「さんぽ」「となりのトトロ」……30年の時を超えて愛され続けるジブリ名作“歌の力”

主題歌として、童謡としての立ち位置

 作曲はどちらも久石譲だが、楽曲が徹底してシンプルな音階の上がり下がりで制作されており、歌詞も一音につき一言と振られているので、音を捕らえやすく、歌いやすい。宮崎駿監督が作詞を手がけた「となりのトトロ」は映画主題歌としての完璧なまでの存在感を誇っているが、『ぐりとぐら』などで知られる児童文学作家の中川李枝子作詞の「さんぽ」は、すでに作品から切り離されて童謡という捉え方をしている人も多いと感じる。作品の世界観と子どもたちの目線。通常であればひとつにまとめて訴求するところを、あえて分断してそれぞれを特化したからこそ、30年経っても尚、日本中の心を引きつけて離さないのではないだろうか。

 余談ではあるが、「三鷹の森ジブリ美術館」では『となりのトトロ』の続編「めいとこねこバス」(原作・脚本・監督は宮崎駿)が上映されており、その作品ではトトロやねこバスがどういった存在なのかがわかるような描写もあるので、一度観てあれこれ考えを巡らせるのもいいかもしれない。色褪せないだけでなく、まだまだ語ることが多い作品だ。

(文=石川雅文)

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