奇妙礼太郎が語る、アルバム制作過程で見えた自分の役割 「強迫観念みたいなものから解放された」

奇妙礼太郎、新AL制作で見えた役割

制作過程から見えた“自分の役割”

――いろいろ話を聞いていると、今回のアルバムは、奇妙さんのソロでありながら、田渕さん吉田さんという2人のシンガーソングライターが、ガッツリ入っていて……結果的に、奇妙さんも含めて3人のシンガーソングライターの楽曲が収録された、ちょっと面白いアルバムになりましたよね。

奇妙:そうですね。田渕くんが5曲、省念くんが4曲……で、2曲、僕が書いてっていう感じになりました。

――「眠れないなぁ」と「同じ月を見ている」の2曲が、奇妙さんの作詞作曲ですね。

奇妙:「眠れないなぁ」は、もう15年ぐらい前に作った曲で、自分ではこの曲が好きとか全然無かったんですけど、田渕くんが「この曲、すごい好きやし、いいと思う」って言ってくれて。何か僕とは全然違う角度からこの曲を見てくれていたので、「じゃあ、いいのかもなあ」と思って、やってみた感じです。

――「同じ月を見ている」は?

奇妙:これは……僕、下北沢で毎月一回、イベントをしていて、それのタイトルなんですけど、もともとは、自分がすごい好きな漫画のタイトルなんですよね。

――土田世紀さんの『同じ月を見ている』ですね。

奇妙:ええ。で、歌の内容は、別にそのどっちにも関係ないっちゃないんですけど、イベントの最後に何となく即興でやったやつをもとに、田渕くんと2人で吉祥寺のスタジオで歌詞を書いて……で、それを持って京都のスタジオで録音するときにまた、いろいろ話しながら、いっぱい歌詞を書き直したんですよね。

――そう、今回は3人の曲が入っていながら、“月”というワードが、結構共通して出てきますよね?

奇妙:それはホンマ、そうなんですよね。別に何か申し合わせたわけじゃないんですけど、まあ3人とも太陽側の人間じゃないですから(笑)。まだあきらめてないというか、適度に明るい人間になりたいなとは思っているんですけど。

――「同じ月を見ている」ではないですが、3人バラバラの場所で活動しながらも、どこか共通したものを見ているような感じがあるように思いました。ちょっとした“同志感”みたいなものがあるというか。

奇妙:どうなんですかね。僕は単純に、2人の作っているものが好きなだけというか、それがいちばん最初にあって……同志というか、別に友だちかどうかとか、そういうのは全然どっちでもいいことなので。友だちと言うよりも、リスペクトに近い感じなんですよね。

――ちなみに、そんなアルバムに『More Music』というタイトルをつけたのは?

奇妙:みんなといろいろタイトル出しをしているときに、アルファベット一文字で、“P”とか“Q”とか意味深でいいんじゃないかみたいな話をしていたんですけど、そのときに省念くんが「“More Music”がいいんじゃない?」って言い出して。で、そう言われたら、そうやなあというか、すごくピッタリやなと思って、それにパッと決まった感じですね。

――実際、完成したものを聴いて、どんな感想を持ちましたか?

奇妙:自分としては、このアルバムを作ることによって、自分で自分に向けた、何か強迫観念みたいなやつから、割と解放されたようなところがあって……。

――というと?

奇妙:や、何かこういうことができないとダメやとか、そういうのがわりとあったんですけど、できないことをできないって言うのは、めっちゃ気持ちいいなあと思って。してもしょうがない無理をするのを、止め始めれたかなあと思うんですよね、何か。たとえば、家にひとりでこもって曲を作るとか、歌詞を書くとかもそうですけど、そういうのが、やっぱりできないっていう。

――あ、最初に言っていた、「ひとりで作詞作曲をしたりするのは苦手だ」っていう話ですか?

奇妙:ええ。何かそういうのをしないとダメやと思ってたんですけど、実際やってみてもすごいつまらない作業というか、やっぱり目の前に反応してくれる人がいないと、全然できないんですよね。できないっていうか、ひとりでは何も動かないという。だけど、誰かと一緒にいたら、それがすごい動き始めるんですよね。もちろんそれは、誰でもいいわけじゃ全然なくて、自分がすごいなと思っている人じゃないとダメなんですけど、そういう人が一緒にいてくれることは、やっぱりすごい力になるし、これからものを作っていく上でも、何かひとつやり方として、すごいしっくりくるなあって、何か思いました。

――なるほど。

奇妙:っていうか、僕は自分でも、自分が何なのか、あんまわかってないんですよね。

――ん?

