「Daydreaming in Guam」、ストリングスを取り入れたトラックとともにエモーショナルな歌声が響いた「Selfish(WoO!)」、など、後半も見どころ満載。この日のライブで披露された新曲のほとんどが、“光”や“希望”のイメージをまとっていたことも記しておきたい。特に最後に披露された新曲「ある暮らしのための曲」は本当に素晴らしかった。幾重にも声を積み重ね、ゴスペルのようなイメージをもたらすアレンジ、そして、祈りにも似た雰囲気を感じさせるボーカル。この楽曲からは、『分離派の夏』以降の彼の音楽的ビジョンを感じ取ることができた。MC一切なしで18曲を歌い切った小袋成彬。パフォーミングアートとしての芸術性、彼自身の歌を軸にした生々しい臨場感を同時に体感できる濃密な1時間だった。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■オンエア情報
スペースシャワ―TVにて独占放送
『LIVE SPECIAL 小袋成彬 10.10.2018@WWW X』
放送日時:
初回 11月8日(木)22:30~23:00
リピート 11月27日(火)26:00~
視聴方法はこちら

ソニーミュージック公式サイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる