今のボカロシーンだけが持つ“特異性”とは何か? キノシタ×ぬゆりが語り合う

キノシタ×ぬゆり語る“ボカロの今”

2人の影響源、共通点は“ハチ” 

――2人はボカロをはじめるまで、どんな音楽を聴いていたんですか?

ぬゆり:ボカロをはじめるまでは、自分で積極的に探して音楽を聴くようなことをあまりしていませんでした。姉が聴いていたEXILEの曲を聴いたりするぐらいで。でも、もともと楽器はやっていて、ある日暇なときにチャットサイトを見ていたら、そこに小学生の人がいて、「ボカロが流行ってるらしい」ということを知ったんです。そのあと、ボカロをはじめてから、ハヌマーンをたまたまネットサーフィンで見つけて、「音楽を探すのって面白いんだな」と思いました。本当にゼロからのスタートという感じでした。

キノシタ:僕は当時ゲームやアニメが好きだったこともあり、アニソンやバンド、ゲームミュージックなどの音楽をよく聴いていて、特にヒャダインさんやカービィ、マリオといった曲を聴いていました。

――ではそれぞれ、特に影響を受けたアーティストや曲をいくつか挙げるなら?

ぬゆり:僕はまず、さっき話したハヌマーンの「Don’t Summer」。この曲を最初に聴いて、すごく衝撃を受けましたし、音楽ももちろんですが、何より歌詞がすごく刺さりました。今の自分の歌詞は、そこに影響されている部分が多々あると思います。

キノシタ:僕の場合はゲーム音楽なんですけど、『星のカービィ』ですね。石川淳さんがつくった曲が大好きで、すごく影響されました。石川さんが作るカービィの曲って暴れているような雰囲気があるというか……ハイテンションで、そこが「いいなぁ」と思ったんですよ。それが自分が音楽に興味を持ったきっかけだったのかな、と。

ぬゆり:あと、僕は東京事変の「御祭騒ぎ」も好きですね。東京事変の曲は全部好きです。でも、最初は椎名林檎さんの曲は知っていましたけど、東京事変はあまり聴いたことがなかったんですよ。それでこの曲を聴いて「わぁ!!」と思ったのを覚えています。「楽曲の中でこんなに難しいことをしてもいいんだ」と思わせてくれた曲でした。

ぬゆり

――ぬゆりさんの音数の多いフレーズなどは、そういうところからの影響もあるのかもしれませんね。

ぬゆり:ああ、そうかもしれないです。

キノシタ:僕の2曲目は、ヒャダインさんの「ヒャダインのカカカタ カタオモイ-C」(テレビアニメ『日常』OPテーマ)。それまで、ニコ動を見たりはしていなかったので、ヒャダインさんの存在自体も知らなかったんですけど、アニメイトかどこかでかかっているのを聴いて、「2人で歌っていていい曲だなぁ」と思って調べてみたら、ひとりで歌っていて(笑)。当時はゲームばかりやっていたことから、好きなゲームミュージックの作曲家を調べることが多くて、その名残か作家さんの方に興味を持つことの方が多かったです。それで、作家さんを辿って色んな音楽を見つけていきました。中でもヒャダインさんの曲は、一見へんてこなユーモアが入っているところがすごく好きなんですよ。

ぬゆり:傾向は違いますけど、アイデアが詰まっている曲に惹かれるという意味では、ちょっと似ているのかもしれないですね。僕はハチさんもすごく好きです。ハチさんは、曲はもちろんのこと、動画の絵柄も好きです。僕は『ソウルイーター』がめちゃくちゃ好きなんですけど、そういう感性だった当時の自分にすごく刺さったのを覚えてます。

キノシタ:ああ、めっちゃ分かります!

ぬゆり:ハチさんの曲は動画に少年マンガっぽい絵柄が使われていたりして、それまでは「みくみくにしてあげる」のような雰囲気のものしか知らなかったので、「こんなに自分の色を出していいんだ」と思ったのをすごく覚えています。

――ハチさんは今や日本の音楽シーンを代表するひとりになっていますよね。

ぬゆり:昔から今までずっとハチさんに影響されてる気がします。

キノシタ:ハチさんの曲は自分もすごく聴いていて、特に「マトリョシカ」は影響を受けている気がします。

ぬゆり:やっぱり、ボカロを聴くなら、ハチさんの曲は絶対通りますよね。

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