奇妙:や、自分で全部作詞作曲とかできたら、まあいいんでしょうけど、僕は自分のことをシンガーソングライターって思っているわけでもないし、歌手と思っているわけでもないんです。何かわかんないんですよね、自分が何なのか(笑)。

――ただ、3人の曲が入っていることによって、これまで以上に奇妙さんの“歌”のバリエーションが楽しめる、ボーカルアルバムになっているようにも思いました。

奇妙:ああ、そうですか。でも、確かにそういうところはあるかもしれないですね。何か演奏を聴きながら、それに相応しい適切なトーンとかボリュームみたいなものを探すというか、それにピッタリくるよう調節しながら歌を入れていく……そう、僕の仕事は、そういうことなので(笑)。でも、今回のアルバムは、作業をしながら、ずっと嬉しかったんですよね。何か、いい夏を過ごしたなあって思います。

――や、いいアルバムになったんじゃないかと思いますよ。

奇妙:そうなんです、いいアルバムなんですよ。なので、みんな、買ったほうがいいと思います(笑)。

――(笑)。ちなみに、10月下旬から始まるツアーは、潮田雄一(Gt)、村田シゲ(Ba)、松浦大樹(Dr)、中込陽大(Key)というメンバーで回ることが、すでに発表されていますが。

奇妙:そう、ライブはツアーバンドの人と一緒に回るんですけど、それもすごい楽しみなんですよね。このアルバム作っているときというか、ほとんどの曲を録り終わったあたりに、ビルボード(ビルボードライブ)の東京と大阪でライブをするのが決まっていて、そのライブはいつも変わったことをやらせてもらっているので、最初はスタンダードジャズとかをやろうかなって思ってたんですけど、何か新しいアルバムの曲をやりたいなと思って。で、ほとんどアルバムの曲でライブをやったら、めっちゃ楽しかったんですよね。なので、10月下旬からの全国ツアーは、みんな来たほうがいいと思います(笑)。

(取材・文=麦倉正樹/写真=三橋優美子)

2ndアルバム『More Music』

■リリース情報
メジャー2ndアルバム『More Music』
2018年9月26日(水)リリース
価格 ¥2,800(税込)
全10曲(予定)

<収録曲>
1.エロい関係
2.強靭な肉体
3.セカンドライン
4.眠れないなぁ
5.ロックンロールコンプレックス
6.東京23区
7.穴
8.星
9.More Music
10.同じ月を見ている
11.水面の輪舞曲

■映画情報
映画『愛しのアイリーン』
公開中
出演:安田顕/ナッツ・シトイ 河井青葉 ディオンヌ・モンサント/福士誠治 品川徹 田中要次/伊勢谷友介/木野花
監督・脚本:吉田恵輔
原作:新井英樹「愛しのアイリーン」(太田出版刊)
音楽:ウォン・ウィンツァン
主題歌:奇妙礼太郎「水面の輪舞曲」(WARNER MUSIC JAPAN/HIP LAND MUSIC CORPORATION)
企画・製作:河村光庸
製作:瀬井哲也 宮崎伸夫
エグゼクティヴ・プロデューサー:河村光庸 岡本東郎
プロデューサー:佐藤順子 行実良 飯田雅裕
製作幹事:VAP
企画・制作・配給:スターサンズ
制作協力プロダクション:SS工房
2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ(VAP/スターサンズ/朝日新聞社)
レイティング:R15+
(注:吉田恵輔監督の「吉」は土よし)

■ライブツアー
『奇妙礼太郎ツアー2018(仮)』
10月26日(金) 高松DIME
開場18:30 開演19:00
問>DUKE高松 087-822-2520

10月28日(日) 福岡BEAT STATION
開場17:30 開演18:00
問>BEA 092-712-4221

11月02日(金) 名古屋QUATTRO
開場18:15 開演19:00
問>JAIL HOUSE 052-936-6041

11月03日(土) 梅田QUATTRO
開場17:15 開演18:00
問>GREENS 06-6882-1224

11月04日(日) 広島セカンドクラッチ
開場17:30 開演18:00
問>夢番地広島 082-249-3571

11月09日(金) 仙台MACANA
開場18:30 開演19:00
問>Coolmine 022-292-1789

11月11日(日) 札幌cube garden
開場17:30 開演18:00
問>WESS 011-614-9999

11月18日(日) キネマ倶楽部
開場17:00 開演18:00
問>HOT STUFF 03-5720-9999

<チケット一般発売>
2018年9月1日〜

奇妙礼太郎HP

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