山田孝之&菅田将暉主演ドラマ『dele』高評価の理由に“秀逸な劇伴”あり 野心的な音楽面に注目

 いわゆる“探偵もの”のようなハードボイルドの雰囲気と、「デジタル遺品の抹消」という職業柄、“死”と向き合うことも多い静謐な空気感――その2つをあわせ持った『dele』というドラマの世界。もともと大学で脚本を学んでいたという異色のキャリアの持ち主であり、常日頃から「映像と合わさることによって、最大限の効果を生む音楽を作る」と公言している岩崎だけに、今回のサウンドトラックもまた、その基調となっているのは、『dele』というドラマそのもののトーンであり、その音楽は『dele』の世界を織りなす上で欠くことのできない重要なピースとなっている。けれども結果的に、通常のサウンドトラック以上に、聴く者すべてのイメージを大いに喚起させる、実にビジョナリーな一枚になっているようにも思える。ここに収録された23曲が、ドラマ本編の、どのシーンで、どのように流れていたのかを、あれこれ思い出す楽しみも、もちろんあるだろう。けれども、そんな「答え合わせ」だけに終わらない――むしろ、本作を聴くことによって、ドラマを未見の人ですら、そのイメージを大いに膨らませ、その世界に没入できるような音楽。そんな、これまでありそうで無かった実に野心的な音楽が、ここで雄弁に鳴っている。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。

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