フジファブリック、tofubeats、Czecho No Republic…ハーモニーをポイントに選んだ新譜7選

Sweet Williamと青葉市子「からかひ」

Sweet William と 青葉市子 - からかひ (Official Music Video)

 ビートメイカーSweet Williamとシンガーソングライター青葉市子によるコラボレーションソング。作詞を青葉市子が、作曲を青葉市子とSweet Williamが手掛けている。

 青葉市子の魅力は独特の息遣いにある。その曲には、静謐で研ぎ澄まされた響きがある。とてもたおやかな声と、一音一音がピンと張り詰めたクラシックギターの音色がそれを作り上げている。そして、Sweet Williamは唾奇とのアルバム『Jasmine』や、Jinmenusagiのトラックメイキングで名を上げてきたビートメイカー。二人の出自はかなり違うけれど、絶妙にマッチしている。硬質なビート、切り刻まれたギターの音色、虫の音などの自然音が、どこかノスタルジックな雰囲気を醸し出す。

 特に曲後半、青葉市子の声が重なっていくところの展開がとても好き。

ROTH BART BARON『HOMECOMING』

ROTH BART BARON - ホームカミング / HOMECOMING - [ Official Audio ]

 3年ぶりのフルアルバムのリリースをこの秋にひかえている2人組、ROTH BART BARONの新曲。2014年、最初のアルバム『ロットバルトバロンの氷河期』で彼らのことを知ってから、その美意識と想像力の翼に対しての信頼は僕の中で揺らいだことはない。

 そもそも当初からインディペンデントな活動形態をとっていたが、2015年に2ndアルバム『ATOM』をリリースした後は、UKへ活動拠点を広げるプロジェクトを展開したり、より独立独歩な存在になっていた。その間には100を超える曲を書きためていたという。「HEX」、そして「HOMECOMING」と、どこか躁的、魔法的な幻想を感じさせる曲が届きつつある。特にこの「HOMECOMING」の〈君の誕生日をめちゃくちゃにして 裸のまま飛び出して〉という歌詞、そして曲の中盤、ホーンセクションと「♪ラララ」で壮大な世界を描いていくところがすごく好き。

mabanua「Night Fog feat. Achico」

mabanua - Night Fog feat. Achico [Official Audio]

 ドラマー、プロデューサーとして七面六臂の活躍を見せるmabanuaのソロ名義での3枚目のアルバム『Blurred』収録の一曲。

 アルバムとしては6年ぶり。しかし特にここ数年、プロデューサーとしての彼の名前を見ることはとても多くなった。ジャズ、ヒップホップ、ネオソウルと、ブラックミュージックのテイストをソフトに洗練させた手さばきでJ-POPに接続する彼の手腕ゆえだと思う。

 アルバムも基本的にはそういった音楽性に連なる横ノリのグルーヴを持った一枚。ただ、特筆すべきは、こういったテイストの楽曲によくある「リラクシン」で「心地よい」だけのものに仕上がってないところだと思う。曖昧さや、暗さや、少しの居心地の悪さがある。そういうところが、いい。

 個人的な好みとしては、「ただ洗練されているだけ」「ただトレンドに乗っているだけ」の音楽が、めっきり心に響かなくなってきた。

 そういう意味でもこのアルバムは引っかかりが多くて、彼のアティテュードを感じる。特にAchicoと歌った「Night Fog」、その声の重なり方とローズピアノの醸し出すムードがいい。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば」Twitter

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