小松未可子、“ポップスシンガー”としての自然体な姿 『Personal Terminal』東京公演を見て

小松未可子が見せた“自然体な姿”

 たしかに、彼女は様々な役柄を演じ分ける声優だが、なぜここまで安定したシンガーとしての能力を開花できたのか。そのヒントは、『Personal Terminal』リリースに伴い行った小松と田淵の対談インタビューの中に見つかった(参考:小松未可子×田淵智也(Q-MHz)特別対談 “ポップスシンガー”としての充実を支えるチームワーク)。同対談で田淵は、小松のプロデュースについて「僕らが最初にやったのは、歌のキャラクターに統一感を出すことで、それはつまり“とにかく癖をなくしていく作業”だった」と振り返っている。彼女の歌声に均整を与え、音楽的な統一感を備えることで、卓越したシンガーに足る、安定した表現技術を築き上げたのだろう。このブロックには、その成果が如実に表れていた。小松未可子は、ポップスシンガーとしての力量が問われる時期を乗り越え、今ではその力量が発揮されるライブパフォーマンスが魅力の一つになっている。

 そして遂に、『Personal Terminal』の1曲目である「Restart signal」が演奏された。その前のMCで小松が語った「色々なライブを通して思うんですけれど、自分の歌ったものが皆さんに届いて、(それが)さらに自分にも帰ってくる“手紙”のような楽曲がすごく多い」との言葉が印象深く残る。彼女が音楽に乗せた純粋な想いは、作品やステージを通じて多くのファンに届き、時を経て自身の創作活動へと還元されるのかもしれない。

 本編終盤はフロアアンセム的な楽曲で会場を盛り上げ、アンコールではステージを縦横無尽に駆け抜けるなどエネルギッシュにライブを締めくくった。

 アンコールのMCでは、自身の誕生月である11月に開催するイベント『ハピこし!ライブ2018 ~30 years, 30 songs~』にも触れ、「懐かしいあの曲もやっちゃうかも!」とファンを喜ばせる一幕も。彼女のナチュラルな側面を提示する『Personal Terminal』を経たおかげか、この日のステージにも自然体で臨んでいた小松未可子。彼女とQ-MHzの織りなす、彩りに満ちた幸福な音楽を「もっと聴いていたい」と素直に思わされた一夜だった。

(取材・文=青木皓太/写真=森 久)

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