ジョン・レノン『イマジン』が今なお絶大な影響力を持つ理由 青木優の10000字ロングレビュー

ジョン・レノン『イマジン』徹底解説

日本のアーティストたちにも影響を与え続ける「イマジン」

 「イマジン」という曲の影響は、ここ日本でもかなり大きなものがある。たとえば先ほどのユニセフが2014年に日本国内で行ったキャンペーンでは、すでに故人であった忌野清志郎と、別の映像ではPUFFYがこの曲を唄っている姿がフィーチャーされていた。

#IMAGINE(イマジン)/日本ユニセフ協会
#IMAGINE(ユニセフ・イマジン・プロジェクト) - PUFFY /日本ユニセフ協会

 とくに清志郎は、日本での「イマジン」の唄い手として筆頭に挙げられるアーティストだ。彼はRCサクセションの時代に、1988年に発表したアルバム『カバーズ』の中でこの歌を日本語詞に訳しており、平和への思いを〈みんながそう思えば/簡単なことさ〉と唄っていた。ジョンのメッセージをストレートに解釈したわけだ。そして清志郎はRCの解散後もこの歌を唄っていた。

 さらに、この清志郎版「イマジン」を自分の歌として引き寄せたのは吉川晃司だった。僕がそれを耳にしたのは2013年8月6日、家のTVでプロ野球の広島対阪神戦を観ていた時のこと。これは平和記念日にまつわる試合で、吉川は広島のマツダスタジアムのグラウンドに立ち、この歌を歌唱した。それを聴いていた僕は「清志郎の歌詞!?」とまず驚き、しかもその一部は反原発の意志を込めた言葉に書き換えられていたため、もう一度ビックリした。後日知ったのは、同市出身の吉川は自らを被爆二世であると公表していたということ。それだけにあの歌詞には彼の切実な思いが込められていたのである。

 このほか、「イマジン」を唄った日本のアーティストは加山雄三、ゆず、miwa、Mr.Children、それにJAM Projectも含むアニソン・オールスターズ……と、確認しきれないほど存在する。それも英語、日本語とさまざまだが、いずれも真摯なカバーばかりだ。そんな中で、ひとつ新たに発見したことがある。カバーという形とは別に、「イマジン」とジョン・レノンをインスピレーションの元にした楽曲も日本にはたくさんあるという事実である。

 最初に思い当たったのは、昨年大きな注目を集めたラッパーのPUNPEEのアルバム『MODERN TIMES』だ。この作品中の「Renaissance」には〈レノンも暇すぎてimagine〉というリリックが、それと「Bitch Planet feat.RAU DEF」ではフィーチャーされたRAU DEFが〈俺もジョンレノンみたくイマジン〉とラップする箇所があるのだ。

 この他、順不同で、この10年ほどの楽曲で「イマジン」とジョンからの影響が見られるものを連ねていく。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「Little Lennon」、GLIM SPANKYの「アイスタンドアローン」、佐々木亮介(a flood of circle)の「Nude & Rude」、伊東歌詞太郎の「IMAGINE」、DJ HAZIMEの「そして誰もが歌い出す feat.RHYMSTER & PUSHIM」、AK-69の「We Don’t Stop feat. Fat Joe」。それに乃木坂46の「ボーダー」もだ。

 もう少し上の世代では、桑田佳祐の「現代人諸君!!(イマジン オール ザ ピープル)」、斉藤和義のデビュー曲「僕の見たビートルズはTVの中」や「いたいけな秋 featuring Bose」がある。そして真心ブラザーズの「拝啓、ジョン・レノン」はジョンへのリスペクトと愛情をダイレクトに表した曲で、歌詞に「イマジン」での彼に触れた部分も出てくる。

真心ブラザーズ 『拝啓、ジョンレノン』

 こうした歌の多くは、想像を膨らませること、平和について思いをはせること、あるいはそのメッセージを発信したジョンに対する思いを主に唄っている。それにしても僕はこのうちの何曲かは知っていたが、今回調べてみて、ここまでの数が出てきたことに驚いた。おそらくこれ以前の時代までさかのぼれば、まだ出てくるだろう。

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